従業員の幸福度が高まると、利益も増えるのか?

従業員の幸福度が高まると、利益も増えるのか?
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多くの国で、市民のウェルビーイングが政治課題の上位に浮上している。たとえば英国政府は最近、ウェルビーイングの決定要因とその改善方法を調査するため、3年間で350万ポンドの初期資金を投じる「 What Works Centre for Wellbeing」の設立を発表した。これは、英国国家統計局が開発し、先駆的に導入した ウェルビーイング指標 への政府投資に続くものだ。こうした指標は、GDP推計と比較可能な形で国の状況を示す国民経済計算の基礎にすべきだという意見もある。

ウェルビーイングを公共政策の目標とすべきだという考えは、レイヤード卿(2011年)や、フランスのサルコジ政権が委嘱したノーベル賞受賞者たち(Stiglitz et al. 2009)を含む著名な経済学者によって、以前から提唱されてきた。一方、懐疑的な人々は、ウェルビーイングを測ろうとすることが良い考えだとしても、政府が介入してそれを改善しようとするのは本当に適切、あるいは賢明なのかと疑問を呈する。

心理学者や経済学者などは、個人のウェルビーイングを左右する要因について多くの知見を持っており、重要な要素の一つが、仕事上で何をするかである。最近のある研究では、仕事はその時々の幸福感を損なう活動の中でも特に大きなものの一つで、実際、病気でベッドにいることの次に位置した(Bryson and MacKerron 2013)。しかし、ほかの研究では、どのような仕事か、また雇用主がその仕事をどう設計するかによって大きく異なることが示されている。

従業員のウェルビーイングに関する新たな証拠

英国ビジネス・イノベーション・技能省(BIS)のために私たちが最近実施したレビューは、仕事の質を高めることで雇用主が従業員のウェルビーイングを改善できることを示している(Bryson et al. 2014)。従業員が仕事のペースや内容を自分で決められる場合、労働者に課される要求が過度でない場合、仕事に変化がある場合、能力開発の機会がある場合、上司が支援的である場合、賃金や待遇が公正だと認識されている場合、そして職場環境が快適で安全な場合、従業員のウェルビーイングは高まる。

従業員のウェルビーイングの改善は利益につながるのか?

しかし、重要なのは雇用主が従業員のウェルビーイングを改善できるかどうかではない。そうすることが経済的利益にかなうかどうかだ。結局、経済学で一般に想定されるように企業が利益最大化を目指すなら、従業員のウェルビーイング改善に伴うコストを考慮する。従業員のウェルビーイングを改善することは、それ自体が社会にとって望ましい目標かもしれない。また、医療サービス支出の削減など、プラスの外部効果もありうる。しかし、雇用主が従業員のウェルビーイングに投資するのは、そうする明確な事業上の根拠がある場合に限られるだろう。その根拠は企業にとってのリターンに基づく。

従業員のウェルビーイングの改善と企業の収益改善を結びつける理論は、一義的ではない。多くは、企業の生産工程、採用する労働者の種類、生産工程に付加価値をもたらす能力、そしてウェルビーイングが生産性に影響する度合いに左右される。

たとえば、企業の産出は、有能な上級幹部に大きく依存している場合がある。その業績は企業の戦略的方向性や、指揮命令系統の下位にいる労働者の生産性に影響しうる。したがって、幹部のウェルビーイングを意欲や努力につなげられるなら、それに投資するのは理にかなうかもしれない。一方、単調な定型業務をこなし、企業にほとんど付加価値をもたらさず、失業者の中から採用した人材で容易に補充できる従業員のウェルビーイングに、企業が投資したいと考えるかは明らかでない。

企業が従業員のウェルビーイングへの投資に前向きだとしても、主観的ウェルビーイングの向上が職場や組織の収益性向上につながるとは限らない。第一に、ウェルビーイングを改善するために雇用主が負担した可能性のあるコストを考慮しなければならない。第二に、さまざまな制度的・文脈的要因が介在し、業績の改善が失われることもある。第三に、職場や組織の水準での関係を考える際には集団力学が作用するが、個人への影響に注目する場合には考慮されない。

ウェルビーイングと業績の関係

従業員のウェルビーイングと個人の業績を結びつける実証的証拠はある。たとえば、主観的ウェルビーイングの高さは、労働市場における個人の業績にも波及する(Judge et al. 2001, Lyubmirsky et al. 2005)。また、少なくとも実験室での実験環境では、ウェルビーイングの向上と労働者の生産性改善との間に因果関係があることを示す最近の証拠もある(Oswald et al. 2014)。しかし、組織レベルの実証的証拠は極めて乏しい。

関係を示す最も説得力のある証拠は、おそらくフィンランドの製造業を対象とした調査である。同調査では、職場の平均的な仕事満足度が、その後の従業員一人当たり付加価値と独立して関連していることが明らかになった。工場の労働者の平均仕事満足度が6段階尺度で1ポイント上昇すると、ほかの要因を調整したうえで、2年後の労働時間当たり付加価値は3.6パーセントポイント上昇した。観測されない事業所レベルの異質性を考慮するために設計された二段階推定法では、この推定値は9パーセントポイントに上昇した(Bockerman and Ilmakunnas 2012)。

私たちのBIS報告書は、従業員のウェルビーイングと企業業績の関係を英国で調査した初めての研究である。全国を代表する2011年職場雇用関係調査(WERS)を分析したところ、従業員の仕事満足度が高まった職場では職場業績も改善する一方、従業員の仕事満足度が低下すると職場業績に悪影響が及ぶことが分かった。

従業員の仕事満足度は、職場の財務業績、労働生産性、産出物やサービスの質、さらにこの3つの側面を合算した尺度と正の関連がある。金銭面以外の仕事満足度が改善した職場は、労働者全体の平均満足度で測る場合も、「非常に満足している」人の割合の増加、または「非常に不満である」人の割合の減少で測る場合も、業績の改善を経験している。

これらの知見は、従業員の仕事満足度を高めることができる雇用主は、職場の収益性(財務業績)、労働生産性、産出物やサービスの質の改善を期待できるという見方と一致する。

仕事満足度の向上と職場業績の改善との関係が因果的だと断定することはできないものの、逆の因果関係を検証するテストを経ても知見は頑健であり、職場内の経時的な分析でも確認される。したがって、結果が職場間の固定的で観察不能な違いによって生じた可能性は排除できる。ゆえに、期待される業績上の利益に基づき、雇用主が従業員のウェルビーイングへの投資を検討することには、ひとまずの根拠がある。

私たちが見いだした関係は、仕事満足度と職場業績の間にある。仕事に関連する感情(緊張、落ち込み、不安、憂うつ、居心地の悪さ、惨めさを感じる時間で測定)など、従業員の主観的ウェルビーイングのほかの側面には、この関係は明らかでない。したがって分析結果は、雇用主が従業員のウェルビーイングのこうしたほかの側面に投資する明確な根拠はないことを示唆する。ただし、同時に、そうした投資に明確な不利益があるとも認められなかった。

結びの考察

これらは心強い知見だが、分析の範囲上、従業員のウェルビーイングと職場業績の結びつきを生み出すうえで重要な役割を果たした可能性のある過程を探ることはできなかった。この研究で明らかになった好ましい成果を雇用主がどのように促進できるかについて、知見を深めるためのさらなる研究が必要である。

本記事は、 VoxEU

との協力により掲載されています。著者:Alex Brysonは、National Institute of Economic and Social Researchの上級研究員。John Forthは、同研究所の主任研究員。Lucy Stokesは、同研究所の上級研究員。

画像:ソーラーパネルの展示の横に女性のシルエットが見える。REUTERS/Yuriko Nakao

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