COP28はMENA地域全体の気候変動対策を促す契機となり、各国政府は野心的な気候目標を掲げ、断固とした行動を進めています。
しかし、大企業が自社の事業を通じて脱炭素化を推進する一方で、多くの小規模サプライヤーや中小企業は遅れをとっています。
MENAのグリーン目標を成果につなげるには、官民双方がバリューチェーン全体を対象とする強固な気候移行計画を策定する必要があります。
COP28は昨年ドバイで開催され、中東・北アフリカの気候変動対策を促す大きな契機となりました。公共部門や大手民間企業が行動を開始し、各国政府は野心的な気候目標を設定して断固とした措置を講じています。
現在、中東・北アフリカ(MENA)地域の排出量の約70%がネットゼロ公約の対象となっており、2年前の60%から増加しています。民間部門では、大手企業が自社の事業における脱炭素化を推進しています。MENA地域の大企業の約46%が排出量管理の取り組みを実施し、最大手企業の41%が自社のスコープ1およびスコープ2の排出量を開示しています。
しかし、小規模サプライヤーや中小企業(SME)は遅れをとっています。地域の気候目標を成果につなげるには、官民双方がバリューチェーン全体を対象とする強固な気候移行計画を策定する必要があります。
クリーンエネルギーへの移行に向け、世界経済フォーラムはどのような取り組みを行っているのでしょうか。
目標を行動に移す
各国のネットゼロ公約を達成するには、組織は自社の枠を超えて排出量を削減する必要があります。世界の排出量の大半は、スコープ3排出量に由来し、バリューチェーン全体で発生します。
中小企業やサプライヤーの排出量に取り組むことは、脱炭素化に不可欠であると同時に、大きな課題でもあります。こうした組織が脱炭素化戦略の優先順位付け、計画、資金確保、効果的な実行を行うには、多くの場合、相当な支援が必要です。
中小企業やサプライヤーは経済において重要な役割を担っているため、脱炭素化の取り組みを支援することが不可欠です。中小企業とサプライヤーは、地域のGDPの平均20%~30%を占めています。
地域の企業の90%超は中小企業であり、就業人口の35%~55%を雇用しています。エジプトでは、中小企業が就業人口の75%超を雇用しています。
MENAにおけるバリューチェーン脱炭素化の障壁
中小企業やサプライヤーは、脱炭素化に際して大きな障壁に直面しています。中小企業やステークホルダーの代表者との対話から、最大の障壁は次のとおりだと分かりました。
脱炭素化に関する認識の不足と、リーダー層の関心の不足
脱炭素化による経済的メリットに関する知識不足、および/または脱炭素化の実践に必要な技術的専門知識の不足
脱炭素化の価値が低く見積もられていること。ステークホルダーや規制当局からの圧力が限られているため、状況はさらに悪化しています。
脱炭素化の取り組みに必要な資金調達を妨げる財政上の制約
中小企業がこうした脱炭素化の障壁を克服できるよう、地域全体のステークホルダーが協力する必要があります。

中小企業の脱炭素化を支援するベストプラクティス
こうした課題がある一方で、地域では有望な進展が見られます。持続可能なMENAのためのリーダーズのメンバーの一部は、地域の気候レジリエンスを備えた未来の形成に取り組む世界経済フォーラムの官民リーダーのコミュニティに属しています。彼らは、他の企業が持続可能なサプライチェーンに向けて行動する際の参考となるベストプラクティスを示し、先導しています。
例えば、アラムコは中小企業の成長を加速するタリード・プログラムを立ち上げ、脱炭素化を含む複数の分野で支援を行っています。アラムコは、中小企業に能力構築、戦略策定、資金提供を行っています。また、合計資本が8億ドルを超える主要な国営基金を通じて、より幅広い金融ソリューションも提供しています。
アラムコは、リンデおよびSLBとの合弁事業の一環として、二酸化炭素回収・貯留ハブもサウジアラビア王国(KSA)のジュベイルに建設しています。このハブは、中小企業やその他の産業排出事業者が共同で利用できるCO2輸送・貯留インフラを提供します。これにより、中小企業は規模の経済を生かして技術面や財務面の制約を克服し、ネットゼロ目標を達成できます。
小売部門では、マジド・アル・フッタイムが持続可能な調達方針に基づいて、地元から資材を調達しています。この方針は、持続可能な商品を提供するサプライヤーを優遇し、サプライチェーンを短縮します。その結果、同社は持続可能な製品を好む消費者の新たな購買行動に適応しやすくなります。マジド・アル・フッタイムは、CDPサプライチェーン・プログラムにも参加し、サプライヤーの環境データを収集・分析して、排出削減に向けた支援を可能にしています。
さらに、サウジアラビアで開催された世界経済フォーラム特別会合に合わせて、サウジアラビアはサステナビリティ・チャンピオン・プログラムを開始し、能力構築とベストプラクティスの共有を通じて大手企業間の協力を促進し、持続可能性の原則や報告を迅速に導入できるよう支援しています。誓約の一環として、サステナビリティ・チャンピオンは、他のサウジアラビア企業3社の持続可能性の実践を変革することを約束し、地域経済全体に波及効果を生み出します。
政府による介入が不可欠
主要なステークホルダーである政府は、移行を促進し、その資金を支援できます。 レジリエンスと持続可能性を備えたバリューチェーンへの移行です。地域の政策は、EUなど、より制度が成熟した地域に追いつきつつあります。例えば、
サウジアラビアは、中小企業開発を管轄する現地機関であるモンシャアトを通じて、中小企業の脱炭素化を直接支援しています。また同国は、サウジ・グリーン・イニシアチブを通じて、より広範な持続可能性に関する80件超の取り組みに約1,800億ドルを割り当てました。
アラブ首長国連邦では、アブダビ・グローバル・マーケット(ADGM)が持続可能な投資ファンドに関する規制枠組みを策定しました。
エジプトは、エジプト証券取引所に上場する企業に対し、環境・社会・ガバナンス(ESG)情報開示報告書の提出を義務付けており、これが企業のサステナビリティへの取り組みの出発点となっています。今後10年間で、エジプトはスエズ運河経済特区に400億ドル規模のグリーン水素プロジェクトを展開し、同国のエネルギー供給の脱炭素化を目指します。
さらに、COP28議長国、SME Climate Hub、We Mean Business Coalitionは、共同キャンペーンを開始し、MENAの中小企業によるネットゼロ戦略の実施を支援しています。
持続可能なバリューチェーンには協力が必要
レジリエンスと持続可能性を備えたサプライチェーンには、技術革新、インフラ、能力構築が必要です。
企業や政府を含め、バリューチェーン全体のすべてのステークホルダーが、資金調達、イノベーション、リスクテイクにおける現在のギャップを埋めるため、変革的な取り組みに投資し、コミットする必要があります。このプロセスでは、地域のサプライチェーンと世界のノウハウを結び付けることが不可欠です。
脱炭素化にはグローバルな視点が必要です。一方、MENA地域には固有の課題と機会があり、COP27とCOP28の勢いを生かして、イノベーションと気候レジリエンスを高めることができます。民間部門と公共部門の連携は、MENA地域が気候レジリエンスを備えた成長を実現し、2050年までのネットゼロ公約を達成するうえで役立ちます。




