資本主義をより倫理的にするには

資本主義をより倫理的にするには
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私たちは超接続時代に生きており、「 2015年グローバル・アジェンダ展望 」における上位10のトレンドの多くは、目に見えない糸で結ばれている。しかし、相互により直接的に関連しているものもある。なかでもおそらく最も注目すべき結びつきは、所得格差(第1位)とリーダーシップの欠如(第3位)を結ぶものだ。

世界銀行によると、世界人口のほぼ15%が1日1.25ドル未満で暮らしている。奇妙なことに、これは進歩を示している。20年前の同じ統計は36%だった。

しかし、「2015年展望」の回答者の86%は、今日の世界でリーダーシップの危機が起きていると指摘し、楽観していない。実際、富裕層は驚異的な速さでさらに豊かになっている。今年、オックスファムは、2009年の金融危機以降、世界の億万長者の数は2倍以上に増え、1,646人になったと発表した。グローバル化と資本主義は人々を貧困から救い出したとして称賛されることもあるが、その多くは、貧困をどう定義し、富裕層と貧困層の境界をどこに引くかに左右される。同じオックスファムの報告書によれば、世界で最も裕福な85人の資産は、世界人口の最も貧しい半分の資産に等しい。

18世紀後半に制度化され、グローバル化によって世界に広まった資本主義は、今なお私たちの標準的な「オペレーティングシステム」だ。それは主として自己利益に基づいているが、自己利益は人間性の一要素にすぎないことを私たちは知っている。私たちの大半には利他的な側面もあり、自己利益への依存だけではもはや不十分であることがますます明らかになっている。とりわけ、その結果が排他的で有害なものとなる場合はなおさらだ。今日、世界各地でその例が見られる。

資本主義を世界の主要なオペレーティングシステムとして存続させるのであれば、そのソースコードに価値観と倫理を組み込み、より倫理的な資本主義をつくることが理にかなっている。

最近の金融危機を受け、一部では「資本主義」が汚い言葉になり、危機や景気後退、その後に続いた苦難や緊縮策の原因として非難されている。ピュー・リサーチの世論調査によると、16の主要経済国のうち9カ国で、資本主義への国民の支持が大きく低下した。

それも理解できるが、狙うべき対象を取り違えている。原因は資本主義そのものではなく、将来をほとんど、あるいはまったく顧みず、短期的な利益に焦点を当てる資本家たちだ。資本主義の良し悪しは、それを実践する人々次第である。

呼び方は何でもよい。意識的資本主義、責任ある資本主義、倫理的資本主義――より良い資本主義の実践とは、長期的な社会経済的価値と環境価値の創出へと針を進めることだ。すなわち、より高い目的を掲げ、顧客、従業員、サプライヤー、投資家、社会との間に、信頼に基づく深い関係を築くビジネスモデルである。

こうした倫理的で価値観主導の資本主義は、収益にも恩恵をもたらす。このモデルを採用する企業は、より多くの顧客を引きつけ、エネルギー効率の向上と廃棄物の削減を通じて運営コストを抑え、従業員の忠誠心を高める。また、企業のビジョン、志、目標を共有する、意欲的な従業員を擁することができる。

倫理的資本主義は、実現不可能なマニフェストなどではなく、長期的な価値創造を促すことが実証された仕組みだ。ハーバード・ビジネス・スクールやバブソン大学などの研究は、ステークホルダーとの関わりを優先し、長期的な視点を持つ企業が、時間の経過とともに株式市場で競合他社を大きく上回ることを示している。

したがって、ビジネスにとっての課題は、グーグルの有名な企業理念が示すように、単に「悪事を働かない」ことではない。新たな課題は、積極的に善をなそうとすることだ。

アダム・スミスの資本主義の「見えざる手」は、公共の利益と社会的信頼という概念を前提としていた。しかし、より多くの利益と富を得ようと貪欲さに駆られた競争が激化するなか、企業とそれらを結ぶつながりは何世代にもわたって損なわれてきた。

しかし、気候変動への取り組みからジェンダー平等まで、世界で善をなすことによって得られる潜在的な恩恵は計り知れない。

たとえば日本は、先進国のなかでもジェンダー平等の水準が最も低い国の一つだ。しかし、今年1月にダボスで開かれた世界経済フォーラム年次総会で、安倍晋三首相は自国のジェンダー格差を縮小すると自ら約束した。日本では300万人を超える女性が働きたいと思いながら働けず、その一因は保育の不足にある。

なぜだろうか。首相は倫理観や個人的な信念から行動したのかもしれない。しかし、経済的な理由も同じように明白だ。日本の女子は科学の成績で男子を上回り、大学卒業者のほぼ半数(48%)を占める。それにもかかわらず、大学教育を受けた女性のうち現在就業しているのはわずか67%で、その多くは低賃金のパートタイム職に就いている。ある推計によれば、管理職の上級職に就いているのはわずか7%だ。安倍首相は、日本が女性の教育にすでに投じている資金から、より大きな見返りを得られる大きな可能性を見出した。

倫理的資本主義は、価値観について語り合うだけのものであってはならない。行動の変化につながらなければならない。世界経済フォーラムのグローバル・アジェンダ・カウンシル(価値観)は、人間の尊厳、共通善、受託者としての責任を軸とする「新たな社会契約」を提案している。しかし、対話は出発点にすぎないと認識し、企業などが価値観を実践に移せるようにするツールキットの作成にも取り組んでいる。

ビジネスの他の多くの領域と同様、炭素排出量の削減であれ賃金格差の解消であれ、価値観を実践に移す先駆者になることには競争優位性がある。意味のない見せかけとは異なり、意義ある価値観を取り入れたプログラムによって、多くの企業が新たな重要な中核能力を培ってきた。

メッセージは明白だ。今行動しない企業は、自らを危険にさらすことになる。しかし、これは大きな好機の時でもある。より倫理的な資本主義を実践するには、強く勇気あるリーダーシップが必要だ――「2015年展望」によれば、現在それは豊富にあるとは言えない。しかし、倫理的資本主義が資本主義の唯一の持続可能な形であるかもしれないのと同様に、価値観に導かれたリーダーや企業こそが、最も大きく、最も実り多く、持続的な成功を享受すると私は信じている。

著者:ピーター・ビザンツ、グローバル・ナレッジ・ネットワークス開発・コミュニケーション部門責任者

画像:2008年10月8日、ロンドン市内のラッシュアワーの夕刻、ロンドン橋を渡る会社員。ロイター/トビー・メルヴィル

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