ノーベル賞受賞経済学者のジョセフ・スティグリッツが、 新たな全米経済研究所(NBER)の論文を発表し 、懸念すべき結論に至っている――ロボットは本当にあなたの仕事を奪いに来ている。
経済理論では、イノベーションによって労働者の効率が高まり、より少ない資源でより多くを生産できるようになるはずだ。しかしその代償として、同じ量の生産に必要な人員が減り、技能水準の低い仕事が減少する。
しかし(これも理論上は)、雇用を維持する労働者が得る利益は、職を失う人々の損失を上回るはずであり、その利益は他の産業でより技能を要する仕事の創出を後押しする。
残念ながら、理論は現実に直面すると、常にきれいに当てはまるとは限らない。スティグリッツによれば、イノベーションをめぐってまさにこれが起きた。彼の言葉を借りれば(強調は原文):
「技能偏重型のイノベーションが福祉を高めうるという主張は、通常、熟練労働者の利益が未熟練労働者の損失を補って余りあることを意味すると受け取られている。しかし、熟練労働者は未熟練労働者に補償することができるとしても、実際に補償が行われることはめったにない。」
スティグリッツは、産業革命をもたらしたような真に破壊的なイノベーションには、産業から押し出される人々が代替の仕事を見つけられるよう、経済全体の広範な再編が必要だと論じる。残念ながら、「市場はしばしば、そうした再編をうまく処理できない」と彼は述べ、その結果、長期にわたる高失業率と格差の拡大を招くという。
同氏によれば、こうした市場の失敗が世界恐慌の発生条件を作り出す一因となった。1920年代、農業部門の技術変化によって農村労働者の所得が減少したが、銀行や企業はその崩壊を予測できなかった。その結果、債務が過剰に積み上がり、労働者が新たな技能を身につけるために都市へ移ることを妨げ、最終的に需要の急落を引き起こした。
現代における製造業の衰退を放置すれば、同様に懸念すべき影響が生じる可能性がある。さらに、労働節約型イノベーションの影響を抑える政策を政府が導入しなければ、低所得労働者は「さらに長期的に見ても」不利な状況に陥り、社会の中でも特に脆弱な集団に低賃金と高失業率が集中しかねない。
実際、これが、米国の技能水準の低い労働者の賃金が40年以上にわたって停滞している理由の一端を説明するかもしれない。
近代的な機械が失業と貧困をもたらすと信じたラッダイト運動の人々は、社会や経済の進歩を妨げる視野の狭い伝統主義者の例として、1世紀以上にわたり引き合いに出されてきた。要するに、スティグリッツのメッセージは、彼らは実際には正しかったということだ。
本記事は、 Business Insiderとの共同制作で掲載されています。
著者:トマス・ハーストは、Business Insider UKの政治担当記者。
画像:自動車製造工場。ロイター


