IPCC報告書が示す、抜本的な気候変動対策の必要性

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  • 2022年2月28日、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は最新の報告書を発表し、気候変動の原因、影響、考えられる解決策を明らかにした。

  • 報告書の調査結果によると、気候の崩壊は予想より速く進んでおり、対策を講じるための猶予は急速に失われつつある。

  • この報告書は、各国政府と民間部門の関係者に対し、気候変動に断固として対処するよう求めている。

2021年11月、スコットランドのグラスゴーで開催されたCOP26は、グラスゴー気候協定の採択をもって閉幕した。これは、2050年までに世界全体で温室効果ガス排出量を実質ゼロにする目標を達成するという約束である。協定の中心となるのは、地球温暖化を1.5℃に抑える目標を実現可能な範囲に保つことだ。グラスゴーでは一定の進展があったものの、公約が履行されたとしても、世界の気温は2.4℃上昇するとの推計がある。

今週、IPCCは、気候の崩壊が予想より速く進んでおり、現在の水準が続けば、今後数十年で地球上の多くの地域が人の住めない場所になると報告した。報告書を受け、国連事務総長のアントニオ・グテーレス氏はこう述べた。「これまで多くの科学報告書を読んできましたが、これほどのものはありません。これは人類にとっての危険信号です。気候災害を回避するため、今すぐ力を合わせなければなりません。」

気候に対するこの危険信号は、ウクライナで危機と人道的悲劇が進行するさなかに発せられた。この危機によって、欧州とロシア産化石エネルギーとの複雑な関係や依存が改めて浮き彫りになった。危機によるエネルギー不安とエネルギー自立への懸念から、一部の欧州諸国がグリーンエネルギーへの移行を遅らせる行動を取るおそれがある。即時の対応が必要なのは明らかだが、エネルギーの安定した未来を築くには、気候危機にも対処しなければならない。

こうした警告や、安全保障、エネルギー依存、気候に関わる課題は、今に始まったことではない。世界の指導者は、必要な変革を実現しなければならない。世界経済フォーラムの中心的な使命は、公共部門と民間部門が気候変動対策に取り組み、解決策の革新を進めるのを支援し、地球温暖化を抑えることだ。ファースト・ムーバーズ・コアリションや気候リーダー同盟などの取り組みは、政府と連携してネットゼロへの競争を加速させ、その実現に必要な技術を商業規模に拡大するための、断固とした行動である。

IPCCの最新気候変動報告書は、緊急の行動の必要性を強調している。
IPCCの最新気候変動報告書は、緊急の行動の必要性を強調している。
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IPCC報告書とは何か

195の政府を代表するIPCCは、気候変動のリスクと影響について政策決定者に科学的評価を提供する、国連の政府間機関である。同パネルの報告書は、数百人の気候科学者や専門家による査読済みの評価だ。これらの報告書は包括的で科学に基づき、人間の活動が気候変動の原因であることを明確に示している。

これは、2部構成の報告書の第2部である。第1部では、人為起源の温室効果ガス(GHG)が地球規模の広範な損害を引き起こしていることに焦点を当てた。一方、この報告書は気候変動の原因、影響、考えられる解決策を詳しく検討している。気候の安全圏にとどまるための行動の猶予が急速に縮まっていると強調している。

安全圏を外れると何が起こるのか

報告書によると、気候災害を回避するには、2030年までに世界全体の排出量を45%削減する必要がある。現在の水準では、この期間に世界の排出量は約14%増加する。そうなれば、氷床の融解、頻度と強度を増す異常気象、生物多様性と生態系の甚大な喪失など、不可逆的な影響への適応を余儀なくされる。報告書は、現在、約33億人が気候変動に対して極めて脆弱な環境で暮らしており、動植物の大量死がすでに進行していると指摘している。

小島嶼国や沿岸地域は最も深刻な影響を受けている地域の一つで、嵐や海面上昇がすでに甚大な被害をもたらしている。脆弱な地域社会はとりわけ大きな危険にさらされている。2010年から2020年にかけて、干ばつ、洪水、嵐によって、極めて脆弱な国々では15倍もの人々が命を落とした。その国々はアフリカ、南アジア、南米にあり、より豊かな国々と比べて犠牲者数が15倍に上った。

懸念されるのは、重要な生態系が二酸化炭素を吸収する能力を失いつつあり、泥炭地や森林が炭素吸収源から炭素排出源へと変わっていることだ。永久凍土が融解すれば、さらに温室効果ガスが大気中に放出され、温暖化が加速する。

米国沿岸部では、2050年までに100年分の海面上昇が見込まれると予測されている。
米国沿岸部では、2050年までに100年分の海面上昇が見込まれると予測されている。
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対策を怠った場合の経済的・人的コストは急増する

報告書は、すでに脆弱な地球と社会経済システムが、気候変動を抑えるための十分な対策を講じなければ、さらに不安定化すると伝えている。スイス再保険研究所によると、ネットゼロ目標が達成されなければ、気候変動によって2050年までに世界全体の経済価値の10%が失われる可能性がある。近年、経済成長の支えとなってきたアジアは、2050年までにGDPの26.5%を失う可能性があり、アフリカと中東では最大27.6%の損失が見込まれる。

驚くべき比較として、新型コロナウイルス感染症の流行がピークに達した際、世界経済は5%縮小した一方、2008年の金融危機では世界経済の縮小率は1%だったと指摘されている。気候危機と経済危機は、食料不安、貧困、病気、健康状態の悪化も深刻化させる。

多くの国ですでに気候変動による移住が日常化しており、西アフリカなどでは、気候要因によって2050年までに最大3,200万人が移住を余儀なくされる可能性がある。一方、干ばつは多くの自給農業の地域社会にとって常態化しつつあり、気候変動に関連した食料不安が飢餓を招いている。

こうした大惨事を招いている経済モデルや政策を変えるため、価値観に基づく変革を私たちが一丸となって実行しなければ、同様の事態は今後も起こり、その規模はさらに拡大するだろう。

適応策の加速

途上国、とりわけグローバルサウスの国々は、気候変動によって最も大きな打撃を受けている。これにより国家間の経済格差が拡大し、人々の間の不平等も深まっている。

IPCC加盟国のうち、気候戦略に適応策を盛り込んでいるのは半数にすぎない。具体策には、防潮堤、干ばつに強い作物、暴風雨の早期警報システムなどがある。報告書は、こうした措置だけでは将来の脅威への備えとして不十分な可能性があると述べている。計画、建設、消費、そしてシステムにおける全面的な変革が必要だ。グテーレス氏も、「気候変動の影響が深刻化するなか、投資の拡大は生存に不可欠です。気候資金全体の50%を適応策に充てるよう求めています」と述べている。

報告書は、すでにいくつかの転換点を超えてしまったことを認めている。2022年後半にエジプトのシャルム・エル・シェイクで開催予定のCOP27では、適応策への資金拡大が確実に大きく取り上げられるだろう。このIPCC報告書は、それがいかに重要かを示している。

企業も、リスクと機会の両面から検討した適応計画を策定しなければならない。リスク管理の観点では、保険会社はすでに過去最高額の保険金を支払っている。米国の保険会社が支払った自然災害による損害額は、2021年上半期に420億ドルに達した。保険会社がリスク評価を強化するなか、あらゆる業界の企業は、新たに生じるリスクに対応できるよう、気候戦略を適宜見直す必要がある。

機会という面では、企業はグローバル・バリューチェーンを通じ、脆弱な市場のサプライヤーと協力することで、公正な気候移行を支える重要な役割を果たせる。気候変動がもたらす確実な影響への適応を支援すると同時に、将来に備え、事業運営のレジリエンスを高めることができる。

これまで多くの報告書を見てきましたが、新しいIPCC気候報告書のようなものはありません。これは人類の苦しみを描いた地図です。怒りを気候変動対策に変えるときです

アントニオ・グテーレス、国連事務総長

ネットゼロへの競争は大きな機会

人類には、特に圧倒的に不利な状況に直面したときに協力する、他に類を見ない力がある。新型コロナウイルス感染症のワクチン開発の速さがその証拠だ。気候変動はさらに手ごわい敵となり、ネットゼロの実現には揺るぎないリーダーシップと効果的な技術が必要になる。

世界経済フォーラムは、CEO気候リーダー同盟を通じて、すでに資産総額7.8兆ドルの120社超とともにネットゼロを目指す公約に参加している。IPCC報告書は、ネットゼロ目標を達成するには今すぐ行動を起こさなければならないと強調している。COP27を前に、クリーンテクノロジーへの投資とイノベーションを推進する中心的な方針を確立する必要がある。とりわけ大規模排出事業者は、気候変動対策の公約を革新的な行動に移すべきだ。排出削減とグリーンイノベーションの推進に向けた官民連携は、気候変動との闘いを大きく前進させる。米国政府は、民間部門の関係者とともに、数十億ドルをクリーン技術の開発と導入に充てることを約束している。

気候レジリエンスを備えた開発の道筋へ

IPCCの警告は明快だ。現在の汚染をもたらす経済モデルを続ければ、地球と人類の状況ははるかに悪化する。一方で、私たちが断固たる行動を取り、公共部門と民間部門がリング上でこの手ごわい相手に共闘すれば、危機を機会へと変えることができる。

気候レジリエンスを備えた開発とは、持続可能で包摂的な開発を重視しながら、適応策と緩和策を並行して進めることだ。政府、主要企業、金融界、先住民の知識を受け継ぐ人々、地域社会のリーダーなど、主要な関係者が、気候変動を抑え込むだけでなく、安全で安定し、公正な世界を築く方法について共通のビジョンを持つべきである。

世界経済フォーラムは、気候変動対策にも同じ統合的な視点を取り入れている。解決策は、地球上の私たちの暮らしを守る統合的な枠組みの一環として、自然、土地利用、海洋、気候を考慮しなければならない。

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