信頼できるデータがない中で貧困をどう把握するか

信頼できるデータがない中で貧困をどう把握するか
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あなたの同僚であるX国の経済開発大臣が、まもなく議会で最新の貧困動向を報告する場面を想像してみてください。これは、同国の次期5か年(または10か年)経済開発計画に関する審議のためです。開発実務に携わるあなたは、調査設計のさまざまな変更により、最新の家計調査データが過去の調査回と比較できないという周知の課題があるにもかかわらず、技術的分析を支援する任務を負っています。さらに悪いことに、直近の調査回がすでに数年前のもので、最新の動向を反映していない場合もあります。どうすればよいでしょうか。

仮定上の例ではありますが、所得水準や地理的条件の異なる多くの国に当てはまるかもしれません。一例として、インドでは1990年代の貧困削減の速度をめぐり、調査回ごとに質問票の一貫性を損なう変更があったことから、かつて活発な議論が交わされました(例として、Angus DeatonとValerie Kozel編『The Great Indian Poverty Debate』(2005年)を参照)。インド政府は6,000万人が貧困から脱したと発表しましたが、他の独立研究者は異なる見解を示し、推計値もより低いものでした。その中には、貧困から脱した人はゼロだと示唆する推計さえありました。もう一つの例は、最近私たちが 調査したヨルダンです。同国で利用できる最新の家計消費調査は現在2010年のものに限られていますが、私たちはその後、貧困に何が起きたのかを知りたいと考えています。

実際の消費(または所得)データがない場合、既存のデータ源を使って代入データを作成し、それを最新の貧困数値の推計に用いるのが自然な方法です。基本的な考え方(仮定)は比較的単純です。利用可能な調査から、欠損していない他の家計特性(年齢、性別、民族、教育、職業、資産など)について比較可能なデータが得られ、それらのデータが統計モデルで家計消費を信頼性高く推計でき、さらにその変化が貧困の変化を捉えられるなら、欠損している消費データを代入できます。

しかし、予想どおり、統計上の難点は細部にあります。経済学だけでなく、統計学、心理学、保健科学など他の分野でも、さまざまな代入手法が提案されてきました。特に、「貧困マッピング」として広く知られる調査データから国勢調査データへの代入手法を基盤とした経済学研究では、さまざまな状況における貧困動向を推計するため、調査データ間の代入が行われてきました(詳しい文献レビューは私たちの論文をご覧ください)。私たちの論文は、こうした議論を、明示的な統計上の仮定と、異なる種類の調査に幅広く適用できるモデリングの選択肢を備えた体系的な枠組みにまとめる試みです。

提案する推計手順を簡潔に、専門知識がなくても分かる形でまとめると、次のとおりです(より詳しい要約は こちらです)。まず、代入に使う調査同士が比較可能か確認します。次に、消費データがある調査1のデータを使い、家計消費モデルのパラメーターと誤差項の分布を推定します。第三に、推定したパラメーターとシミュレーションした誤差項の分布を、消費データのない調査2のデータに適用して、家計消費を予測(代入)します。最後に、標準誤差を推定し、必要に応じて他の頑健性検証を行います。

この推計手順の自動化を支援するため、「povimp」(poverty imputationの略)というStataプログラムを提供しています。これは世界銀行の同僚、Minh Nguyenとの共同研究です。このプログラムをインストールする最も簡単な方法は、Stata上で「ssc install povimp」と入力し、StataからSSC Archive経由で直接ダウンロードすることです。また、このプログラムでは、標準的なStataのクラスター化および層化のオプションをすべて使って、データの複雑な調査設計構造を考慮できます。論文で取り上げた3つの推計手法(正規線形回帰、誤差項の経験分布、プロビット)に加えて、ロジットモデルによる追加のモデリング選択肢も提供しています。

ヨルダンへの応用に戻ると、下の図1は主な推計結果をグラフでまとめたものです。緑の線は実際の家計消費データから推計した貧困率を、オレンジの線は労働力調査を使った私たちの推計値を示します。両方の種類の調査が利用できる2008年と2010年について、私たちの推計は妥当な精度を示し、実際の貧困率の95%信頼区間内に収まっています。

図1は、貧困率が時間の経過とともに着実に低下していることを示しています。ただし、2010~2013年の低下は、前の期間である2008~2010年に比べて緩やかです。この期間に経済で起きたさまざまな出来事、たとえば補助金改革、低迷が続く労働市場、エネルギー価格の上昇、シリアからの戦争難民の大規模な流入が影響した可能性があります。


興味深いことに、貧困推計でも歴史は繰り返されるかもしれません。インドの国家標本調査(NSS)の直近回である2011/12年の質問票は、過去の調査回のものと完全には同一でないと一般に考えられています。そのため、2009/10年の貧困率29.9%から2年間で貧困が8ポイントも劇的に低下したという結果は、当然ながら国内で議論を呼んできました。しかし、私たちの予備的な代入推計はこの数値にかなり近く、2009/10年から2011/12年にかけての貧困低下が過大評価されていない可能性を示唆しています。この興味深いテーマに関する進行中の論文については、後日あらためてブログで取り上げるかもしれません。

データが乏しい環境での貧困推計への関心が高まる中、私たちの論文が、調査データ間の代入手法が貧困の把握に役立つ有効な手段となり得ることを示す、さらなる証拠になればと願っています。一方、このテーマに関する私たちの研究や考えは発展途上にあるため、皆さんの経験からもっと学びたいと思っています。ぜひ、お気に入りの手法を教えてください。

この記事は当初、 世界銀行の「Development Impact Blog」

著者:Hai-Anh H. Dangは、世界銀行開発研究グループの貧困・不平等ユニットに所属するエコノミストです。

画像:2014年8月25日、ナイジェリア南西部イラギジ村で、農家がカカオ豆を拾い集め、屋外の地面に広げて乾燥させている。REUTERS/Akintunde Akinleye。

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