世界の金融市場では3つの潮流が収束しつつあり、従来型債券に最も近いイスラム金融商品であるスクークが、グリーン投資の有望な資金調達手段となる可能性を生み出している。(1)銀行は、自己資本規制の厳格化を受け、インフラへの融資に消極的である。(2)「環境的に持続可能な投資」(すなわち、環境にプラスと見なされる活動を促進するための投資)に関心を持つ投資家が増えている。(3)スクーク市場が大きく拡大している。この3つの潮流はそれぞれ異なり、一見関連性がない。しかし、合わせて見ると、環境的に持続可能なインフラプロジェクトの資金調達手段としてスクークを活用する市場機会が生まれている。
先進国、新興国のいずれにおいても、大規模なインフラ投資が必要であることは明らかだ。米国の老朽化した交通インフラから、インドの不十分な発電能力に至るまで、インフラの改善が世界的な優先課題であることを示す証拠は明白である。同時に、気候変動や温室効果ガス排出量の増加による悪影響への人々の懸念も広がり、環境的に持続可能な方法でインフラを改善することも優先課題となっている。
インフラプロジェクトの債務による資金調達を従来担ってきたのは銀行だが、こうした融資から手を引きつつある。規制の変更により、長期リスクを取る意欲が低下したためだ。理論上、資本市場の投資家は、インフラの債務による資金調達で銀行に代わるのに適している。多くのプロジェクトは、他の種類の債券との相関が低く、比較的高い利回りを提供するからだ。しかし、インフラプロジェクトへの債務による資金調達は、ほとんどの資本市場投資家にとって、まったく新しくなじみのない資産クラスである。そのため、仲介機関は、資本市場の投資家にインフラへの関心を持ってもらうために相当なマーケティング活動を行う必要があり、投資商品もそうした投資家に訴求する形で組成しなければならない。
インフラ融資への資本市場の投資を呼び込む方法の一つとして、前述の2つの潮流、すなわち環境的に持続可能な投資市場とスクーク市場の拡大を組み合わせることが考えられる。これまで、両市場は地理的に分かれていた。環境重視の投資家は主に北欧、北米、日本におり、スクーク投資家は主としてペルシャ湾岸地域とマレーシアに集中している。しかし、両市場には強い共通点がある。環境的に持続可能な投資家もスクーク投資家も、自らの価値観や信念に沿う形で資金を活用しようとしている。従来、金融はリスク調整後リターンの最大化だけを追求してきたが、こうした投資家は金融市場の活動に、投資家の倫理観との適合という、もう一つの定性的な目標を加えている。
再生可能エネルギー発電施設の建設など、特定の環境的に持続可能なインフラプロジェクトに資金を充てるスクークであれば、スクーク投資家と従来型の環境重視投資家の双方に訴求する可能性がある。この2つの異なる投資家層を結び付けることは、資本市場における新たな展開となるだろう。一部の従来型投資家、主に銀行の財務部門やヘッジファンドはスクークを購入しているが、従来型投資家の大多数(環境的に持続可能な投資家はほぼ全員を含む)は、こうした商品をまったく扱った経験がない。
しかし、スクークには、従来型投資家に適さない本質的な要素はない。仕組みや用語は当初なじみがないだろうが、妥当なリスク調整後リターンを提供し、適切に販売されれば、スクークは従来型投資家にとって魅力的なはずだ。こうした基準を満たし、環境的に持続可能なプロジェクトに資金を提供するスクークは、主に2つの理由から、環境重視の投資家にとりわけ魅力的となる可能性がある。第一に、スクークは、資金が特定の目的に使われるという高い確実性を投資家に提供する。根底にあるシャリーアの原則に従うため、スクークの発行で調達した資金は、特定可能な資産または事業への投資に充てなければならない。したがって、再生可能エネルギープロジェクトなど、指定されたインフラプロジェクトへの資金提供を目的にスクークを組成すれば、投資家の資金が流用され、別の目的に使われる可能性は低い。
第二に、資本市場では、債券市場より株式市場の方が、環境重視の投資商品がはるかに多い。この供給不足の理由は、企業債やソブリン債の大半が、発行体の一般的な無担保債務であり、債券の調達資金の使途が特定の目的に限定されていないことにある。多くの環境的に持続可能な投資家は資金の使途を正確に把握したいと考えているため、発行体のすべての活動が投資家の環境基準を満たさない限り、発行体の一般債務である債券の訴求力は限られる。従来型の債券に最も近いスクークは、その調達資金が特定の環境上有益な目的に充てられる場合、環境投資家向けの債券供給の不足を補う一助となり得る。
従来型の資本市場では、近年、環境重視の債券が登場し始めている。たとえば世界銀行は、2008年以降、「世界銀行グリーンボンド」と呼ばれる種類の債券を発行している。世界銀行のすべての活動に資金を提供するのではなく、世界銀行グリーンボンドの調達資金は、事前に定められた低炭素開発の基準を満たす特定のプロジェクトの支援にのみ充てられる。これらの債券は環境的に持続可能な投資家から非常に好評を得ており、その仕組みは他の超国家機関、企業、準政府機関の発行体にとってモデルとなっている。持続可能なインフラの資金調達を目的とする「グリーン」スクークは、この市場をさらに拡大するとともに、従来型金融とイスラム金融の間の隔たりを埋める一助となる可能性がある。
本記事は、 世界銀行のブログ「Voices」で初めて掲載されました。掲載は、世界経済フォーラムが見解を支持することを意味するものではありません。
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著者:マイケル・ベネットは、世界銀行財務局のデリバティブ・ストラクチャードファイナンス部門責任者。
画像:2007年2月14日、シンガポールの中心業務地区で建物の前を歩く男性。REUTERS/Nicky Loh。


