信頼は、職業上の関係であれ個人的な関係であれ、あらゆる関係において重要な要素です。
企業は、従業員と顧客の双方との間で信頼をどのように築き、強化し、維持するかを考える必要があります。これは組織変革において特に重要です。
容易なことではありませんが、企業が従業員と顧客の信頼を築き、守るために取れる明確な手順があります。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックは、人々の仕事、ウェルビーイング、健康、そしてコミュニティに対する考え方を変えました。2020年以降、企業が「静かな退職」と「大量離職(グレート・レジグネーション)」の台頭を目の当たりにしているのは、偶然ではありません。
これら二つの動向はいずれも、組織が従業員を支援する意思や能力について、従業員の信頼が欠けていることを示しています。実際、一部の論者によれば、企業は「信頼の危機」に直面しています。これに沿って、調査会社は「エデルマン・トラスト・バロメーター」のような枠組みを発表しています。これらは、企業が顧客と従業員からの信頼スコアを評価し、改善できるよう支援することを目的としています。
今こそ、その時です。
信頼は長らく無形資産とみなされてきましたが、企業は利益率と同じ厳密さで信頼を測定すべきです。結局のところ、調査によれば、信頼される企業は同業他社を400%上回る成果を上げることができます。
一方で、不信感に起因しうる従業員のエンゲージメント低下は、世界経済に毎年8.8兆ドルの生産性損失をもたらしています。組織変革を進めている企業にとっては、そのコストはさらに高くなる可能性があります。
従業員の信頼を築く方法
信頼を築くことの重要性を認めつつも、多くの企業は抽象的な概念を測定することが難しいと感じています。しかし、信頼を通貨として扱うことは可能です。信頼を戦略的優先事項に位置づけることで、従業員と顧客の双方からの信頼を高めるための取り組みを体系的に進めることができます。
組織変革の最中、従業員は、会社の新たなビジョンが自分たちに個人的な利益をもたらすと信頼し、その実現に向けて意欲的に取り組む必要があります。
1)人々を巻き込む
2015年、ダウ・ケミカルは環境・健康・安全(EH&S)を最優先課題に指定しました。CEOのアンドリュー・リベリスは、これに続いて「トップダウン型のコミュニケーション計画」を実施しました。これには、すべての社内会議でEH&Sを議題に取り上げること、四半期ごとの進捗報告やニュース放送、さらに自身のブログでのテーマ別ディスカッションが含まれていました。
EH&Sはまもなく全従業員の主要な関心事となり、化学物質排出量は84%減少しました。また、同社は9億5,000万ドルの節約を実現しました。この取り組みは業界全体の基準を打ち立て、ダウにおける今後のEH&S施策の資金ともなりました。
このことから、従業員は組織変革の過程を理解すれば、その過程に参加できることがわかります。新たな戦略を策定する際には、あらゆる階層のすべての従業員が、変革の必要性を理解する必要があります。さらに重要なのは、この組織変革が個々の従業員にとって、より良い立場に着地するためにどのように役立つかを示すことです。
2)現実を反映した文化を築く
リーバイ・ストラウス&カンパニーは2011年、CEOのチップ・バーグのもとで大規模な変革に着手した際、スキル構築の取り組みとあわせて、DEI目標の導入、賃金格差の是正、そして黒人従業員の管理職比率の向上にも取り組みました。その後、同社はブルームバーグのジェンダー平等指数(GEI)に2年連続で選ばれています。
人々は、自分を理解し、大切にしてくれるブランドのために働きたいと考えています。特に大規模な組織変革の後には、リーダーは従業員の成長とウェルビーイングを最優先しなければなりません。
これは、リーバイスの取り組みに倣い、従業員を支える方針を実施することを意味します。また、すべての従業員が仕事にもたらす多様な要素を受け入れ、それを促す環境を作ることも意味します。
3)従業員の業務プロセスを最適化する
ウィプロは2020年、技術サービス業界で最大規模の組織変革の一つに着手しました。私たちは、全25万人の従業員が自身の仕事環境の改善を実感できることを目指しました。
まず、事業を合理化し、リーダーがデータに基づいて迅速に意思決定できるようにし、協働と成長の機会を生み出しました。人々が目標を可視化し、その実現に向けて取り組めるよう、明確なリーダーシップの道筋を整え、すべての従業員にとって大胆でありながら達成可能な成果を定義しました。
直近の従業員エンゲージメント調査では、前年の結果から大幅な改善が見られ、ほとんどの従業員が、ウィプロのプロセスによって自身の業務上のニーズに効果的に対応できたと回答しています。
顧客の信頼を築く方法
重要なのは従業員だけではありません。顧客もまた、変革に注力しているにもかかわらず、自分たちが依然として最優先されているという確信を求めています。 顧客から信頼されることは特権であり、その信頼を得ることは容易ではありませんが、方法は単純です。
1)約束と実行の比率を高く保つ
組織変革がどれほどダイナミックで広範囲に及ぶものであっても、顧客は約束を果たす企業を信頼するでしょう。事業責任者や部門長は、真の価値と専門性を提供する権限を与えられるべきであり、そして何より、約束したことを実行する責任を負うべきです。企業がそのような予測可能性を提供できれば、顧客はその見返りとして信頼を寄せるでしょう。
2)双方にとって有益な状況をつくる
組織変革の目的は、顧客にとってより良い体験を提供しつつ、収益性を向上させ、事業を再活性化することです。しかし、このパートナーシップが発展するためには、企業と顧客の双方がその価値を見出す必要があります。このような双方にとって有益な状況こそが理想的な最適点であり、信頼に基づいて築かれた相互に利益のある関係です。
顧客と従業員との信頼を強化することは、企業の収益に大きな影響を与えうります。組織変革を進めている企業にとっては、これはなおさら当てはまります。
従業員や顧客との間で築いた信頼は、一瞬で失われることもありますが、幸いなことに、それは再構築し、再確認し、刷新することができます。



