インドは世界第2位のセメント市場であり、急速に成長しています。
他の多くの新興市場と同様、インドではセメントの多くが小規模な住宅建設に使われています。
排出量を削減するには、インドのような新興市場は小規模な建設業者と大規模なインフラ事業の両方に注力する必要があります。
インドは世界第2位のセメント市場であり、2020~2030年の間に2倍を超える規模になると予測されています。同時に、気候変動への対応が喫緊の課題となっています。インドのセメント利用は、経済の脱炭素化を実現できるかどうかに明確な影響を及ぼします。セメントのカーボンフットプリントを削減するには、多くの取り組みが必要です。製造工程の脱炭素化、炭素回収技術や代替燃料の利用、設計・建設の効率化などが挙げられます。後者は大いに必要とされていますが、見過ごされがちです。その実現には、意思決定者への教育と研修、政府による支援的な規範や政策、そしてメーカーの行動が求められます。
設計・建設の効率化を実現するには、セメントがどのように使われているかを理解する必要があります。しかし歴史的に、インドのセメント利用に関する入手可能なデータは限られていました。インドのセメントの75~80%は袋詰めセメントとして販売されており、通常は50kg入りの袋です。袋詰めセメントを販売する生産者、小売業者、流通業者は、製品の行き先や用途、混合方法をほとんど把握していません。
新興市場におけるセメント利用と、脱炭素化への影響をより深く理解するため、Mission Possible PartnershipのConcrete Action for Climateイニシアチブは、世界経済フォーラムとGlobal Cement and Concrete Association(GCCA)が共同で主導し、GCCAのインドチームの支援を受けて、ボストン コンサルティング グループと協力し、インド、ブラジル、インドネシア、エジプトを対象とする調査を実施しました。
小規模なセメント利用者への啓発
私たちの調査では、住宅の大半が袋詰めセメントを使って建てられていることが分かりました。インドでは袋詰めセメントの約40%が手作業で混合され、残りの大部分は機械式ミキサーで混合されています。セメントを水や砂、その他の添加材と混ぜてコンクリートを作る際、特に手作業の場合、必要以上のセメントを使うことがよくあります。その方が構造物の強度を確保できると建設業者が安心でき、セメントは比較的安価だからです。しかし、こうした過剰使用は、セメントとコンクリートの排出量削減にあたって問題となります。
インドやその他の新興市場でセメント由来の排出量を削減するには、こうした建設に携わる人々にセメントの使い方を啓発する必要があります。セメントの過剰使用を避ける重要性を理解し、住宅構造の各部位に適したセメントの配合について正確な情報を得られるようにする必要があります。また、セメント使用量を抑える設計手法を採用するよう促すことも必要です。しかし、この重要な取り組みをどの組織が担い、主要な関係者にどう働きかけるのかは明らかではありません。一つの解決策として、セメント袋にエンボディドカーボンの表示や情報を掲載することが考えられます。

バルクセメントへの移行に取り組む
現在、インドのセメント消費量の20~25%をバルクセメントが占めています。20年前にはほとんどありませんでした。経済成長に伴い、この割合は今後も上昇すると予想され、セメントとコンクリートのネットゼロを目指す同国の道筋に課題と機会の両方をもたらします。大規模事業では、構造上の要件が厳しく、低強度のコンクリートより炭素集約度の高い高強度コンクリートが必要になることがよくあります。また、こうした事業には保守的な仕様が適用され、低炭素セメント製品の使用が認められない場合もあります。バルクで生産されたセメントは、セメントの炭素集約度を下げる補助セメント系材料(SCM)と混合しやすいという利点があります。
バルクセメントの脱炭素化には、国、地域、地方の各レベルにおける政府の主導が不可欠です。産業界と政府は、混合セメントやSCMの使用を禁じる規範を改定すべきです。また政府は、低炭素コンクリートの利用を促すグリーン公共調達政策を通じて、産業界の移行を支援できます。
クリーンエネルギーへの移行に向けて、世界経済フォーラムはどのような取り組みを行っていますか?
包括的な計画
インドは広大で地理的に分散した市場であり、今後数十年にわたって袋詰めセメントへの依存が大きい地域もあると考えられます。生コンクリートを長距離輸送するのは通常現実的ではないため、全国各地にさらに多くのプラントが建設されるまでは、生コンクリートを入手できない地域が残るでしょう。農村部では大規模事業への投資が少なく、その結果、生コンクリートプラントの建設需要も小さいと考えられます。
セメント排出量の問題は喫緊の課題であり、セメント利用の変化が遅いこうした地域を見過ごすことはできません。脱炭素化のロードマップは、袋詰めセメントの現在の利用状況と、より工業化されたセメント製品への移行の両方に対応できるよう設計する必要があります。セメントとコンクリートのネットゼロを実現するため、政府と産業界は、バルクセメントや大規模事業の脱炭素化をどう支援するかに加え、国民の多くが暮らす住宅の建設を担う左官職人、請負業者、住宅所有者の行動や意思決定にどう働きかけるかも検討しなければなりません。
この記事はもともと、2022年11月号のInternational Cement Reviewに掲載され、この形式に合わせて短縮されました。


