新たな「最高人事責任者アウトルック」は、2025年に人事リーダーにとって最も重要なスキルとしてビジネス感覚を挙げています。
急速に変化する環境の中、組織は再編を進め、職務を再設計し、人工知能を従業員の業務に取り入れています。
人事機能全体でビジネス感覚が重要である理由について、経営幹部レベルの人事リーダー4人が見解を共有します。
地政学的・経済的な不安定さ、急速な技術進歩、人口動態の変化、働き手の期待の変化が労働市場を揺るがし続ける中、組織は変化への備えを進めています。
初の「最高人事責任者アウトルック」の知見は、変革が向かう先を示しています。企業は組織構造、企業文化、職務設計を見直す一方、人工知能(AI)を従業員に統合することを優先しています。
業界全体で変革が加速する中、最高人事責任者の役割は組織の成功にとってますます中心的になっています。同アウトルックは、2025年にすべての人事リーダーに必要な最重要スキルとしてビジネス感覚を挙げています。これにより、人材戦略を組織の成長、レジリエンス、イノベーションに直接結び付けられます。
実際、調査に回答した最高人事責任者の100%が、ビジネス感覚と戦略的思考を成功要因の上位3項目に挙げ、ほぼ90%が最優先事項に位置付けています。
ある最高人事責任者はこう指摘しました。「もはや人とビジネスを切り離すことはできません。」
この概要のために取材した多くの最高人事責任者は、人事機能全体にデジタルスキルとデータスキルの能力格差があることも認めました。この格差を埋めることは、事業全体における人事機能の戦略的影響力とインパクトを高めるうえで不可欠だと考えられています。
さまざまな分野の人事リーダー4人の見解を紹介します。
ビビアナ・アルベル、最高人事責任者、マジド・アル・フッタイム・ホールディング
ビジネスとAIの両方に精通することが、変革をもたらします。
学習・人材開発(L&D)へのAI導入は、もはや選択肢の一つではなく、将来に備えたあらゆる学習戦略の基盤となる要素です。AIが事業運営を変革する中、ビジネス感覚はL&Dリーダーだけでなく、組織のあらゆる階層に不可欠となっています。
ビジネス感覚を優先することで、個人のパフォーマンスが向上し、レジリエンスがあり、戦略に沿った人材を育てられます。また、AI主導の取り組みが革新的で、ビジネスの現実に根差したものになるよう支えます。
急速に進化する世界では、組織は単に変化に対応するのではなく、変化を予測し、形作る力を育てる必要があります。全社的な視点を育むことでビジネス感覚を養えば、全体を俯瞰する視点が生まれ、部門間の相互依存関係への理解が深まります。その結果、企業は競争上の優位性を得られます。
L&Dリーダーにとってこれは、AIツールを導入するだけでなく、主要なビジネス指標や成果に沿うよう調整する戦略的パートナーへと進化することを意味します。
ビジネスとAIの両方に精通することが、変革をもたらします。両者の統合は、これから起こることに対応できる企業の構築を後押しします。その実現には相互学習が必要です。ビジネス担当者はAIを理解し、AI担当者はビジネスの基礎を把握しなければなりません。
この共通理解は足並みをそろえ、抵抗を減らし、社内全体でのAIの効果を高めます。最終的に、ビジネス感覚は持続可能な成長、イノベーション、戦略的なL&Dリーダーシップの基盤となる能力です。
ケリー・ジョーンズ、最高人事責任者、シスコ
強いビジネス感覚がなければ、私たちは傍観する支援部門になってしまうおそれがあります。
優れた人事リーダーは、単なる「人の専門家」ではありません。人に関する専門性を持つビジネスリーダーです。
AIは、バリューチェーン、事業運営モデル、競争の力学をかつてない速さで再構築しています。これに対応するには、人事部門も収益、コスト構造、顧客の期待、人材の能力について語れる必要があります。
強いビジネス感覚がなければ、私たちは傍観する支援部門になってしまうおそれがあります。ビジネス感覚を基盤とすれば、AI投資の方向性を定め、市場の実情に人材戦略を合わせ、変革の中心に人を据える、欠かせないビジネスパートナーになれます。
私がこの理解を深めるうえで最も効果的だと感じた方法の一つは、事業の現場に直接身を置くことです。損益責任者に同行する、製品開発の会議に参加する、顧客との会議に同席するなど、顧客と過ごした時間はどれも、10倍になって返ってきました。
事業を内側から見ることで、人事の助言は真の戦略的推進力となり、成果を形作り、方向性に影響を与え、実質的な結果につながる変革を主導できます。
シャジ・マシュー、人事担当最高責任者、インフォシス
人事にビジネス感覚を取り入れることで、事業にとって真のパートナーになれます……
AI時代において、人間の創造性、好奇心、想像力を引き出すことは、ビジネスリーダーにも人事リーダーにも重要です。AIが業界を再編し、事業運営モデルを再定義する中、人事リーダーは人材戦略をビジネスの優先事項に合わせ、市場の変化を予測し、人材に関する意思決定が成長と収益性に及ぼす影響を理解する必要があります。
人事にビジネス感覚を取り入れることで、事業にとって真のパートナーとなり、従業員の意欲と力を引き出す人材戦略を形作りながら、顧客への成果と株主価値を高められます。人事に関するあらゆる意思決定が、持続可能な事業成果に直接貢献するようにすることが重要です。
人事リーダーがビジネス感覚を高める方法はいくつもあります。財務に関する知識を身に付ける、ビジネスモデルへの理解を深める、市場や業界への認識を高めるといった方法です。しかし、最も効果的なのは、事業のさまざまな領域のリーダーと協力し、部門横断型のビジネス施策を推進することでしょう。
こうした施策を主導することで、人事リーダーは事業を包括的に捉え、重要な人事判断が組織に及ぼす影響を理解できるようになります。
ミリアム・ベアトーベ・モレアレ、人事担当最高責任者、ランスタッド
ビジネス感覚を高めるには、人事リーダーは部門横断的な経験を積極的に求めるべきです。
変化の速い今日の環境において、最高人事責任者の役割は従来の人事機能にとどまらず、戦略的なビジネスリーダーシップを担うものとなっています。ビジネス感覚は今や最も重要なスキルです。人事リーダーが人材戦略を組織の成長、レジリエンス、イノベーションに直接結び付けられるからです。
AIが職務を再編し、変革が絶えず求められる中、最高人事責任者は各要素をつなぐ「ドットコネクター」であり、変革のリーダーでなければなりません。従業員が会社の方向性を理解できるよう支援し、事業に大きな影響を与える意思決定を推進する役割です。そのためには、事業そのものを深く理解する必要があります。
ビジネス感覚を高めるには、人事リーダーは部門横断的な経験を積極的に求めるべきです。大規模な変革を主導する、組織内の別部門に移るなど、従来の人事の範囲を超えたプロジェクトや役割を担えば、事業をより広く捉えられるようになります。
こうした経験は信頼性を高め、複雑な状況を乗り越えるうえで欠かせないシステム思考を育みます。これにより人事リーダーは重要なビジネス課題について効果的に助言し、事業の成功を形作るうえで人事が極めて重要な機能であることを示せます。


