米国の低金利と中央銀行のその他の政策は、投資家により高い収益を求めさせるに至った。資金はミューチュアルファンドや上場投資信託(ETF)に流れ込んでおり、これが信用の価格の歪みと、市場における流動性リスクの蓄積を引き起こしている。ここでいう流動性とは、どのような規模の資産でも、いつでも取引でき、すぐに買い手を見つけられる能力を指す。
ミューチュアルファンドと上場投資信託は、米国の社債および外国債券の最大の保有者である(図1)。すなわち、両者は投資家の資金を集めて企業に貸し付けているため、金融システムの円滑な機能を支える多くの信用を提供していることになる。
最新の 『国際金融安定性報告書(Global Financial Stability Report)』では、この動向を分析している。これは流動性の幻想を生み出しかねないものである。実際に直面しているのは、流動性のミスマッチである。投資家はミューチュアルファンドや上場投資信託の持分をほぼいつでも売却できる一方で、これらのファンドはハイイールド債のように、それほど頻繁には取引されない金融商品に資金を投じているためである。
好況時にはこれは問題にならないが、米連邦準備制度(FRB)が予想外の形で利上げを開始すると、市場は不安定化しうる。その場合、多くの投資家が保有資産を一斉に売却しようとし、資産価格の下落を招き、さらなる投資家の売却を誘発する恐れがある。こうした悪循環が、さらなる損失と売却の連鎖を生み出しかねない。
これらすべては、金融政策からの円滑な出口戦略の実施を困難にしかねない。債券市場における損失と変動の拡大を伴う、より荒い出口のリスクがあるためである。危機以降、金融市場が価格ショックに対して感応度を高めていることはすでに確認されている(図2)。特に信用商品でその傾向が顕著であり、より速い売り局面につながりうる。
さらなる要因
事態をさらに複雑にしているのは、ミューチュアルファンドや上場投資信託に流入するこれらの資金が、金融市場全体における他の変化と同時期に、流動性の幻想を生み出している可能性があることである。
これらの商品への資金流入は「フロー」流動性、すなわち資産を低コストで取引する能力を高めてきた。一方で、市場の深度や広がりといった、流動性に関するその他の構造的指標は悪化している。
少数のファンドマネジャーが多額の資産を保有しており、各ファンドにおける意思決定が高度に集中していることから生じる、いわゆる「ブランドリスク」が存在する。また、個別の債券発行体への保有の集中も高まっている。
従来「ショックアブソーバー」の役割を果たしてきた銀行による流動性供給は減少している。また、ヘッジファンドの資産価格変動への感応度が高まり、機関投資家は景気循環に対抗する役割を果たさなくなっている。
3兆8,000億ドルが煙と消える
市場が急速に変動の激しい状態へ移行すれば、ターム・プレミアムの上昇が加速し、信用スプレッドの拡大が世界市場に波及するだろう。例えば、債券市場のターム・プレミアムが歴史的水準に回帰し(100ベーシスポイントの上昇)、信用リスク・プレミアムが正常化する(100ベーシスポイントの再評価)ような予期せぬ市場調整が起きれば、債券利回りが急速に上昇し(図3)、世界の債券ポートフォリオの市場価値は8%以上、すなわち3兆8,000億ドル押し下げられると試算している。
こうした出口に伴うリスクを踏まえ、当局は既存の流動性のミスマッチに対処する必要がある。その手段として、資産保有者が解約に走るインセンティブを取り除くといった健全性政策を講じることができる。すなわち、ファンドの解約条件を、投資対象資産の基礎となる流動性に合わせることである。
本記事は次のブログとの共同で発表された: iMFdirect Blog。
執筆者:Fabio Cortes は、IMF金融・資本市場局のエコノミストである。David Jones は、金融・資本市場グループのシニア金融セクター専門家であり、ニューヨーク代表を務めている。Evan Papageorgiou は、IMF金融・資本市場局グローバル市場モニタリング・分析部門の金融セクター専門家である。
画像:トロントでポーズをとって撮影された米ドル紙幣。REUTERS/Mark Blinch。





