多くの企業が、2022年の競争力と業績を高めるため、イノベーションを優先しています。
業界を問わず、イノベーション文化が根付いた企業は、同様の文化を持たない企業を上回る業績を上げています。
経営者は、イノベーションを重視する文化の醸成を目指すことで、イノベーションを促進し、育むことができます。
過去2年間、企業は前例のない業務上の混乱と市場の不確実性を経験してきました。新型コロナウイルス感染症のパンデミックが原因です。
そのため、多くの企業幹部が2022年の競争力と業績を高めるため、イノベーションを優先しています。言うは易く行うは難しで、不可欠とされるイノベーションの取り組みは多岐にわたり、増え続けています。
例えば、最近の研究によると、革新的な企業はそうでない企業と比べて、広く称賛されている優良な取り組みを数多く実践しています。こうした取り組みは競争力を高め得ますが、重要度には差があり、戦略がないまま導入することには大きな問題があります。
私は、マーケティングとイノベーション管理を研究する者として、こうした複雑さを踏まえ、2つの研究課題を設定しました。第一に、これらの革新的な取り組みの導入を最もよく支える組織文化とはどのようなものか。第二に、これらの取り組みのうち、企業の業績を普遍的に高めるものはどれか、という問いです。
C. Brooke Dobniと私は、これらの課題を、近刊予定の論文で検討しました。同論文はResearch-Technology Managementという、イノベーション管理の学術誌に掲載されます。
世界規模のイノベーション調査
米国、米国、欧州 とアジアの各国のカンファレンスボード(社会課題への取り組みをリーダーに支援することを目的とした研究を後押しする非営利団体)と協力し、27カ国、11業界にまたがる437社からデータを収集しました。
調査結果から、クラウドソーシング、ステージゲート・システム、デザイン思考、オープンイノベーション、ビッグデータ分析、イノベーション管理ソフトウェア、科学的発見、プロトタイピングを成功裏に実践するには、イノベーション重視の文化が必要だと分かりました。しかし、企業業績を高めたのは、これらの取り組みの一部に限られました。
イノベーション文化が根付いた企業には、イノベーションを支援し、実験に資源を割り当て、知識の創出と普及に取り組み、アイデアを検証して実用化するプロセスを備えたリーダーがいます。イノベーション力の高い企業は、戦略を実行し、競争優位性を生み出し、業績目標を達成できます。
イノベーションに非常に積極的な人々は、あらゆるイノベーションの取り組みをより効果的に実践できることが分かりました。また、業界を問わず、イノベーション文化が根付いた企業は、同様の文化を持たない企業を上回る業績を上げていました。業績向上につながることを踏まえ、イノベーション重視の文化はどのように築けばよいのでしょうか。
フォーチュン1000企業から得られた過去の知見によると、経営幹部はイノベーション目標を設定し、全従業員に各自の役割におけるイノベーションを促し、個人と組織の学習を優先し、実験の失敗に伴う不利益を取り除き、インセンティブで活動を後押しする必要があります。
本研究の結果に基づき、私たちは、イノベーション重視の文化を築くことが必要な第一歩だと主張します。企業がそれを支える環境を整えて初めて、革新的な取り組みの導入を試みることができます。
業績を高めるイノベーション
あらゆる業界の企業が、クラウドソーシング、オープンイノベーション、イノベーション管理ソフトウェア、科学的発見、プロトタイピングによる業績向上の恩恵を受けていました。
クラウドソーシングとは、社内の業務を外部に委託するプロセスです。企業に価値をもたらし得る新たなアイデアや視点が自然と生まれます。
オープンイノベーションとは、バリューチェーンの参加者間でイノベーションを自由に共有するプロセスであり、企業が価値を生み出す機会を広げることにもつながります。
イノベーション管理ソフトウェアは、イノベーションの進捗を測定するために設計されています。「測定できるものは管理できる」ため、進捗を効果的に測定すれば成果が生まれます。
科学的発見、すなわち時空を超えて人々が協力し、知識を深めることは、業績上位企業の特徴として認識されています。
プロトタイピング、つまり製品の初期版や試作品を作ることは、リスクを低減し、製品の市場での成果を高めます。
こうした革新的な取り組みは業績向上に普遍的な効果があるため、企業には導入を検討することを推奨します。ただし、こうした取り組みは組織の戦略に沿って行う必要があり、イノベーション重視の文化を築くことが必要な第一歩である点を改めて強調します。
世界経済フォーラムは、社会イノベーションを推進するためにどのような取り組みを行っていますか?
効果が限られるイノベーションの取り組み
ステージゲート・システム、デザイン思考、ビッグデータ分析は大きく注目されていますが、私たちの調査によると、これらの取り組みが有効なのは特定の業界の企業に限られます。
ステージゲート・システムとは、新製品の発売を目指し、順を追った一連の段階から成る直線的なプロセスです。私たちは、イノベーションのプロセスは決して直線的ではなく、このような硬直したプロセスはほとんどの業界に適さないと考えています。
私たちのデータは、ステージゲート・システムが最も効果的なのは製造業、IT、医療の分野であり、その他の分野ではそうではないことを裏付けています。
デザイン思考とは、デザイナーの感性や手法を用いて、消費者のニーズと技術的に実現可能なことを結び付けるアプローチですが、実践する人々の間でもその内容は漠然としており、曖昧です。
デザイン思考の曖昧さこそが、芸術・エンターテインメント、小売、マーケティング業界の企業だけがその恩恵を受けた理由だと私たちは考えています。
意外なことに、ビッグデータ分析、すなわち大規模なデータセットの収集、解釈、そしてそれに基づく意思決定は、一部の業界の企業にしか恩恵をもたらしませんでした。詳しく調べると、従来から大量のデータを管理・解釈してきた業界(金融、医療、ITなど)の企業だけが、その価値を実現していました。これはビッグデータの価値よりも、一部企業がビッグデータを管理できないことを示していると考えられます。
経営者へのヒント
調査に基づき、経営者がイノベーションを促進し、育むための3つの方法を紹介します。
1. すべての経営幹部は、イノベーション重視の文化を築くことを目指すべきです。
2. イノベーション文化を確立した後、企業は普遍的な効果がある取り組みの一部を、戦略的に実践すべきです。
3. 効果が特定の業界に限られる取り組みは、全面的に避けるべきです。



