中国電力業界のグリーン移行における新たな動向は、中国の「二酸化炭素排出量のピークアウトとカーボンニュートラル」という目標の実現に大きな影響を及ぼす。
AIの急速な発展を踏まえ、AIによる電力需要を考慮して化石燃料の段階的廃止の時期を再評価する必要がある。
AIのエネルギー需要の拡大を相殺するため、需要側の効率を高めるべきである。
エネルギー移行を軌道に乗せるには、人工知能の発展による電力需要の急増に対応する行動計画が必要だ。電力業界の低炭素化移行は、中国の「二酸化炭素排出量のピークアウトとカーボンニュートラル」という目標、すなわち2030年までに排出量をピークアウトさせ、2060年までにカーボンニュートラルを達成する目標の実現と、中国経済の質の高い発展に関わる。
電力業界のグリーン移行をめぐる新たな動向のうち、注目すべきものがいくつかある。
電力の需要、供給、AI
第一に、エネルギーと電力の需要が急速に伸びている。2020年以降、電力需要の伸びはGDP成長率を上回っている。2023年、中国の総電力消費量は6.7%増加し、一次エネルギー消費量は5.7%増加した。GDP成長率は5.2%だった。この現象が起きたのは過去40年余りで一度だけであり、それは重工業とインフラが急速に発展していた2002~2005年だった。
第二に、エネルギー消費に占めるクリーンエネルギーの割合が高まっている。2013年、中国の一次エネルギー消費に占める石炭の割合は67%だったが、2023年には55.3%に低下した。同じ期間に、石油、水力、原子力の割合には大きな変化がなかった。エネルギー構成のグリーン化は、主に風力・太陽光発電と天然ガスの利用拡大によって進んだ。
第三に、電力供給は、電力需要の増加と電力業界の低炭素化移行という二重の圧力にさらされている。中国経済が成長鈍化期に入るなか、エネルギー消費を抑制する政策の実施は難しくなっている。同時に、クリーンエネルギーの生産増加が電力需要の拡大に追いつかず、その不足分は化石燃料で補わざるを得ない。
第四に、太陽光・風力発電の急速な発展により電力網の変動性が高まり、電力供給への圧力が増している。そのため、石炭火力発電は電力供給の安定化を担わなければならない。中国では風力・太陽光発電の設備容量が目覚ましく増加したものの、2023年も化石燃料が国内のエネルギー供給に最も大きく貢献した。
第五に、AIによる電力需要が増加している。AI技術に対する電力需要は今後5年以内に指数関数的に増加すると推定され、電力業界の低炭素化移行に影響を及ぼす。中国を例に挙げると、電力供給全体の約20%を占める太陽光・風力発電は、2030年までに増加する電力需要を満たせなくなる。AIの急速な発展は、中国の「二酸化炭素排出量のピークアウトとカーボンニュートラル」という目標の実現に影響する。したがって、AIによる電力需要を考慮し、化石燃料の段階的廃止の時期を再評価する必要がある。
中国電力業界の新たな動向への対応
では、電力業界の低炭素化移行をめぐる新たな動向に、中国はどう対応すべきだろうか。
第一に、近年のエネルギー需要の急増がどのような性質のものかを正しく理解することが重要だ。意思決定者は、それが短期的な現象なのか長期的な傾向なのかを判断し、急増の根本的な原因を特定する必要がある。それを踏まえて、電力業界の発展計画とカーボンニュートラル行動計画を策定できる。
第二に、中国は再生可能エネルギー部門により多くの資金を呼び込む支援策を打ち出し、化石燃料の抑制を続けることで、再生可能エネルギーの開発を加速させるべきだ。同時に、クリーンエネルギーへの投資を拡大して技術革新を促し、生産コストを引き下げてグリーン電力の市場競争力を高める必要がある。
第三に、グリーン電力を受け入れるため、多面的な政策を講じるべきだ。一方では、新エネルギー由来の電力を受け入れることが電力網システムの課題となっている。そのため、蓄電技術の開発と電力網システムの高度化は、グリーン電力の受け入れと安定した電力供給の確保に欠かせない。利益率の拡大、標準体系の構築、イノベーションの奨励を通じて、蓄電産業の質の高い発展を実現できる。
また、電力網システムの高度化とスマート化を推進し、電源と電力網の間で負荷と蓄電を柔軟に連携させ、グリーン電力を受け入れる電力網システムの能力を高めるべきだ。他方で、電力業界の制度改革を深め、価格が市場の役割を果たすことで、グリーン電力の価値が十分に反映されるようにする必要がある。
クリーンエネルギーへの移行に向けて、世界経済フォーラムはどのような取り組みを行っているのか。
第四に、中国のエネルギー資源の賦存状況と安定した電力供給を確保する必要性を踏まえると、短期的に最も重要なエネルギー源である石炭の役割は徐々に変化していく。「二酸化炭素排出量のピークアウトとカーボンニュートラル」という目標を達成するには、石炭のクリーンで効率的な利用を進め、炭素回収・利用・貯留(CCUS)産業を発展させ、「石炭火力+CCUS」モデルを模索することが不可欠だ。中国は世界最大かつ最先端の石炭火力発電産業を有する。このモデルでは、比較的経済性の高い新しい石炭火力発電ユニットを引き続き活用できる。安定した電力供給を確保し、グリーン電力を電力網に受け入れながら、カーボンフットプリントを削減できる。現在、CCUSのコストは高く、「石炭火力+CCUS」モデルで規模の経済を実現するまでには、まだ長い道のりがある。そのため、CCUS産業の発展を加速させる必要がある。
第五に、AIは新たな技術・産業革命の大きな原動力であり、新たな質の生産力の重要な一部でもある。AIのエネルギー需要に対する低炭素ソリューションを見いだすことは、新たな質の生産力を育て、「二酸化炭素排出量のピークアウトとカーボンニュートラル」という目標を達成するうえで極めて重要だ。中国は新エネルギーへの移行を加速し、データセンターのグリーン化を進め、グリーン電力とAI産業の一体的な発展を模索すべきだ。
産業、商業、家庭の各分野で電力のスマート利用を促し、省エネルギーを進めるとともに、AIによる電力網への負荷を軽減すべきだ。技術革新への投資を拡大し、デジタルインフラのエネルギー効率を高め、アルゴリズムの最適化を促して、AIのカーボンフットプリントを削減する必要がある。また、AIのエネルギー需要の拡大を相殺するため、需要側の効率を高めるべきである。
