先進国で格差が拡大し、生活水準が停滞することへの深い不安は、2016年の政治的激変の核心にあった。グローバル化と貿易が非難されてきたが、根深い低成長、すなわち経済学者が「長期停滞」と呼ぶ現象こそ、真の原因かもしれない。子どもたちがより明るい未来を享受すると信じて疑わなかった親たちは、2008年の世界金融危機によって夢を打ち砕かれた。それから9年後、ポピュリズムの台頭と、ナショナリズムに傾き内向きになる政策への回帰が、戦後の経済秩序を崩壊させる恐れがある。
ウォーリック大学のニコラス・クラフツが本号の概説記事で論じるように、生産性の伸びの鈍化――低成長と所得減少の主因――は、危機が起きるずっと前から明らかだった。本号のF&Dでは、その理由を検討し、世界の先進国が長期停滞を甘受すべきなのか、それとも適切な政策によって生産性と持続的な経済成長を回復できると期待すべきなのかを問う。
生産性の伸びが鈍化した原因を掘り下げたIMFのエコノミスト、グスタボ・アドラーとロマン・デュバルは、世界金融危機にその根源があると指摘する。信用の逼迫は企業の生産性だけでなく、資本を再配分する経済の力も損なった。ほかの要因も作用しており、なかでも人口の高齢化が大きい。カリフォルニア大学バークレー校のロナルド・リーとハワイ大学マノア校のアンドリュー・メイソンは、説得力をもって人口増加の鈍化は、ほぼ間違いなく国民所得とGDPの伸びの鈍化を意味すると論じる。一方で、一人当たり所得や消費における個人への影響は、経済政策次第であることも示している。
では、何をすべきだろうか。戦後の経済成長を支えてきた主要な原動力である貿易を止めることなく、政策の選択によって再分配や公平性への懸念を和らげられるだろうか。生産性とイノベーションを高めるものは何か。先進国は高齢化する労働力にどう適応できるのか。まず、適切なものを測らなければならない。マンチェスター大学のダイアン・コイルは、経済的厚生を測る指標としてのGDPの長所と短所を論じる。
第二に、世界人口の3分の2、すなわち発展途上国および新興市場経済に暮らす人々が、異なる現実に直面していることを忘れてはならない。こうした国々の多くでは、若い人口構成と依然として力強い生産性が、国内と世界経済の成長を押し上げている。
第三に、過剰に反応すべきではない。世界貿易は生産性向上をもたらす主要な力であり、貿易障壁は大小を問わず、あらゆる経済に打撃を与える。安易な答えに飛びつくのではなく、経済学者や政策立案者は、自国経済が抱える課題を深く探る必要がある。バークレー校の経済学者ブラッドフォード・デロングが論じるように、「この問題に何らかの手を打ってこそ、9年後には長期停滞について語らなくなっている可能性が高い。」


