世界最大の炭素排出国である米国と中国の首脳、バラク・オバマ米大統領と習近平中国国家主席が北京で行った協議から、予想外の画期的な 温室効果ガス排出に関する二国間合意が生まれた。新たな合意の下、米国は今後20年間で2005年比26~28%の排出削減を目指し、中国の排出量は2030年までにピークを迎えるとされる。拘束力のある世界的合意がない中、地球温暖化への寄与を抑える各国のこうした一方的または二国間の約束は、気候変動に対処するための最も現実的な希望となっている。
1997年の 京都議定書 は、気候変動がもたらす最も壊滅的な結果を防ぐ取り組みにおける大きな前進であり、排出量に法的拘束力のある上限を設ける先例となった。しかし、中国やインドのような主要な途上国の約束は含まれず、主としてその理由から、米国はこの条約を批准しなかった。
各国が一方的に排出目標を定める緩やかな個別約束の制度は、京都議定書に続く、より包摂的な枠組みへの信頼と弾みを築く助けとなり得る。多くの人が、その枠組みは2015年にパリで開かれる国連気候変動会議で形作られることを期待している。だが、こうした制度が機能するには、各国にとって何が公平な目標かについて、広く合意が存在する必要がある。そうなれば、擁護団体や研究者は、どの国が基準を満たしているかを示す評価表を作成し、満たしていない国に恥をかかせることもできる。
一見すると、公平な削減とはどのようなものかについて合意はなさそうだ。インドは、平均的な米国人の排出量は平均的なインド人の10倍だと指摘し、排出枠は人口に応じて配分すべきだと主張する。米国は、エネルギー集約型産業が排出をまだ抑制していない途上国へ容易に移転できるなら、自国企業に負担を課すのは不公平だと主張する。双方の言い分には一理ある。
幸い、各国がすでに合意した排出目標――京都議定書および 2010年の国連気候変動会議(カンクン) での目標――を調べた研究によって、歴史的に公平かつ妥当とみなされてきたものを説明し、さらには定量化することができる。排出目標は暗黙のうちに、三つの主要原則を数式化したものに従う傾向がある。すべての国が排出を抑制すべきだが、豊かな国は貧しい国より大幅な削減を受け入れるべきであること、近年排出が急増した国には、それを再び減らすまでにある程度の時間を与えるべきであること、そしていずれの国も、またはいずれの国々の集団も、不均衡に大きな経済的費用を負うべきではないことだ。
京都議定書では、1人当たり所得が10%増えるごとに、合意された排出削減率は1.4%増えた。カンクンでは、所得が10%増えるごとに、 対応する 削減幅は 1.6%だった。この 傾向が 今世紀の残りの期間も続き、重点が徐々に過去の排出水準から1人当たりの目標へ移っていくなら、市場メカニズム(国際取引など)が認められることを前提に、経済モデルは、現在価値に割り引いたGDPの損失が1%を超える国はないと予測する。
もちろん、特定の世界的な排出経路に伴う経済的負担をどう分担するかという問題は、気候変動緩和の取り組み全体を環境面でどれほど野心的にすべきかという問題とはまったく別である。しかし交渉が進む中、この方法を使えば、気候変動の有害な影響を減らす負担が公平に分配されているかを評価し、来月ペルーで開かれる2014年国連気候変動会議に向け、各国が役割を果たしているかを判断できる。
以下のグラフは、各国の1人当たり所得と、2020年に実施すると約束した排出削減幅を比較している。各国の削減幅は、国際的な対策がなかった場合の2020年の予想排出量と2005年の実際の排出量を平均した特定の基準値に対して測定されている。
直線の傾きは京都議定書とカンクンのデータに驚くほどよく一致しており、公平とみなされる内容が時を経ても安定していることを示している。平均すると、所得が10%増えるごとに排出量は1.4%削減される。各国が直線の近くに集まっていることは、この関係が統計的に有意であることを示している。
このグラフからは、さらに興味深い知見が得られる。たとえばインドの目標は控えめだが、住民の所得が低いことを踏まえれば妥当でもある。ノルウェーは最も大きな削減を提示している。これは一部には所得の高さで説明できるが、同国は分担相当分を超えて取り組んでいる。シンガポール、トルコ、モルドバは責任逃れをしているように見える。
最も重要なのは、このグラフによって、京都議定書から距離を置いてきた最も注目すべき二国、すなわち中国と米国が提案した目標を評価できることだ。図が示すように、これらの目標は、歴史的に各国の公平な負担分とみなされてきた水準におおむね沿っているが、両国ともわずかに上積みできる。
中国、米国、欧州連合に続いて他の国々も2030年以降の目標を定める中、公平性を判断するこの統計的な物差しは、各国が負担すべき適切な分担分を定める強力な手段となり得る。
以下との共同掲載: Project Syndicate
著者:ジェフリー・フランケルはハーバード大学ケネディ行政大学院の教授で、以前はビル・クリントン大統領の経済諮問委員会の委員を務めた。
画像:2013年12月9日、山西省太原市の暖房施設の煙突から立ち上る煙の背後に太陽が見える。ロイター。



