原油価格の下落はどのような影響をもたらすのか?

原油価格の下落はどのような影響をもたらすのか?
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原油価格は7月に1バレル当たり115米ドルに達した後、ここ数日で65米ドルを下回るまで大幅に下落した。急激な価格下落にもかかわらず、 OPEC は減産の意向がないことを示した。石油市場は依然として供給過剰であり、ユーロ圏やトルコ、ブラジル、ロシア、中国を含む複数の新興国の経済指標が低調だったことを受け、需要面から原油価格に下落圧力がかかっている。このため、原油価格はさらに下落し、より長期にわたって低水準にとどまる可能性がある。

資源が豊富な多くの国の経済見通しは、原油価格に左右される。ロシアとカザフスタンはその極端な例だ。こうした依存は、輸出収入と政府歳入の変動をもたらし、為替制度によっては自国通貨の下落につながる。ロシアでは、石油とガスが輸出の約70%、連邦予算の50%を占める。カザフスタンでは、石油収入が政府歳入総額の約半分、外貨収入の45%を占めている。

先行研究によれば、一次産品輸出国は為替レートを変動制とし、独立した金融政策によって一次産品価格のショックに対応すべきである(Frankel 2014、 Broda 2004、 Edwards and Yeyati 2005、および Céspedes and Velasco 2012)。固定相場制や厳格に管理された変動相場制といった、現行の為替制度によって金融政策がこの課題への対応を制約される場合、マクロ経済の安定化に向けた主な負担は財政政策が担うことになる。 (固定相場制や厳格に管理された変動相場制という形で現行の為替制度が維持され、金融政策がこの課題への対応を制約される結果、財政政策がマクロ経済の安定化に向けた主な負担を担うことになる。

1999年以降、管理変動相場制を採用していたロシアでは、最近の原油価格の動向により、7月以降、通貨価値が大きく損なわれた(図1)。12月初めまでにルーブルは米ドルに対して55%下落した。10月だけで、ロシア中央銀行はルーブルを支えるため約300億米ドルを費やし(外貨準備高は約4,200億米ドルに減少)、原油価格の急落は、中央銀行が 完全変動相場制 への移行を(当初は2015年1月に予定していたところ)予想外に11月10日へ前倒しした要因の一つとなった。

為替制度が厳格に管理された変動相場制であるカザフスタンでは(図2)、当局はテンゲを安定させるため、2014年7月から10月にかけて、推定90億米ドル(外貨準備高の約半分)を費やした。

両国政府は現在、財政面の課題にも直面しており、適切な財政政策での対応を検討している。

石油やガスをはじめとする天然資源からの収入は、本質的に変動が大きく不確実で、外需にも左右される。長期的な繁栄を維持するため、資源が豊富な国は、資源収入を貯蓄して金融資産を蓄積するか、物的資産に投資する必要がある。つまり、好況期に設備投資に充てるべきだ。 資源収入を貯蓄して金融資産を蓄積するか、物的資産に投資する、すなわち好況期に設備投資に充てる。マクロ経済運営と財政計画の短期的な課題は、原油価格の変動と予測の難しさに起因する。これはしばしば、資源輸出国の政府支出を景気循環に増幅的に追随させるパターンにつながり、強固な財政アンカーを用いて公的支出を平準化する必要性を生む 資源輸出国の政府支出を景気循環に増幅的に追随させるパターンにつながり、強固な財政アンカーを用いて公的支出を平準化する必要性を生む。


ロシアとカザフスタンが直ちに取り組むべき政策課題は、予算の調整である。
ロシアの下院と大統領は、予定どおり 2015年度予算案を承認する ことを決めた(この予算は、原油価格が1バレル当たり100米ドルをわずかに上回る水準で均衡する)。また、連邦支出に上限を設ける既存の財政ルールを順守することも約束した。これにより、政府は準備基金を活用できる。変動相場制の下では、原油価格の下落はルーブル安につながるため、予算への両方の影響は部分的に相殺される。今年は、景気循環に逆らう形で経済を再生する計画が、戦略的投資プログラムを通じて実施され始めた。このプログラムは、将来の年金債務に備えて積み立てられたロシア第2の準備基金である国民福祉基金からの拠出により、主に予算外で賄われている。

カザフスタン政府は異なる道を選んだ。原油価格の低下を反映して2015年度予算を修正し、予算上の原油価格を当初の1バレル当たり90米ドルから80米ドルに引き下げた一方、2014年11月には予想外に、2015~2017年を対象とする大規模な新規投資プログラムを発表した。総額180億米ドルのこのプログラムは、国立石油基金からの90億米ドルの取り崩し(3年間で30億米ドル)と、世界銀行を含む複数の国際金融機関との約90億米ドルのプログラム枠組み協定によって賄われる。プログラムは、道路、住宅、公共事業、社会インフラへの中期投資に加え、中小企業への継続的な支援に重点を置いている。

両国とも、非石油財政赤字比率のような強固な財政アンカーや、対象を適切に絞った社会的セーフティネットなど、より優れた安定化策を活用すれば、短期的なショックへの対応力を高め、場当たり的または後追いの財政介入の必要性を減らせる。原油価格の下落が 私たちの予測どおり 続くなら、公的主導の投資刺激策には限界があるだろう。

最後に、おそらく最も重要な点として、財政刺激策の効果は国によって異なり、公的投資が常に期待された好影響をもたらすとは限らない。ロシアでは、 公的投資が民間投資を大幅に押しのける可能性が示された。ロシアの元財務相アレクセイ・クドリン氏は最近、企業の信頼を取り戻すためにロシアの制度を改善し、 政府行政の効率化と地方政府の権限拡大、司法制度と年金制度に対する国民の信頼の再構築を含めることを提案した。要するに、連邦レベルで決定される公的設備投資の拡大を目指す措置より、こうした措置のほうが民間市場と起業活動の活性化に役立つだろう。

カザフスタンでは、すぐに着工できるプロジェクトがなければ、構想中の投資プログラムがGDPに及ぼす影響は、今後1、2年は小さい可能性がある。また、財政規律を確保するために国立石油基金を繰り返し取り崩すことには慎重を期し、経済の吸収能力、プロジェクトの実現可能性、支出の効率性を考慮する必要がある。

この記事は当初、 世界銀行のブログ「Future Development」に掲載されたものです。掲載は、世界経済フォーラムがその見解を支持することを意味しません。

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著者:ドイツ国籍のビルギット・ハンスル氏は、世界銀行の ロシア連邦担当主任エコノミストであり、欧州・中央アジア地域の貧困削減・経済運営ネットワークで国別セクター・コーディネーターを務める。

画像:トルコの地中海沿岸にあるジェイハン港で、作業員が石油タンクの階段を下りている。REUTERS/Umit Bektas

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