ヤワ・ハンセン=クアオは、大学で初の女性学生自治会長に就任した。驚いたことに、ガーナでも初めてだった。女性が指導的役割に就く機会の少なさを目の当たりにし、女性の健康に関わる活動から、女性のリーダーシップに焦点を移した。ハンセン=クアオは、自国を拠点とする非営利団体、リーディング・レディース・ネットワークを創設。若い女性に起業やリーダーシップのスキルを教えている。昨年、その活動が評価され、アイゼンハワー・フェローに選ばれた。
ハンセン=クアオは、特に起業家として活躍するアフリカの女性リーダーを育てる難しさについて語った。
以下は、編集を加えた対談の記録である。
Knowledge@Wharton:リーディング・レディース・ネットワークを立ち上げたとき、どのような構想がありましたか。
ヤワ・ハンセン=クアオ:2009年にリーディング・レディース・ネットワークを立ち上げたときのビジョンは、アフリカの将来のリーダー人材を育てることでした。その着想の一部は、私自身の経験から得たものです。大学時代に学生自治会長に立候補し、キャンパスで初の女性会長になりました。しかし、女性が大学レベルの学生自治組織の会長に選ばれたのは、国の歴史上初めてのことだったと分かったのです。
この経験が、私の関心を女性の健康から女性のリーダーシップへと大きく転換させました。当時、私はHIV/エイズに関するピア教育にとても積極的に取り組んでいたからです。特にビジネスや政治の分野で、女性が目に見えるリーダーとして活躍できるよう支援する組織をぜひ設立したいと思いました。
Knowledge@Wharton:若い女性に手本となる人を示すという点では、政治家も素晴らしいですが、ビジネスリーダーはさらに重要だと思います。政治的な成功より、まずビジネスでの成功を考えるほうが現実的です。
ハンセン=クアオ:まったくその通りです。どちらも同じくらい重要だと思います。ただ、女性が人々の目に触れる存在となり、起業して収入を得られるようになれば、資金にアクセスできることで、地域社会により具体的な形で貢献できます。そして、女性のリーダーシップを育む本当の取り組みは、女性が少女であるときに始まります。だからこそ私たちの組織は、特に学校で、少女たちに起業への道を知ってもらうことに力を入れています。
その一環として企業訪問を行い、女性起業家やビジネスパーソンにメンターを務めてもらっています。また、若者にビジネスのスキルや知識を教えるジュニア・アチーブメントのようなプログラムを活用し、研修も実施しています。特に、多くの若い女性が高等教育に進めないためです。就職に役立つスキルや、自分で事業を始めるためのスキルを身につけてもらうことは、彼女たちが地域社会で役割を果たせるようにするうえで重要な解決策です。
世界は、女性が参加することの重要性にようやく気づき始めているようです……。それでも、道のりはまだ長いと思います。
Knowledge@Wharton:ガーナやアフリカのその地域では、起業を後押しする動きはどのくらい強いのでしょうか。
ハンセン=クアオ:起業を後押しする動きは強いです。その理由の一つは、失業率が非常に高いことです。現時点では存在しない仕事を求めて、多くの人が競い合っています。必要に迫られ、人々はキャリアの道として起業を考えざるを得ません。また、起業家が美化されすぎている面もあると思います。「自分もガレージで始めて、次の[フェイスブック共同創業者のマーク]ザッカーバーグになろう」という考えがあるのです。
起業の道を選ぶ人が増えている理由は、ほかにもたくさんあります。女性の場合は、育児という社会的な負担も一因だと思います。結婚して子どもを持つと、家庭の責任の多くが女性にのしかかります。決まった時間に決まった場所へ行かなければならない、組織化された職場で働くよりも、家族と両立しながら取り組むほうが実際には管理しやすいのです。起業という道は、多くの女性が求める柔軟性をもたらします。
Knowledge@Wharton:若いうちからこの取り組みを始めるということですが、学校は受け入れているのでしょうか。学校は従来型の教育に重点を置きがちで、高校や大学を卒業した後に生徒が何をするのかまでは、必ずしも考えていないようです。
ハンセン=クアオ:反応はさまざまです。ほとんどの私立学校は、私たちのようなプログラムの有用性を理解していると思います。公立学校は、やり方を変えることにやや慎重です。それでも、私たちは取り組みを続けてきました。公立、私立を問わず、こうした活動は賢明で理にかなっていると、次第に認識されるようになっています。学校を卒業した後、誰もが生産的に社会に関われるよう、別の道筋を用意できるなら、それは賢明なことです。公立、私立の双方がそのことに気づき始めていると感じます。
Knowledge@Wharton:設立以来、リーディング・レディース・ネットワークには何人の若い女性が参加しましたか。
ハンセン=クアオ:多くの成功事例に関われたことを、とても光栄に思います。中学校、高校、大学で実施しているクラブ・プログラムには、900人弱が参加しています。1,000人に届くところです。また、働く女性向けのプログラムも行っています。参加者に合わせたワークショップや講座を提供しており、こちらの規模はさらに大きく、これらのプログラムを修了した女性は1,200人弱です。年次プログラムとして、スタンドアウト女性リーダーシップ・プログラムも実施しています。初期段階の管理職から取締役職へと移行する幹部が対象です。93人の女性が参加する、私たちの最も新しいコミュニティです。
Knowledge@Wharton:どのような影響を与えていますか。ガーナや周辺地域で、どの程度活動が広がっていますか。
ハンセン=クアオ:ガーナは西アフリカにありますが、これまでに5カ国で人材を募り、活動することができました。ナイジェリア、ルワンダ、ウガンダ、南スーダン、南アフリカで取り組みを行いました。とても心強く思っています。女性リーダーを増やす全体的な利点として、女性がそこにいること自体が目に見える手本になるだけでなく、自らのリーダーシップを他者のために生かせることも、私たちが誇りにしている点です。
私たちが奨励し、さらには求めていることの一つは、プログラムを受けてスキルを身につけた女性が、そのリーダーシップを他者のために生かすことです。少女たちや年長の女性が地域社会を変える活動に関わる姿を目にしています。私たちは、しばしば存在する「与えられて当然」という意識を、地域社会のために責任を果たす意識へと変えることに力を注いでいます。
アフリカの将来のリーダー人材を育て、すでに活躍している女性リーダーの力を高めたいと考えています。
Knowledge@Wharton:地域社会に投資を還元し、始めたときよりも良い状態にして次へ引き継ぐという考え方が、浸透しているのを感じますか。
ハンセン=クアオ:もちろんです。無理に促す必要もありません。多くの女性が研修を受けると、何かに気づき、意識が変わるのだと思います。彼女たちがすぐに自問するのは、「ほかに誰がこれを必要としているだろう。誰に伝えられるだろう」ということです。女性を鼓舞し、動機づけ、力を与えることの利点の一つは、誰がこれを必要としているのか、どうすれば次の人に恩送りできるのかを、すぐに考えるようになることだと思います。
Knowledge@Wharton:成長する中で、どのような女性リーダーを手本にしていましたか。
ハンセン=クアオ:人生の人格形成期をここアメリカで過ごしました。しばらく政治難民だったのです。ヒラリー・クリントンに憧れていたことを覚えています。母も尊敬しています。母や、優れた教師、親族から多くを学びました。さまざまな場所や人々から刺激を受けています。
男性からも多くの刺激を受けてきました。父は私の人生に大きな影響を与えました。女性に力を与える取り組みを通じて、男性をもっと巻き込み、この道のりの味方になってもらうことができればと思います。特に、女性として何かの「初」になるなら、前任者はおそらく男性でしょう。企業やビジネスで成功する女性を、男性がメンターとして支える役割を見過ごすことはできません。
Knowledge@Wharton:30年前には、男女のそうした協力関係はありませんでした。女性の機会も、今ほど恵まれていませんでした。あなたの地域では、少女だった頃と比べて、今は男女の隔たりが縮まっているでしょうか。
ハンセン=クアオ:改善しています。世界は、ガバナンス、ビジネス、政治に女性が参加することの重要性に気づき始めているようです。それでも、まだ道のりは長いと思います。女性にはリーダーシップを発揮できない、あるいは発揮すべきでないという考えが、根強く、無意識のうちに存在しています。たとえば、私と同年代で、職場でセクシュアルハラスメントを経験したことがない女性を知りません。大きく前進しましたが、まだ長い道のりが残っています。性別を超えて協力し合うほど、状況は良くなると思います。
Knowledge@Wharton:リーディング・レディース・ネットワークを経て、ガーナでもほかの国でも、最終的に企業のCEOになる人が出ることが、あなたにとって究極の成功例でしょうか。
企業やビジネスで成功する女性を、男性がメンターとして支える役割を見過ごすことはできない。
ハンセン=クアオ:あるいは大統領になることも。もちろんです。アイゼンハワー・フェローシップに関連して、私がとても関心を持っていることの一つは、ここにあるほかの女性団体の経験から学ぶことです。ここの大学には、女性が政治のリーダーシップを発揮できるよう準備する団体を運営する非常勤教授がいます……。私たちの目標は、女性のリーダー育成を担う汎アフリカ機関になることです。アフリカの将来のリーダー人材を育て、すでに活躍している女性リーダーの力を高めたいと考えています。彼女たち自身の状況だけでなく、ほかの人々の状況も改善することを願っています。
Knowledge@Wharton:ビジネスと政治は、必ずしもうまくかみ合うとは限りませんが、どちらの分野でもリーダーになれるスキルを育てることも目標だと思います。
ハンセン=クアオ:まったくその通りです。また、女性が生まれながらに持つリーダーシップを否定しないことも大切です。私はいつも、2人の子どもにけんかをやめさせられるなら、それは世界平和を仲介するのに必要なスキルと同じだと言っています。女性をリーダーに仕立てることだけが大切なのではありません。すでに持っているリーダーシップの可能性を掘り起こし、年下のきょうだいの世話を担っているなら、それもリーダーシップだと少女たちに理解してもらうことも重要です。リーダーシップとは、舞台に立つことや人前に出ることだけではなく、人に影響を与えることです。誰もが影響力を持っています。その力を、自分や他者のためにどう生かせるでしょうか。
Knowledge@Wharton:リーディング・レディース・ネットワークがアフリカ全域、さらにその先へと広がることを望んでいますか。
ハンセン=クアオ:私たちの活動がインドなどの国々やアジアのほかの地域へと広がれば、とても嬉しいです。ただ、今後10年間は、アフリカに重点を置く考えです。


