気候リスクは、成長の機会を開き得る目先の経営課題ではなく、遠い将来の課題と見なされることがよくあります。
CEOが注意を向けることで、企業は事業運営に適応力とレジリエンスを組み込み、混乱を抑えながら長期的な成功を推進できます。
CEO気候リーダー連盟がBCGと提携して発表した新たな報告書は、気候リスクへの対応に向けた戦略的指針をCEOに提供するものです。
気候リスクの重要性が高まっているにもかかわらず、多くのCEOは依然としてこれらを二次的な課題と見なし、目先の経営課題として検討するのではなく、その管理をサステナビリティ部門やコンプライアンス部門に委ねることが少なくありません。
気候リスクはまた、明日の課題、あるいは遠い将来の課題とみなされ、目先の重要な経営課題としては扱われないことがよくあります。しかし、これらのリスクに戦略的に対処することで、成長とレジリエンスに向けた大きな機会を開くことができます。
物理的リスクと移行リスクの規模と複雑さを理解することは、適切なリスク管理策を採用するうえで不可欠です。また、気候の影響が経済と社会をどのように変えるかを評価しないことは、移行および適応の市場機会の拡大を逃すことにもつながります。
CEOの十分な注意と全社的な準備があれば、企業は増大する混乱の影響を軽減し、事業運営に適応力とレジリエンスを組み込むことで長期的な成功を推進するとともに、2030年までに14兆ドル規模となるグリーン経済への移行における成長を実現できます。
CEO気候リーダー連盟は、科学に基づく目標を設定し、排出量を開示し、世界のバリューチェーン全体で脱炭素化とパートナーシップを促進することにより、野心的な気候目標の引き上げとネットゼロへの移行の加速に取り組む、CEO主導のコミュニティです。
新たな「企業が気候変動対応を怠ることのコスト:気候リスクに対処するCEOのためのガイド」報告書は、CEO気候リーダー連盟がBCGと提携して発表したもので、企業の気候リスクの大きさを明らかにし、CEOにこれらのリスクへの対応を促すとともに、戦略的指針を提供するものです。
本報告書の主要な3つのポイントは以下のとおりです。
1. CEOレベルでのより一層の注意が必要
気候リスク(物理的リスクと移行リスクの両方)は多様で重大であり、そのスピードと規模を増しながらエスカレートしています。
物理的リスク:極端な気象現象は、インフラへの被害を増大させ、サプライチェーンを混乱させ、生産性を低下させています。特に労働集約型産業では熱ストレスも懸念が高まっており、気温の上昇は労働者の生産性と事業運営の効率を低下させています。公益事業や通信などの分野では、2050年までにEBITDAの最大25%が危険にさらされる可能性があります。これらの影響は過小評価されている可能性があります。地球システムの転換点の引き金を引くことによる結果や、企業以外の社会経済的損失は考慮されていないためです。これは世界経済フォーラムの「Business on the Edge:気候ハザードに対する産業のレジリエンス構築」報告書で概説されているとおりです。
移行リスク:より厳格な規制(すなわち、炭素価格付け、排出上限、技術的変化)や、消費者と投資家の期待の変化が市場の力学を再編しています。例えば、炭素価格付けだけで、対策を講じていない排出集約型企業には、2030年までにEBITDAの50%に相当するコストが加わる可能性があります。さらに、化石燃料ベースの産業などのセクターは、ネットゼロの気候政策の下で、グレーポートフォリオの最大30%が2030年までに価値下落するリスクに直面するなど、大きな減損リスクに直面しています。
既に保険業界から、気候変動への対応を怠ることによる企業コストについての早期警告が出ています。気候リスクが高まるにつれ、保険会社は補償条件を調整しており、リスクの高い地域では保険料の不安定な引き上げにつながっています。
グローバル保険仲介グループのHowdenとBCGによる共同報告書「The Bigger Picture」によると、物理的リスクおよび自然災害保護に対する保険料は、2030年までに最大50%上昇し、世界全体で2,000億〜2,500億ドルに達すると予想されています。
投資家も、気候関連リスクを評価額に織り込む動きを強めています。脱炭素化や適応が遅れている企業は、その影響が損益計算書に現れるよりも前に、大幅な価値下落リスクに直面します。2010年代には、再生可能エネルギーへの移行に対する積極性の欠如により、一部の欧州の公益事業会社が市場価値の最大80%を失いましたが、これもその一例です。
2. 対応しないことのコストの増大
対応しないことの財務的影響は増大していますが、行動を起こす者にとっての機会も同様に大きいものです。主な利点は次のとおりです。
適応への投資は高い収益をもたらします:適応に投資している企業は、投資1ドルあたり2ドルから19ドルのリターンを報告しており、資産を保護し、サプライチェーンを安定させ、異常気象の影響に対するレジリエンスを高めています。
緩和は費用対効果が高い:低炭素型の事業運営への移行により、急速な移行シナリオでは、ほとんどのセクターで排出量の50%超を経済的に削減でき、炭素価格付けや規制リスクへのエクスポージャーを低減できます。
グリーン経済は急速に成長しています:グリーン経済は、2024年の5兆ドルから2030年までに14兆ドルを超えると予測されており、再生可能エネルギー、エネルギー効率、持続可能な輸送、グリーン消費財の分野で機会を提供します。先行者は、競争面と規制面で大きな優位性を獲得する見込みです。
適応の機会は拡大しています:気候に強いインフラ、サプライチェーン、ソリューションへの需要は、企業が革新し成長するための新たな市場を生み出しています。Schneider Electricのように気候に強い送電網を構築する企業や、Saint-Gobainのようにハリケーンや火災に強いガラスを製造する企業は、この高まる需要に応えるため、レジリエンスに重点を置いたソリューションで地位を確立しつつあります。
3. CEOのための行動指針
我々はCEOに対し、気候リスクに主体的に取り組み、レジリエンスを守り機会を生かすために、中核的な戦略にそれを組み込むよう強く求めます。
気候リスクは分野横断的であり、企業の事業運営のあらゆる側面に影響を及ぼすため、経営陣全体からの直接の関与を必要とします。したがって、報告書の提言は次のとおりです。
気候リスクを戦略の中心に据える:気候上の考慮事項をリスク管理、財務計画、業務上の意思決定に組み込み、レジリエンスと競争優位を確保します。社内に伝達し、優先事項としての気候リスクの可視性を高めます。
シナリオに基づく計画を採用する:堅牢なシナリオ思考により、3°Cの世界と加速する脱炭素化の未来の両方に備えます。新たな科学的知見との整合性を保つため、シナリオ計画モデルを定期的に更新・再評価できるよう準備を整えます。
リスクを定量化し評価する:複数のシナリオにわたる気候リスクの徹底的な評価に基づき、移行計画とレジリエンス計画を策定します。
資本配分を整合させる:気候目標に向けて投資を振り向けることにより、短期的なリターンと長期的なレジリエンスのバランスを取ります。
気候リスクを事業運営に組み込む:気候リスク管理を組織全体の標準的な実務とし、あらゆるレベルの意思決定に影響を与えるようにします。
企業が対応を怠るコストは高すぎる
気候リスクはもはや遠い将来の話ではなく、今日すでに産業を再編しています。しかし、賭け金が高いのと同様に、報酬も大きいものです。今日、大胆に行動する企業が、明日の成功を決定づけるでしょう。
CEO気候リーダー連盟とBCGが発表した新たな報告書で示されているとおり、CEOは現在、気候行動を先導する独自の機会を有しています。
事業を守るために気候レジリエンスを戦略に組み込むことで、CEOは機会を生かし、持続可能でレジリエントな世界経済の実現に貢献できます。




