私たちが語らないポピュリズム

The illuminated euro sculpture is seen in front of the European Central Bank's (ECB) headquarter (R) in Frankfurt, February 1, 2005. Despite US Federal Reserve looks set to raise its key interest rates this week the ECB is expected to hold its rates until later this year. - RTXN7EA
According to Eurostat, from 2007 to 2015, the average public debt-to-GDP ratio across all 19 eurozone member states increased from 65% to an almost-unsustainable 90%; and average annual GDP growth stagnated.Image: REUTERS/Kai Pfaffenbach
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米国におけるドナルド・トランプ大統領の混乱した政権運営と、EU離脱後の英国に待ち受ける険しい道のりを目の当たりにした欧州の有権者は、フランスのマリーヌ・ルペンやオランダのヘルト・ウィルダースのような右派ポピュリストから距離を置き始めているのかもしれない。しかし、欧州各国の政府が自国のポピュリストを抑え込むには、長期的な経済成長率の向上に必要な大規模な構造改革を実行する必要がある。

1991年の著書『ラテンアメリカにおけるポピュリズムのマクロ経済学』で、故ルディガー・ドーンブッシュMITのとセバスティアン・エドワーズUCLAのは、経済的ポピュリズムの標準的な定義を示した。二人はそれを、「成長と所得再分配を重視する一方、インフレや赤字財政のリスク、対外的制約、そして非市場的な強硬政策に対する経済主体の反応を軽視する経済へのアプローチ」と説明している。

ドーンブッシュとエドワーズによれば、政策立案者や市民が「経済の実績に深く不満を抱いている」とき、経済的ポピュリズムが生まれることがある。それに対し、「政策立案者は保守的なパラダイムを明確に退け、マクロ経済政策に何らかの制約が存在することを無視する」。その結果、「遊休能力は景気拡大の余地をもたらすものと見なされる」。こうして、「景気の再活性化、所得の再分配、経済の再構築」を基盤とするポピュリスト的な政策の土壌が整う。

ドーンブッシュとエドワーズが述べるポピュリスト的な経済政策は、2008年の金融危機以降のユーロ圏の経済政策と不気味なほどよく似ている。ユーロスタットによれば、2007年から2015年にかけて、ユーロ圏19カ国の平均公的債務残高の対GDP比は上昇し、65%から持続がほぼ不可能な90%に達した。また、年間平均GDP成長率は停滞した。欧州連合全体では、年間平均GDP成長率が2008年の水準を回復したのは2015年になってからだった。

この時期、欧州各国政府の経済政策は構造改革を後回しにしてきた。2008年11月にワシントンで開かれたG20首脳会議で、世界最大の経済大国は、マクロ経済刺激策を通じて成長を回復させ、国内需要を刺激するために必要なあらゆる措置を講じると約束した。当時、金融危機の拡大を防ぐための金融・財政拡大策は正当化されたが、それ以来、こうした政策は縮小されていない。

南欧の危機国はこのアプローチを主に推進してきた一方、ドイツは他の北欧・東欧諸国とともに反対してきた。2008年以降、EU加盟国8カ国は一時、金融市場から締め出され、国際通貨基金による緊急支援を必要とした。それにもかかわらず、多くの経済学者は、こうした政策がもたらした損害に気づいていないかのように、いまなおマクロ経済刺激策の拡大を求めている。

ノーベル経済学賞を受賞した経済学者、ポール・クルーグマンとジョセフ・E・スティグリッツは、欧州の問題は財政・金融刺激策の不足とユーロ圏の構造的欠陥に起因すると主張する。しかし、欧州各国の成長力を高めるための改革が必要だという点を見落としている。二人が処方する対策はギリシャとイタリアで十分に実施されたが、惨憺たる結果に終わった。ギリシャ経済はすでに7年間、イタリア経済は5年間にわたり縮小している。大幅な債務削減の後でさえ、2015年末時点の両国の公的債務は依然として、それぞれGDPの177%と132%に達していた。

堅調に成長している欧州諸国は、多額の公的債務を抱えることを避けてきた国々だ。ポーランド、スウェーデン、エストニア、ラトビア、リトアニア、スロバキアがそれに当たる。ユーロ圏の危機国のなかでは、アイルランドが公的支出と債務を最も大幅に削減し、その後、最も力強い回復を遂げた。

このことは、欧州の経済問題の原因が需要不足ではなく、市場の機能不全、過大な財政負担、過剰規制、教育の質の低さにあることを示唆している。したがって欧州各国は、新たな債務の罠を仕掛けるのではなく、こうした現実の問題の解決に注力すべきだ。

実際、EU各国は支出を抑制すべきである。EUの平均公的支出はGDPの47%に上るのに対し、他の先進経済では平均37~38%だ。これは企業補助金、社会移転、行政にEU各国が支出していることを反映しており、いずれも削減すべきである。

EU各国が公的支出を抑えれば、現在あまりにも高い労働課税を引き下げられる。資本への課税が比較的軽いのとは異なり、労働者は簡単に国外へ逃れることができない。EUの他の国々も、いくつかの東欧諸国にならい、労働課税を法人税率と同じ水準まで引き下げるべきだ。

英国やドイツなどの国々は、労働市場の規制緩和、職業訓練の拡充、妥当な賃金合意の実現によって、低い失業率(現在は約5%)を達成した。これに対し、ギリシャ、イタリア、スペインなど南欧諸国の過剰に規制された労働市場は、雇用を妨げ、若年労働者を不利な立場に置いている。

南欧諸国は、徒弟制度や中等教育でも北欧諸国に大きく遅れをとっており、これらの国々の失業は需要よりも労働供給に関係していることがうかがえる。実際、イタリアとポルトガルは、危機に至る2000~2007年の期間でさえ成長が鈍かった。

最後に、EUはサービス市場を最適化し、デジタル市場を開放して、物品の単一市場と同じように機能させる必要がある。各国政府は規制への関心を薄め、競争や起業家精神が花開く環境づくりとイノベーションの促進に力を入れるべきだ。とりわけ、ウーバーやエアビーアンドビーのような先駆的企業に関してはそうである。欧州大陸には、世界水準の大学が少なすぎ、ベンチャーキャピタルが不足し、規制が多すぎる。研究開発に十分な支出をしている国はわずか6カ国にすぎない。

経済成長を促す構造政策を実施する代わりに、欧州の政策立案者は、わずかなコストで高い成果を約束しながら、常に最低限のことしか実現しない経済的ポピュリズムを進めている。多くの欧州人が既成政治の外にいる候補者に引きつけられたとしても、驚くにはあたらない。

それでも、絶望する必要はない。うまくいっている欧州の6カ国は、近隣諸国の模範となりうる。互いに学び合うことで、欧州の人々は経済的ポピュリズムから、ひいては事態をはるかに悪化させる政治的ポピュリストから、自らを守ることができる。

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