ドル・人民元体制は成長を後押しするか?

ドル・人民元体制は成長を後押しするか?
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開発経済学者の一世代は ロナルド・マッキノンに大きな知的恩義を負っている。マッキノンは今月初めに亡くなった。彼の洞察は1973年の著書 『経済発展における貨幣と資本』 で紹介されたもので、金融抑圧(債務を減らすために政府が資金を自らに振り向けること)を行う政府は金融発展を妨げるというものだった。実際、マッキノンは新興国の金融部門が未発達だった理由を理解する鍵を示した。

晩年、マッキノンは関連する、画期的となる可能性もある概念、すなわちドル・人民元体制に取り組んでいた。彼の見方では、こうした制度は、世界の金融安定と成長を損なっている金融抑圧と分断を緩和するだろう。問題は、とりわけドルの世界的支配から長らく恩恵を受けてきた米国を中心に、実権を握る者たちがこのような協調的制度に同意することがあるのか、という点だ。

ドルの世界的な優位が金融抑圧の一因となっているという見方は、歴史認識の大きな転換を示している。 マッキノンが指摘したように、第二次世界大戦後にドルが有力な国際通貨となったのは、 軽減する うえで役立ったからだ。高インフレ、実質金利のマイナス、過剰な規制が広がっていた欧州とアジアで、金融抑圧と分断を軽減したのである。価格の基準にドルを用い、資本コストの基準に米連邦準備制度理事会(FRB)の金利を用いることで、請求書発行、支払い、決済、流動性、中央銀行の準備金はいずれも、より安定し信頼できるものとなった。

米国が競争力と生産性を維持している限り、ドルにペッグした通貨は大きな恩恵を受けた。1950~1960年代の西欧、1970~1990年代の奇跡的な成長期にあったアジア、そして1996~2005年の中国など、移行期にある経済にとって、ドルは構造転換に求められるマクロ経済安定化の取り組みと、財政・金融規律を支える基準となった。

しかし、二つの出来事がこうした恩恵を損なった。第一に、1971年、米国はドルと金との交換を停止し、変動相場制の新たな為替制度が生まれる道を開いた。

続いて1980~1990年代に「日本たたき」の時代が訪れ、日本の米国産業への競争圧力が弱まらなければ貿易制裁を科すと、米国が脅しをかける事態に至った。その後、円・ドル相場が1ドル=360円から1ドル=80円へと急激に円高となり、世界第2位の経済大国は20年にわたるデフレと停滞に苦しんだ。

この間、マッキノンは、米国の貿易相手国に調整の負担を負わせることで、ドルの優位が「相反する美徳」をもたらすと論じた。日本、ドイツ、中国のような黒字国は、デフレを招くリスクを冒して通貨を切り上げるよう圧力を受けた。そうしなければ、その「割安な」為替レートは不公正だと批判された。

しかしマッキノンは、この対立を解決する最善策は変動相場制への移行だという通説に反対した。その代わりに、ドルの変動に直面してもマクロ経済の安定をもたらす地域通貨をアジア諸国が構築するよう提唱した。ブレトンウッズ体制の機関が資本規制の有用性を認めるずっと前から、マッキノンは、一定の状況下では健全性を重視した銀行規制を補うために資本規制が必要となる可能性を主張していた。

マッキノンは中国の経済学者の間で、とりわけ根強い支持を得ている。中国が最も高い成長を達成したのは、人民元をドルにペッグしていた時期だった。この制度には、揺るぎない改革と厳格な財政規律が必要だった。

人民元は2005年以降、対ドルで年平均約3%のペースで着実に上昇し、中国の経常黒字は縮小した。世界経済が弱い環境にある中、年率約7%の成長を維持しながらマクロ経済の不均衡に対処する中国の進展は、決して小さな成果ではなかった。

しかし、人民元の上昇はキャリートレードを行う投機家も呼び込んだ。彼らは、高金利(特に2008年以降)と為替差益を得るために人民元建て資産を購入した。これも一因となり、中国の外貨準備高は急増し、2000年の2,500億ドルから今年は4兆ドルに達した。

マッキノンが 認識していた問題は、こうした「ホットマネー」の投機的な流入が中国のマクロ経済政策手段を弱め、金融抑圧をますます強めていることだ。まず、中国の指導者たちは、金利が上がれば流入がさらに増えると認識し、金利の自由化、さらには資本取引の自由化にも、ますます慎重になっている。

事態をさらに悪化させているのは、中国当局が不胎化政策と銀行預金への高い準備率を通じて信用を引き締め、通貨供給を規制していることだ。この方法は実質経済成長を大きく損なう。金利を大幅に引き上げずにこの落ち込みを食い止めるため、当局は行政主導で対象を絞った信用緩和に踏み切っている。

人民元のさらなる上昇を求める米国による「中国たたき」を強めても、明らかに解決にはならない。むしろ米国は自国の財政赤字削減に注力し、それによって中国の内需拡大の取り組みを後押しすべきだ。FRBの政策金利を過去の趨勢に沿った水準に戻せれば、中国には成長パターンに応じて金利を調整し、資本取引を秩序立てて開放するための政策余地が広がる。

要するに、世界の金融安定を強化するには、世界最大の二つの経済大国が協力する必要がある。中国と米国が協力すれば、金融抑圧を緩和し、保護主義的な傾向を抑え、世界の安定を支える強固な基盤の維持に貢献できる。残念ながら、マッキノンの政策提言は米国の主流派経済学者や政策立案者には支持されてこなかった。彼らは自由市場の言説がもたらす短期的な政治的利益を好む。

米国の指導者たちは、フランスの元財務相ヴァレリー・ジスカール・デスタンが「法外な特権」と呼んだ、ドルの世界的な優位が米国にもたらすものには、相当な責任も伴うと認識すべき時だ。結局のところ、世界の金融安定は公共財である。

以下の内容は、 Project Syndicate

著者:アンドリュー・シェンは、Fung Global Instituteの特別研究員であり、UNEP持続可能な金融諮問委員会のメンバー。シャオ・ゲンはFung Global Instituteの研究部門長。

画像:2010年9月13日、香港の両替所に展示された人民元(上)と米ドル紙幣の写真。REUTERS/Bobby Yip 

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