ビットコインだけではない:ブロックチェーンが世界の最貧困層を支援する方法

A street sign for Wall Street hangs in front of the New York Stock Exchange May 8, 2013. Stocks pushed further into record territory on Wednesday, driving the S&P 500 to an all-time high close for a fifth day, helped by strength in financials and technology. REUTERS/Lucas Jackson (UNITED STATES - Tags: BUSINESS) - RTXZFHC
Blockchain-based systems are helping people in the developing world in a number of ways.Image: REUTERS/Lucas Jackson
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ウォール街の大手企業は、ブロックチェーンと呼ばれる複雑な技術を使い、さらにすでに驚異的な速さを誇る国際金融を加速させている。しかし、この新技術の恩恵を受けられるのは、金融界の上層だけではない。

最も簡単に言えば、ブロックチェーンとは、取引を記録する安価で透明性の高い方法だ。互いを知らず、したがって信頼し合っているとは限らない人々が、詐欺や盗難を恐れずに安全に資金をやり取りできる。大手援助機関、非営利団体、スタートアップ企業は、ブロックチェーンシステムを発展途上地域全体に広げようと取り組んでいる。世界各地の貧しい人々が、融資を受けるために銀行を利用しやすくしたり、貯蓄を守ったりするためだ。

ビジネスとテクノロジーを研究する学者として、私は、ブロックチェーンや、クラウドコンピューティング、ビッグデータ、モノのインターネットなどの最新技術が貧しい人々に与える影響に注目している。ブロックチェーンシステムが、世界の最貧困層の一部を世界経済と結びつけ始めている主な方法は、すでに4つある。

ブロックチェーンはどのように機能するのか?

ブロックチェーンとは、取引を記録するコンピューターデータベースを指す、少し気取った言い方だ。データベースは一か所ではなく、同時に多くの場所に保存される。ブロックチェーン技術の最もよく知られた例は、ビットコインと呼ばれる電子暗号通貨だが、この概念はさまざまな方法で応用できる。

ブロックチェーンを、誰もが取引記録を投稿できる公開掲示板と考えることもできる。投稿には特定の方法でデジタル署名を付ける必要があり、いったん投稿された記録は変更も削除もできない。データはインターネット上、さらには世界中の多数のコンピューターに保存される。

書き込みや閲覧に開かれていること、コンピューター暗号技術による認証、冗長な保存という特徴が組み合わさり、資金を安全にやり取りする仕組みが成り立つ。また、「スマートコントラクト」と呼ばれる仕組みを利用することもできる。これは、特定の医師がデジタル署名付きの死亡診断書をブロックチェーンに提出した場合にのみ受取人へ保険金を送る生命保険のように、一定の条件が満たされた場合に限って実行される取引だ。

現在、こうしたサービスが先進国でも利用できるのは、銀行に預けられた資金を保護する強力な規制と、正式な契約条件の遵守を定めた明確な法律が各国にあるからだ。発展途上地域では、こうした規則がまったく存在しないことも多い。そのため、規則を前提とするサービスも存在しないか、大半の人が利用できないほど高額になる。たとえばアフリカの一部地域では、当座預金口座を開設する際に、銀行が非常に高額な最低預入額を求めることがあり、その額は平均的な人の年収を上回る場合もある。

一方、ブロックチェーンシステムには、認証や取引の安全性に関する規則を本質的に適用する仕組みがある。そのため、どのような額の資金でも安全かつ安心して保管でき、費用も抑えられる。これはまだ将来の話だが、ブロックチェーンを基盤とするシステムは、すでに発展途上地域の人々を現実に支援している。

国際送金

2016年、海外で働く移住者は、自国の家族に推定4,420億米ドルを送金した。この世界的な資金の流れは、発展途上国の家族や社会の経済的な安定を左右する重要な要因だ。しかし、送金には非常に高い費用がかかることがある。

たとえばMoneyGramを利用して、米国で働く人がガーナへ50米ドルを送る場合、手数料として10ドルを支払うことになるかもしれない。つまり、家族が受け取れるのは40ドルだけだ。2015年の取引費用と手数料率は、平均で銀行経由の送金では10.96%、送金事業者経由では6.36%だった。企業は、費用には信頼性が高く便利なサービスを提供するためのコストが反映されていると説明し、料金を正当化している。

これに対し、香港のブロックチェーン対応企業Bitsparkは、取引費用が非常に低く、1,200香港ドル未満の送金には一律15香港ドルを課金する(150米ドル未満の取引で約2米ドル)。それを超える額には1%を課金する。ブロックチェーンシステムの安全なデジタル接続により、同社は既存の銀行ネットワークや従来の送金システムを介さずに済む。

フィリピン、ガーナ、ジンバブエ、ウガンダ、シエラレオネ、ルワンダへの送金を支援する同様のサービスも、現在の銀行手数料よりはるかに低い料金を課している。

保険

発展途上地域の人々の多くは、健康保険や生命保険に加入していない。主な理由は、収入に比べて保険料が高すぎることだ。高額な事務費用も一因となっている。保険料を1ドル集めるごとに、事務費用はブラジルで0.28ドル、コスタリカで0.54ドル、メキシコで0.47ドル、フィリピンで1.80ドルに達した。また、1日1ドル未満で暮らす人々の多くは、保険に加入する余裕がなく、彼らにサービスを提供する保険会社もない。

たとえばインドでは、健康保険に加入している人は人口のわずか15%にすぎない。加入している人でさえ、相対的に高い保険料を支払っている。その結果、南アジアの人々は、高所得の工業国の人々に比べ、医療費のはるかに大きな割合を自己負担している。

ブロックチェーンシステムはオンラインで取引を検証するため、詐欺を抑止し、発見することができ、保険会社のコストを大幅に削減できる。

Consueloは、ブロックチェーンを基盤とする小口保険サービスで、メキシコのモバイル決済企業Saldo.mxが支援している。顧客は少額で健康保険や生命保険に加入でき、保険金請求は電子的に確認され、迅速に支払われる。

小規模事業者の支援

ブロックチェーンシステムは、資金不足に陥りがちで、借入れの費用が高い、あるいは借入れ自体が不可能なことも多い零細企業の助けにもなる。たとえば、中国の小規模な医薬品販売業者は、病院に医薬品を納入した後、代金を受け取るまで最長90日待つことがよくある。しかし、事業を続けるには現金が必要だ。業者はすぐに支払ってくれる仲介業者に頼るが、代金の全額は受け取れない。病院宛ての100ドルの請求書は、すぐに現金化すれば90ドル相当かもしれない。仲介業者は病院から支払いを受けた時点で100ドルを回収する。

銀行は、請求書の不正が横行する地域や、製造業者と顧客の間で記録に不整合や誤りが多い地域では、融資に応じようとしない。ブロックチェーンシステムを使えば、こうした記録は帳簿に加える前に認証され、変更もできないため、懸念を軽減できる。

中国のこうした製薬会社は、Yijanの支援を受けている。Yijanは、IBMと中国のサプライチェーン管理企業Hejiaが共同で取り組むブロックチェーンだ。同じような課題に直面する電子機器、自動車製造、衣料品の各企業は、金融サービス企業DianrongとFoxconnの中国子会社FnConnが支援するブロックチェーンプラットフォーム、Chained Financeの試験市場となっている。

人道支援

ブロックチェーン技術は、人道支援の改善にも役立つ。詐欺や汚職、差別、運営の不備によって、貧困削減や教育・医療の改善を目的とする資金が、人々の支援に活用されないことがある。

Image: Farman Ali/国連世界食糧計画

パキスタンの試験プロジェクトでは、ブロックチェーンシステムを使い、困窮する家庭が現金や食料を受け取れるよう支援している。Farman Ali/国連世界食糧計画

2017年初頭、国連世界食糧計画(WFP)は、「Building Block」と名付けた取り組みの第1段階を開始し、パキスタンのシンド州で困窮する家庭に食料と現金を支給した。インターネットに接続したスマートフォンで、国連機関から食料品販売業者への支払いを認証・記録し、受給者に支援が届き、業者に代金が支払われ、機関が資金の所在を把握できるようにした。

同機関は、ブロックチェーンシステムの利用により、間接費を3.5%から1%未満に削減できると見込んでいる。また、遠隔地や被災地への支援を迅速化できる。そうした地域にはATMがなかったり、銀行が通常どおり機能していなかったりする場合がある。緊急時には、ブロックチェーン上の通貨が不足する現地の現金に代わり、援助機関、住民、商店が電子的に資金をやり取りできる。

ブロックチェーンは、個人が海外の支援活動に貢献する助けにもなる。南アフリカを拠点とするブロックチェーンプラットフォームUsizoは、誰でも地域の学校の電気料金の支払いを支援できる仕組みを提供している。寄付者は、学校の電力使用量を確認し、寄付でどれだけの電力を賄えるかを計算し、ビットコインを使ってクレジットを直接送金できる。

将来の可能性

将来、ブロックチェーンを基盤とするプロジェクトは、人々や政府をほかの面でも支援できる。世界人口の20%にあたる最大15億人が、自分の身元を証明できる書類を持っていない。そのため銀行を利用しにくくなるだけでなく、投票、医療の受診、就学、旅行といった基本的人権へのアクセスも妨げられることがある。

複数の企業が、ブロックチェーンを活用したデジタル身元証明プログラムを立ち上げており、個人の身元情報の作成と検証を支援できる。必要なのはインターネットに接続したスマートフォンだけだ。顔の特定の表情を作り、話したり、画面上の文章を読んだりする人の写真を撮り、動画に記録する。データはブロックチェーンに記録され、その人の身元確認が必要な人なら誰でも後からアクセスできる。

メールアドレスも電話もパスポートも、出生証明書さえもない多くの貧しい人々にとって、ブロックチェーンは自分が誰であるかを証明する唯一の手段になるかもしれない。それによって生活が大きく改善し、機会が広がる可能性がある。

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