家庭や携帯電話、自動車がますます「スマート」になり、複雑なエコシステムがつながるようになるにつれて、ビジネスの世界では新たなエコシステムが生まれています。今日の企業は、基盤となるテクノロジー、アプリケーション、ソフトウェア、サービスを結びつけるため、はるかに幅広いパートナーと協力する必要があります。
大規模で複雑なエコシステムの中には、100万人以上のパートナーが、それぞれ異なる時期に協力しているものもあります。こうした変化が起きているのはテクノロジー業界だけではありません。銀行、医療、消費財、物流、自動車などの伝統的な業界を含め、あらゆる業界で製品やサービスが進化し、従来とは異なる協働が求められています。
この新たな現実は、特に大規模な既存企業にとって難題となり得ます。そうした企業の多くは、単独で事業を進めることに慣れているからです。新しいことを社内で試したり、新たな分野に進出するために企業を買収したりするのが、よくある対応です。提携や買収に踏み切っても、長期的な戦略計画に基づくというより、偶然にエコシステムを形成することになりがちです。
よりよい方法は、新たなビジネス環境の形成に積極的に参加することです。そのため、多くの有力企業が独自の協働ネットワークを構築したり、既存のネットワークに参加したりしています。
課題は、価値を最大化し、競争優位をもたらすように、こうしたエコシステムを効果的に構築・運営する方法です。
適切なエコシステムの選択
8つの業界にまたがる40を超えるエコシステムを分析した結果、主な形態として、デジタイザーネットワーク、プラットフォーム、スーパープラットフォームの3種類が明らかになりました。

適切な選択は、企業の主な戦略的重点と既存の能力によって決まります。

デジタイザーネットワーク
管理の複雑さを抑えながら、パートナーの力を借りて既存製品をデジタル化することが目的なら、デジタイザーネットワークが適しています。これは、製品開発力が高く、外部パートナーへの依存度が比較的低い企業に最適です。典型例は、自動車メーカーがコネクテッドカーや関連デジタルサービスに必要な技術と知的財産を得るために提携するケースです。
デジタル製品は高価格で販売できる傾向があり、関連サービスから収益を生み出すこともできます。最も成功しているデジタイザーネットワークは、まず高度な製品やサービスを有し、製品に先進的なハードウェアとソフトウェアを組み込む能力を備えています。また、顧客のロイヤルティを高める魅力的な機能を提供し、顧客を囲い込んでいます。
プラットフォーム
スマート機器やエンドユーザーをシームレスにつなぎたい企業には、プラットフォーム型エコシステムが適しています。テクノロジー企業以外にもこの種のエコシステムへの参加を始めた企業はありますが、デジタル能力を備え、必要なスキルを持つ外部パートナーとの協働に前向きな既存のテクノロジー企業やスタートアップのほうが、プラットフォームを中核的なビジネスモデルとして構築する傾向にあります。
好例は、スマートフォン、モバイルアプリ、ノートパソコンなどの家電を手がけるXiaomiと、そのスマートホームプラットフォームです。多くの「貢献者」、すなわち機器メーカーが、空気清浄機、体重計、炊飯器など、さまざまなスマート接続製品を加えています。
プラットフォームの価値は、コミュニティの規模が大きくなるほど高まる傾向があります。効率的で消費者中心の取引を実現するには、多数の貢献者と利用者が必要だからです。パートナー数はプラットフォームの種類によって異なります。電子商取引、ストリーミング、ソーシャルメディア、シェアリングエコノミーのプラットフォームでは、協力者が数千人から数百万人に及ぶ傾向があります。スマートシティやスマートマイニングなどの産業用モノのインターネット(IoT)プラットフォームには、数百のパートナーが参加することがあります。
プラットフォームによって収益化の方法は異なります。電子商取引プラットフォームは通常、資産や労働力を共有するプラットフォームと同様に、取引額の一定割合を受け取ります。ソーシャルメディアプラットフォームは広告収入を得るか、データを活用した別のビジネスモデルを採用します。ストリーミングプラットフォームは通常、レンタル料や購読料を課す一方、スマートシティなどの産業用IoTプラットフォームは、固定料金または利用量に応じた料金を徴収します。
スーパープラットフォーム
複数のプラットフォームを統合し、一体化したサービスとして提供したい企業は、スーパープラットフォームを選ぶべきです。好例は、交通、決済、ショッピング、コミュニケーションの各サービスを、使いやすい単一のソリューションに統合するデジタルアシスタントです。
この選択肢で成功するには、高度なデジタル能力、外部パートナーと協働する姿勢、そして基盤となる堅固なプラットフォームが必要です。こうした理由から、既存のテクノロジー企業が選ぶ傾向にあります。
スーパープラットフォームは、少数の確立されたパートナープラットフォームと、その多数の貢献者によってもたらされる大規模な利用者基盤に依存します。貢献者は数百万人に達することもあります。そのため、独自の機能を加えられるなら、競合企業にも門戸を開いています。
スーパープラットフォームはプラットフォームパートナーが比較的少ないため、主導企業はデータ共有、独占権、サービスや機能に影響するプラットフォームの変更など、エコシステムの戦略的側面を交渉できます。
もう一つの重要な重点は、利用者のエンゲージメントを高めることです。確立されたスーパープラットフォームであるAmazon AlexaとWeChatは、いずれも直感的に使えるユーザーインターフェースを提供しており、それぞれの企業の他事業から得られる豊富な利用者の嗜好データを活用しています。
スーパープラットフォームは主に、広告、電子商取引の決済、新たなサービス提供など、周辺にあるデータ主体の事業を通じて収益を得ます。好例はWeChatです。ソーシャルメッセージアプリとして始まり、現在では商品の売買、友人への送金、食料品や料理の注文、ニュースの確認ができます。
それでも、スーパープラットフォームの成長には強固な財務基盤が必要です。AmazonはAlexaを宣伝する大規模なマーケティングキャンペーンを展開し、利用者を獲得するためにスピーカーの価格を引き下げました。また、プログラマーに資金援助や奨励策を提供し、Alexaの使いやすさと魅力を継続的に高めるスキルの開発を促しています。
多くの企業は、複数の種類のエコシステムを同時に活用しています。Amazon Alexaは3種類すべてを用いています。スマートスピーカーのハードウェアと音声認識を改善するデジタイザーネットワーク、Alexaのサービスを拡充するアプリケーションやスキルを追加するプラットフォーム、そしてSonosのスマートホームなど他のプラットフォームを統合し、Alexa Voice Serviceの幅と利用を広げるスーパープラットフォームです。
今後に向けて
今日のつながる世界では、業界や地理的な境界の意味が薄れつつあります。上記の新たな協働の形は、過去のものとは目的、構造、成果が異なります。参加者の地理的な多様性、業界横断的な視点、より短期で柔軟な契約形態、そしてメンバーによる、メンバーのための継続的な価値創出が特徴です。
こうしたエコシステムは適応力が高く、変化する需要の傾向、顧客の嗜好、競争環境により迅速に対応できるよう設計されています。
こうした幅広い協働ネットワークを構築・運営し、その可能性を生かす新たな手法は、依然として多くの企業にとって未開拓の領域です。エコシステムの潜在力を生かせる先見性のある企業は、大きな恩恵を得て、不確実な未来により適切に備えられるでしょう。


