流動性問題が、意図せぬギリシャのユーロ離脱を引き起こす可能性はあるのか?

流動性問題が、意図せぬギリシャのユーロ離脱を引き起こす可能性はあるのか?
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ギリシャが次々と返済期限を迎えるなか、同国が日々直面する最大の課題は、公務員への給与支払いと債務返済に必要な資金の確保だと思っても無理はありません。これは依然として重要な課題ですが、ギリシャにとって最大のリスクは、銀行の流動性状況が悪化していることにあります。まさにこのリスクが、ギリシャのドラマの展開をめぐる主要な当事者全員が懸命に回避しようとしている悪夢のシナリオ、すなわち不慮の事態によるギリシャのユーロ離脱を引き起こしかねないのです。

危機の際、各国の銀行は流動性を確保するため、最後の貸し手である中央銀行に頼ります。通常の金融政策オペレーションを通じて中央銀行から借り入れることはできますが、そのためには投資適格債などの高品質資産を担保として差し入れる必要があります。しかし、こうした資産は、とりわけギリシャのような危機に見舞われた国では不足しがちです。

こうした極端な状況では、中央銀行は、支払能力があり、履行中の融資や国債など他の良質な担保を差し入れられる銀行に対し、緊急流動性支援(ELA)と呼ばれる緊急融資を供給します。中央銀行は、ELAの供給を拒めば、ある銀行の流動性問題が、広範な取り付け騒ぎを伴うシステミック危機へと容易に発展しうることを理解しています。

慎重を期すため、中央銀行はリスクに応じて、担保として差し入れられた資産の価値に大幅な 掛け目 を適用します。たとえば、銀行が評価額1億ポンドの担保を差し入れ、掛け目が50%なら、その銀行が受け取るELAは5,000万ポンドです。

ユーロ圏では、ELAの供給は各国の中央銀行が担いますが、ユーロ圏の規則に従う必要があり、ECB政策理事会の3分の2以上が異議を唱えないことが条件となります。政策理事会は、ELAがECBの金融政策目標(ユーロ圏各国の中央銀行による政府赤字のファイナンスを防ぐことを含む)を妨げないと納得する必要があります。

各国の中央銀行がELAを供給できるかどうかは、最終的には、ECBが供給する銀行券を含むユーロ流動性を利用できるかどうかにかかっています。何らかの理由で各国の中央銀行が系列銀行にユーロ流動性を供給できなくなれば、該当国は経済・金融の崩壊に直面しかねません。決済システムが機能を停止し、(すでに流通している銀行券に依存した)現金取引だけが行われることになるからです。

信頼の低下

危機の間、ギリシャのユーロ離脱がたびたび話題になり、ギリシャの銀行への信頼は損なわれてきました。預金者は、ギリシャのユーロ離脱が起きれば預金が自動的にドラクマ建てに再換算され、その価値が急速に下落すると疑っています。このリスクを避けるため、預金者は資金をギリシャ国外の銀行に移したり、現金を手元にため込んだりしています。

その結果、預金はギリシャの銀行システムから流出しました。2010年以降、預金は40%超減少し、 約1,450億ユーロとなりました。2015年第1四半期だけで、 純流出額は225億ユーロに達しました。1日あたり5億ユーロの預金流出も珍しくありませんでした。そのため、ギリシャの銀行預金を示すグラフは、危機、より正確にはギリシャのユーロ離脱が起きるという認識上のリスクを測る指標として容易に役立ちます。

当然ながら、預金流出の大部分は、ELAを含む中央銀行の流動性供給によって補われてきました。その額は現在、 1,200億ユーロ(うち790億ユーロがELA) に達しており、ギリシャのアナリストは 担保余力が減少している と示唆しています。また、このリスクの高まりを反映するため、ECBが より高い担保掛け目を適用するとの話 も出ています。そうなれば、急速に悪化する流動性状況はさらに深刻化しかねません。

しかし、預金流出額とELAの数値だけでは、(緩やかなものか急速なものかを問わず)取り付け騒ぎに対する銀行システムの脆弱性の程度を十分に物語ることはできません。その実態を語れるのは、日々続く資金流出を注意深く監視している人々だけです。そうして初めて、このように脆弱な環境では、どの日も破局の日になりうると理解できます。

さらなる不確実性

銀行の流動性バッファーが枯渇しかけ、追加のELAへのアクセスが制限され、預金流出も収まらないなか、ギリシャ当局は銀行の流動性を守るため、まもなく異例の措置を講じざるを得なくなる可能性があります。銀行システムへの制限、すなわち 資本規制を課さざるを得ないかもしれません。
最も緩やかな形の資本規制では、投資目的での国外送金や、多額の現金引き出しが禁止されます。最も厳しい場合、預金者が資金にアクセスできるのは、日用品を購入するための最低限に限られます。これは経済活動を大きく妨げ、信頼をさらに損なうでしょう。また、一時的な措置だと信頼できる形で受け止められない限り、さらなる不確実性を生み出す可能性も高いでしょう。

さらに、ユーロ流動性と歳入が枯渇するにつれて、政府やその他の組織は支払いを履行するため、IOU(将来ユーロで支払うという約束)を発行せざるを得なくなる可能性があります。最近の先例としては、短期間で終わったものの、 2009年のカリフォルニア州予算危機がありました。こうしたIOUはやがて並行通貨となり、誰もが恐れるギリシャのユーロ離脱の前触れとなる可能性があります。IOUは発行者の信用力を反映して、かなりの割引価格で取引され始めるでしょう。しかし、一部の取引を可能にする代替的な支払手段が存在するだけでも、完全な崩壊を回避する助けとなります。

並行通貨が機能すれば、ギリシャ政府は債権者との合意からさらに遠ざかることになるかもしれません。ギリシャ政府のデフォルトは、この悪夢のシナリオにおける最後の打撃となり、誰にも防げず、予測できない可能性のある信用事由の連鎖を引き起こすでしょう。

ギリシャのユーロ離脱と、そこから生じうるあらゆる不確実性は、主要な当事者全員が阻止に向けて懸命に取り組んでいるにもかかわらず、自己成就的予言の最たるものとなるかもしれません。もちろん、2月20日に合意した改革の未確定事項について、ギリシャと債権者が近いうちに合意に達しない場合の話です。

この記事は、当初 The Conversationに掲載されました。 元の記事をお読みください。掲載は、世界経済フォーラムが見解を支持することを意味するものではありません。

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著者: パニコス・O・デメトリアデス は、 レスター大学の金融経済学教授です。

画像:アテネのギリシャ銀行前ではためくギリシャ国旗と欧州連合旗。REUTERS/John Kolesidis。

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