近年、米国の製造業者は強気だ。それには十分な理由がある。欧州の多くの国と比べ、米国では生産性が向上する一方で単位労働コストが低下しており、同時にエネルギーコストも下がっている。たとえば、Conference Boardによると、2007年から2012年にかけて米国の労働生産性は約3%上昇した一方、同じ期間に英国では約3%低下した。シェールオイル・ガスブームによって価格が押し下げられた米国の天然ガス価格は、欧州の半分だ。
とりわけ欧州の製造業者は、競争に苦しんでいる。スウェーデンの家電メーカー、Electroluxが、ケンタッキー州ルイビルにあるGEのAppliance Park製造施設とGE Appliancesブランドを買収することに合意したのも、その一因かもしれない。
また、過去数十年にわたり世界の製造業を牽引してきた中国に対しても、米国が競争力を発揮できると考える十分な理由がある。ここから、次の疑問が浮かぶ。米国は実際、製造業の新たな新星となり得るのだろうか?
「エネルギーコストと労働コストの低さの両面で、米国は欧州諸国より圧倒的に競争力があります」と、UCLAアンダーソン経営大学院のグローバル経済・経営学教授、Kati Suominen氏は語る。実際、Boston Consulting Group(BCG)の2014年の調査によると、過去10年間でEUの製造コストは米国と比べて最大10%上昇した。
「中国の労働コストの推移に関する予測が正しければ、今ごろ米国は中国より競争力を高めているはずです。ただし、経済の余剰能力が縮小するにつれ、米国でも賃金上昇があるでしょう」とSuominen氏は言う。実際、同じBCGの調査によれば、製造コストにおける中国の米国に対する優位性は、2004年の15%から10年後には5%未満に縮小した。
Suominen氏は、近い将来、製造コストを左右する要因として、労働コストよりも、3Dプリンティングや工場の自動化といった技術の利用可能性が重要になるかもしれないと注意を促す。それでも、「現時点で私が導き出す結論は、そう、米国は世界の製造業をリードするのに有利な立場にあるということです」と語る。
「そう簡単ではありません」と、ハーバード・ビジネス・スクールの経営実務教授、Willy Shih氏は言う。同氏は、米国の労働コストが現在比較的低く、エネルギーコストの低さが、特に石油・ガスを原料とする石油化学製品などで、同国に競争優位をもたらしている点には同意する。しかし、より安価な海外に生産拠点を移した製造業者を呼び戻すのは、そう簡単ではないかもしれないと警告する。
同氏によると、問題の一つは米国の「産業コモンズ」が衰退していることだ。製造業の再興を支えるために必要なサプライヤー基盤、労働者の技能、その他の要素が、その役割を果たせる水準に達していない可能性がある。
Shih氏はまた、米国の製造業ブームには一様でない側面があり、生産を国内に戻すのに適した分野もあれば、おそらく決して戻らない分野もあると考えている。家電などの小型製品は、今後もアジアで製造される可能性が高いと同氏は述べる。「中国は電子機器のサプライチェーンを掌握しているので、生産を戻す意味はあまりありません。部品をすべて梱包して米国に送り、組み立てるコストは、アジアでそのまま組み立てるより高くつきます。」
Shih氏によると、Appliance Parkで製造されている製品を含む大型製品には、この問題はそれほど当てはまらない。生産量が多く、携帯電話のような製品と比べて相対的に価値密度が低いため、たとえば冷蔵庫や自動車の製造を米国に戻すほうが理にかなう。「今年、Hondaは米国から輸出する米国製自動車の台数が、日本から米国へ輸入する台数を上回るでしょう」とShih氏は語る。つまり、自動車、航空機、家電などの大型製品の製造は、今後も米国で好調を保つはずだ。
製造業のインフラが衰退しているという点では、少なくともAppliance Parkには、その課題は当てはまらないようだ。GEは2009年から2012年にかけて同施設の改修に8億ドルを投資し、Electroluxとの取引を最終決定する一方で、近い将来さらに2億7,700万ドルを投資する意向を発表した。
ElectroluxによるGE Appliancesの買収契約が成立するのは、早くても2015年半ばとなるため、Appliance Parkの将来を判断するには時期尚早だ。しかし、欧州の家電メーカーが過去最大の買収を完了させるなか、米国の製造業が今後も競争力を保つことに大きく賭けているようだ。
この投稿は当初、 GE LookAheadに掲載された。
著者:Michael BelfioreはGE LookAheadのライター。
画像:サウスカロライナ州ウィンズボロのElement Electronicsで、組立ラインの作業員が32インチテレビの背面カバーを取り付けている。REUTERS/Chris Keane


