「マルチソルブ」施策で気候変動対策をより効果的にするには

Even though consumers are increasingly engaged with climate action, they can be prone to fatigue that leads to a return to inaction and old habits
Climate solutions that solve several problems at once are easier to sell and more likely to motivate change.Image: Pexels/ Robin Erino
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  • パリ協定以降、地球温暖化を1.5ºCに抑える取り組みは勢いを増しています。

  • 各国政府は、ネットゼロ目標の導入や再生可能エネルギーへの優遇措置、よりクリーンな交通・暖房の推進を進めています。

  • 企業や投資家はネットゼロの取り組みを強化し、若い世代は抗議活動などを通じて意識を高めています。

  • 次世代のためにより健全な地球を確かなものにするには、私たちは包括的な解決策に重点を移し、人々の行動に深く持続的な変化をもたらす必要があります。

排出量削減と暮らしの脱炭素化に向けた動きは、パリ協定が地球温暖化を1.5ºC以下に抑える必要性に警鐘を鳴らして以来、大きく加速しています。

世界各国の政府は行動を開始し、ネットゼロや脱炭素化の目標を導入するとともに、再生可能エネルギーや、よりクリーンな交通、冷暖房への優遇措置を設けています。

企業や投資家もネットゼロの取り組みを受け入れており、消費者は自分が購入する企業に、持続可能性の問題を考慮するよう期待しています。

若い世代が主導する草の根の抗議運動は、緊急の行動が必要だという認識が強まるにつれ、ますます激しさを増しています。抗議活動は議論を呼ぶ一方で、世界中の人々の意識を高めてきました。

私たちが直面する課題を前に、これだけで十分なのでしょうか。そして、必要とされる持続的で変革的な変化を実現するには、気候変動対策について考え方を変える必要があるのでしょうか。

「最大の思い込みの一つは、気候の緊急事態は一つの問題だということです。そうではなく、一つの時代なのです」と、米国を拠点とする気候未来学者で、著書に『Carbon Zero: Imagining cities that can save the planet』と『The Snap Forward』があり、『Worldchanging, A User’s Guide for the 21st Century』の編集者でもあるアレックス・ステフェンは述べています。

「気候変動はすでに社会のあらゆる側面を再定義しています。私たちはまだその始まりにいるにすぎません。これほど驚かされるという事実は、何が起きているのかを私たちがまだほとんど理解していないことの表れです。」

気候変動という課題を理解する

正しい方向への前進が見られる一方で、ステフェンは、気候変動そのものだけでなく、それに取り組むうえでの課題も含め、問題の規模を私たちはまだ十分に把握していないと主張します。把握できるまでは、解決策は氷山の一角に対処するにとどまります。

ステフェンは、新たな視点で問題を見ることの重要性を訴えています。たとえば「脆弱性バブル」によって増大するリスクを認識すべきだといいます。これは、これまで堅固で揺るぎないように見えていたシステムや資産が、気候変動によって著しく劣化する現象です。

未来研究所(IFTF)も、重点を置き直す必要性を指摘し、税制や計画策定の枠組みから、化石燃料に依存する既存の資産、工程、システムを手放すコストまで、さまざまな障壁が進展を遅らせていると述べています。

問題の全体像を理解することが不可欠であり、最大の効果をもたらす解決策を見いだすには、包括的で多面的なアプローチが必要です。

気候変動の課題に向けた新たなアプローチ

こうした複雑な相互作用を踏まえると、これからの気候変動対策はどうあるべきでしょうか。答えは、複数の課題に同時に対処する「マルチソルブ」施策を採用することにあります。そうすれば、長期的な気候対策の取り組みが、社会的または経済的な利益をすぐにもたらします。こうした施策はさまざまなレベルで実施でき、一般市民や政治家に気候変動対策を「売り込む」ことを容易にします。人は変化への意欲を高めるために、目に見える早期の成果を求める傾向があるからです。

たとえば、次のようなものがあります。

  • 電気自動車は炭素排出量を削減するだけでなく、大気の質を改善し、それによって環境や地域住民の健康も向上させます。一方、持続可能な方法で生産された再生可能燃料は、既存の内燃機関車で直ちに排出量を削減できる有効な代替策であり、さらに、交通に起因する地域の排出量を減らし、地域の大気質を改善します。

  • エネルギー効率化策は排出量を削減するだけでなく、光熱費を継続的に抑えます。また、効率化策は多くの場合、労働集約的で地域レベルで実施されるため、海外に移転できない雇用を生み出します。

  • 被覆作物の栽培、輪作、不耕起栽培など、炭素排出量を削減または炭素を貯留する農法は、土壌の健全性を高め、水分の損失を抑え、収穫量を増やすことにもつながります。一方、昆虫養殖から垂直農業、培養肉まで、新たな食料技術は、開発途上地域に大きな経済的利益をもたらす可能性があります。

  • 農地に太陽光パネルを設置する営農型太陽光発電は、炭素を排出しないエネルギーを生み出すだけでなく、農家に新たな収入源をもたらします。また、作物や放牧する家畜に日陰を提供し、収穫量を増やすことさえあります。

人々が行動を起こすよう促すことが鍵です。消費者の気候変動対策への関心は高まっていますが、疲れから再び何もしない状態や以前の習慣に戻りやすい面もあります。

「平和を、石けんや清涼飲料水のように『売り込む』必要があるというジョン・レノンの言葉を思い出します」と、ミンテル・コンサルティングのシニア・トレンド・コンサルタント、リチャード・コープは述べています。

「低所得者が月額100ユーロで電気自動車をリースできるフランスの制度は、私たちに必要な取り組みの好例です。」

もう一つの例は、断熱やヒートポンプなどのエネルギー効率化策にかかる費用の110%を支給するイタリアの制度です。

「気候変動対策の相乗的なメリットに注目する必要があります。節約できるお金や健康上のメリット、あるいは人々の自尊心に訴えることでも、人々の行動を変えられます。」

気候変動への挑戦:「楽しさを見つける」

草の根の活動から政府、大企業から新興企業まで、誰もが気候変動との闘いで、それぞれに欠かせない役割を担っています。消費者は自分の選択について、ますます知識を深め、意識的になっています。しかし、真の変化には、まず環境に配慮した選択肢を取り入れる仕組みが必要です。ある分野での行動と変化への推進力が、別の分野でも同じ動きを飛躍的に促し、求めるという好循環が生まれます。

この枠組みの中で、市民や消費者は日々の選択を通じて大きな力を持っています。2050年までに必要な排出削減量の約60%は、人々が何をするか、何を買うかに関係していると、コープは述べています。

これは、持続可能性コンサルティング会社Futerraのアプローチにも通じます。同社のCEO、ルーシー・シェイは、大幅な排出削減を進めるために、企業などが創造性を発揮するよう呼びかけています。人々を行動に駆り立てる力を企業などが持っているからです。

シェイは、「今日、行動変容を理解することは、歴史上どの時点よりも重要です。私たちの暮らし方、働き方、食べ方、移動の仕方が、地球の健全性に影響を与えるからです」と主張します。

気候変動に関する政府間パネルによると、行動変容には、2050年までに世界の排出量を40~70%削減する可能性があります。

「人間が地球を物質的に変えていると知るのは恐ろしいことですが、同時に力づけられることでもあります。私たちの行動が地球を傷つけるなら、その行動で地球を助けることもできます」とシェイは述べています。

人々にそうしてもらう方法の一つは、「楽しさを見つけること」だと彼女はいいます。「人は雑用よりも、喜びや余暇のためにいつも多くの時間を割きます。あなたのブランドは、持続可能な行動を楽しいものにできますか。華やかさを添えたり、ユーモアを取り入れたり、少しばかげたことをしてみたりできますか」と問いかけます。

「最も避けるべきなのは、『暗い話から始める』ことです」とコープは述べます。「否定的なデータは人々を遠ざけます。持続可能性もほかのものと同じで、売り込む必要があります。」

しかし、企業は正しいことをしているという評判に頼ることはできません。主張の裏付けを示す必要があると、彼は付け加えます。「人々は個々の製品レベルでの影響を理解したいのです。」

気候変動関連の法律が増えています。過去20年間に90%超が成立し、その半数以上は過去10年間に成立しました。こうした法律は、市場における必要な移行に確実性、明確さ、安定性をもたらしています。

市場だけでは移行を実現できないため、政策によって市場をその方向へ導く必要があるという認識が広がっていると、経済学者のマリアナ・マッツカートは述べています。「そのためには、イノベーションに取り組み、リスクを取り、民間部門とともに投資する起業家精神に富んだ国家が必要です」と彼女は言います。

気候変動対策のビジネス

さらに、企業は気候変動対策がビジネス上も理にかなっているため、これに取り組んでいます。「賢明な企業は、長期的に資金と資源を節約するため、持続可能性を取り入れています」とコープは指摘します。

持続可能性は、企業の健全性と長期的な存続を確かなものにする賢明な選択です。つまり、それは単にビジネスとして理にかなっています。利益だけでなく、社会的・環境的な便益という形で目的を追求する企業も増えています。

目的と利益が共存する例として、今後10年で、よりよく知られたカーボン・オフセットに取って代わるとされる、炭素の「インセッティング」があります。「インセッティング」は、自社のサプライチェーンへの投資に焦点を移し、サプライヤーの炭素集約度を下げ、回復力を高める取り組みです。

さらに、サーキュラーエコノミーの解決策が、次の大きな変革になると見込まれています。企業は、線形経済における「取って、作って、捨てる」慣行から、資材の使用を減らし、製品や商品を再利用し、再利用できないものをリサイクルすることを重視するアプローチへ移行しています。

Gerrard StreetのヘッドホンやFairphoneなどの製品は、製品のモジュール化を先導しています。一方、Nesteなどの企業は、廃棄物や残留物、革新的な原材料を精製し、再生可能燃料やプラスチックなどの素材に使う持続可能な原料を生産しています。

気候変動対策を成功させる鍵

気候変動への取り組みは大きく前進してきましたが、道のりがまだ長いことは間違いありません。直面する課題を狭い視野で、また個別の問題として捉えてしまわないよう注意し、少し立ち止まって全体像を見ることが大切です。

成功するには、複数の問題に同時に対処する解決策を採用し、すべての人にとって公正な移行を確かなものにし、サーキュラーエコノミーへの転換を受け入れる必要があります。その一方で、メッセージを人類全体にとって常に身近で重要なものにし続けなければなりません。

ヴァッテンフォール:気候変動対策をビジネスのDNAに組み込む
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