3月に インドネシア・ルピアが対米ドルで17年ぶりの安値に下落する なか、インドネシア企業が米ドル建て債務を返済できるかどうかについて、世界の投資家の懸念が高まっている。海外借入は憂慮すべき水準にある。 インドネシアの民間対外債務は3倍に増加し 、2007年以降、インドネシア企業の債務総額の40%を占める。さらに、海外借入のある現地企業は輸入コストの上昇にも直面している。
インドネシアの中央銀行であるインドネシア銀行は、 非銀行企業の借り手に対し、最低限の為替ヘッジと外貨資産保有要件を導入した ものの、外貨への大きなエクスポージャーは依然として懸念材料だ。インドネシア企業はこの状況をどう乗り切ればよいのだろうか。
私たちの見解では、同国の海外資本への依存を軽減するには、補完的で強固な自国通貨建て国内債券市場の発展が必要だ。企業債務のほぼ40%が外貨借入によるという事実は、インドネシアの国内市場が企業の資金需要を満たせていないことを示唆している。インドネシアの自国通貨建て社債市場は、1997年の28億ドルから2014年には180億ドルに拡大したが、GDP比で測った市場規模は一貫して2%にとどまっている。これに対し、東アジア新興国の自国通貨建て社債市場の平均規模はGDP比23%であり、インドネシア市場は東アジアで 2番目に小さい。これを下回るのはベトナムだけだ。
インドネシアは国内債券市場の活動をどう活性化できるだろうか。国内の機関投資家層を拡大し、機関投資家に国内債券市場への資金投入を促すことだ。
機関投資家の運用資産を増やすには、年金基金や退職関連商品への拠出を義務化するか、拠出を促す必要がある。インドネシアの低い法定拠出率の結果、総所得代替率(個人の生涯平均所得に対する年金給付の割合)は東アジア・太平洋諸国の中で最も低く、 14%というインドネシアの所得代替率は、地域平均の44%を大幅に下回る。
今年7月、インドネシアは普遍的な確定給付型年金制度を導入する。この制度は、より高い法定拠出率となり、既存の確定拠出型年金を補完すると見込まれる。金融教育プログラムの充実を通じて、任意拠出や退職後の生活設計を促すこともできる。驚くべきことに、 インドネシア国民の81%は年金基金について金融リテラシーを欠いている。
機関投資家の運用資産を拡大するだけでなく、インドネシアは 年金基金や保険基金のポートフォリオ要件を緩和し、社債に投資しやすくすることもできる。年金基金や保険基金は、格付け要件など一定の基準を満たす債券にしか投資できないため、銀行預金や国債に資産を過度に配分している可能性がある。
機関投資家の存在が資本市場の発展を加速させる例として、チリが挙げられる。1980年代初頭、チリは財源不足に陥っていた賦課方式の年金制度を、積立方式の制度に置き換えた。その後20年間、年金基金の資産が年平均22%で増加するなか、社債発行も年平均15%という同様に高いペースで増加した。社債発行のこの伸びは、当初、資産の大部分を債券などの確定利付資産に投資した年金制度の発展によるものとされることが多い。
機関投資家層の拡大は、国内債券市場の活性化を促し、ひいてはインドネシアの民間部門を支えるうえで不可欠だ。インドネシア企業が海外市場を利用するのは、ほかに選択肢がないためにすぎない。たとえば通信事業者のPT Indosatは、今年満期を迎える 5,580万ドルおよび2兆2,000億ルピア (約1億6,700万ドル)の借入を借り換える必要があり、外貨エクスポージャーを減らしたい意向を公に表明している。問題は、インドネシア市場がいつその準備を整えるかだ。
世界経済フォーラムの報告書『新興資本市場の発展を加速する:社債市場』は、 こちらからご覧いただけます。
この記事はもともと 『ウォール・ストリート・ジャーナル』に掲載されました。
著者:マイケル・ドレクスラーは世界経済フォーラムの投資家産業部門シニアディレクター兼責任者、ジャンカルロ・ブルーノは世界経済フォーラム米国の金融サービス産業部門シニアディレクター兼責任者。
画像:2014年10月27日、ジャカルタのインドネシア銀行本店で、窓口係がルピア紙幣を数えている。REUTERS/Darren Whiteside



