世界の人々の寿命はかつてないほど延びており、世界の平均寿命は1913年の34歳から2022年には72歳に伸びました。
長生きは祝うべき成果であるだけでなく、社会が過去100年間にわたって生き、働き、貯蓄してきたあり方をより良くする機会でもあります。
長寿経済の取り組みは、変化し高齢化する世界において、生活の質、経済的な強靭性、そして生きる目的に目を向けるよう人々に促しています。
2023年の始まりにあたり、気候変動、地政学的緊張、不確実な経済など、依然として先行きの見えない世界的課題が数多くあります。しかし、統計的に確実に進行している現象が一つあります。それは、人々の長寿化です。そして大半の人は、その備えができていません。
世界の人々の寿命はかつてないほど延びています。世界の平均寿命は1913年の34歳から2022年には72歳に伸び、今後もこの傾向が続くと国際通貨基金(IMF)は予測しています。
平均すると、1960年以降、人々の平均寿命はさらに20年延びました。言い換えれば、社会はほぼ毎週、さらに1日分の寿命を得ていることになります。
しかし、この目覚ましい成果を祝うどころか、「シルバー津波」や「人口動態の時限爆弾」と表現する人も多くいます。こうした不適切な言葉遊びは、この重要な進歩を捉える危険かつ逆効果な方法です。
長生きは祝うべき成果であるだけでなく、社会が過去100年間にわたって生き、働き、学び、貯蓄してきたあり方を改善し、前進させる機会でもあります。
長寿リテラシーの取り組みが、長寿をめぐる新たな考え方を推進
世界経済フォーラムはマーサーと協力し、「長寿経済」という取り組みを通じて、退職と長寿を取り巻くエコシステムにおける新たな考え方を推進するため、主要な関係者を集めてきました。
この取り組みは、若者も高齢者も、グローバル・ノースもグローバル・サウスも、年金制度のある人も、特に長寿に向けた貯蓄について考え始めていない人も、あらゆる人が長くなった人生を歩めるよう支援することを目指してきました。その手段となるのが、長寿リテラシーという考え方です。
長寿リテラシーは、人々が尊厳と目的を持って健康で持続可能な生活を送り、変化する世界の課題に対処するレジリエンスを築く力となります。
人々は、生活の質、経済的な強靭性、生きる目的という三つの基本原則に焦点を当てる必要があります。
生活の質:健康的なライフスタイルを維持する
これは長寿リテラシーの最も重要な柱です。人々の寿命が延びるなか、健康と生活の質を優先することが不可欠です。不健康な状態でさらに20年生きたいと思う人はいません。
人々が健康で、病気にかからずに過ごせる年数である「健康寿命」を、総生存年数である「寿命」に追いつかせることが、社会にとって不可欠です。マッキンゼー・ヘルス・インスティテュートの報告書によると、健康増進への投資を促すため、健康状態の測定方法を改善し、健康的なエイジングを促進すると実証された介入策を拡大するなど、世界規模での改善とイノベーションが必要です。
経済的な強靭性:持続可能な長寿を支える資金計画
老後に向けた貯蓄を始めるのに、遅すぎることも早すぎることもありません。年金制度や退職年金制度のある企業で働いているなら、加入して、雇用主による拠出額の上乗せを活用しましょう。
退職後の資金計画や投資を始めたばかりなら、おつり投資アプリを使って少額から始めてみましょう。こうしたアプリでは、買い物のおつりを貯めて投資できます。
ギグワーカーは、退職後の資金計画に関して、残念ながら自力で対応せざるを得ない状況に置かれてきました。しかし、一部の金融機関は、この非常に重要で増加している労働者層に向けた商品を徐々に開発し始めています。財務を整理するために、無料のファイナンシャルアドバイザーの助けを借りる方法もあります。
目的:地域とのつながりを保ち、生涯学習に取り組む
生涯学習は、長寿リテラシーの重要な柱です。働いている間にスキルや履歴書を充実させるだけでなく、晩年にも社会との関わりを保ち、地域の一員であり続けるための優れた方法です。CourseraやLinkedInには無料講座があり、AARPなどの団体は、高齢者向けに特化した講座も提供しています。
早期退職した人の多くは、働いていた頃に感じていた地域とのつながりや目的意識が恋しくなり、仕事に戻ります。仕事、礼拝施設、趣味、地域センターなど、どのような形であれ、人生の後半も地域とのつながりを保つことが重要です。
最近のニューヨーク・タイムズの記事は、米国で一人で年を重ねる高齢者の多さに光を当てました。55歳を超える米国人のうち、配偶者やパートナー、子ども、きょうだいのいずれもいない人は、ほぼ100万人に上ります。一人暮らしの人の多くは必要な支援を得られず、より早く亡くなる傾向があります。
経済的な強靭性と持続可能性を備えた長寿のための枠組み
長寿リテラシーの三つの原則は互いに作用し合い、経済的な強靭性と持続可能性を備えた長寿への道を歩む人々を支える枠組みとなります。しかし、これらの考えを実践するには、人々の暮らし方、学び方、働き方、貯蓄の仕方を大きく変える必要があります。
長寿リテラシーには、過去の世代がどのように人生を送ってきたかを根本から見直すことが必要です。20代前半で教室に座るのは最後だと考えていた人も多く、退職後の資金計画は年を重ねてから、あるいは投資に回す資金が増えてから行うものだと考える人もいます。社会はこうした時代遅れの考え方を手放し、100年の人生がどのようなものになり得るかを考えなければなりません。
これからは、20代の労働者は貯蓄のさまざまな手段や方法を検討するなかで、長寿リテラシーについて考えるべきです。40代の従業員は、生涯学習が専門分野で力を発揮するうえでどう役立つかを考えるべきです。
60代の人々は、リバースメンタリングに取り組み、若手従業員のキャリアを支援しながら新たなスキルを身につけ、世代を超えたつながりを含むようネットワークを広げることができます。
長寿リテラシーの柱を受け入れ、長い人生の礎とすることで、経済面と社会面の成果を向上させることができます。その基本はシンプルです。健康的なライフスタイルを優先し、さまざまな方法で貯蓄し、生涯学習の機会や地域活動に参加することです。
2023年の始まりには、前年から続く不確実性が数多くありますが、確かなことが一つあります。それは、人類がかつてないほど何十年も長く生きるようになっていることです。増えた年月を、あなたならどう過ごしますか?



