暑さ、汚染、健康リスクの軽減とコスト削減に挑む、4つの都市

コロンビア、メデジンにあるオルキデオラマ植物園の建築プロジェクト。同市は、自然に基づく解決策と気候レジリエンスを推進する多くの都市の一つです。 Image: David Dibert/Unsplash
Gail Whiteman
Hoffmann Impact Professor for Accelerating Action on Nature and Climate, University of Exeter Business School, University of Exeter- 世界の半数以上の人口が都市に居住していますが、その大半が洪水や猛暑といった気候災害に対して極めて脆弱であると報告されています。
- こうした気候災害は、グローバルな都市化の加速に伴い、公衆衛生、生計、生産性、経済成長を脅かしています。
- 4都市の事例は、都市の気候・健康レジリエンスにおいて先導的な役割を果たし、他の都市が気候リスクを低減し、健康を守るための指針となるでしょう。
現在、世界人口の56%が都市部に居住し、グローバルGDPの80%を都市が創出しています。一方、83%の都市が気候災害に対して極めて脆弱であると報告しており、その筆頭は洪水(58%)と猛暑(54%)です。
都市化が加速する中、気温の上昇は公衆衛生だけでなく、生計、生産性、経済成長をも脅かしているのです。
ただし、気候変動による健康リスクを、大規模に機能する費用対効果の高い解決策の実証の場として活用する都市もあります。
そのような都市のアプローチは、気候変動へのレジリエンスへの投資が、健康リスクの低減、経済的損失の削減、資産価値の保護といった多面的な利益をもたらし、同時に地域社会を深刻化する気候変動の衝撃から守ることができることを示しています。
各国政府、企業、金融界の意思決定者にとって、これらの都市は、気候リスクを低減し、健康を守り、限られた資本により高いリターンをもたらす解決策を支援するための実践的な指針を提供しています。
気候や健康に関するレジリエンスをリードする都市から、次のような4つの教訓が得られます。
気候・大気政策により、通院と病欠を削減したロンドン
ロンドンの低排出ゾーンおよび超低排出ゾーンは、交通による地球温暖化ガスの排出を削減し、ロンドン中心部および内陸部の大気質を改善するために導入されました。
これらの施策により、排出量の多い車両が道路から減り。その結果、心血管疾患による救急入院が9%減少、呼吸器疾患が10.2%減少すると同時に、勤労者の病休取得が18.5%減少しました。低排出ゾーンのないイングランドの地域と比較すると、全体として年間3,700万ポンド(4,900万ドル)以上の生産性向上および医療費の節約が実現しています。
政策立案者にとって同市の事例は、大気や気候に配慮した交通規制が、有害な汚染物質を減らし、医療費の負担を軽減し、熱波やその他の気候ストレスが頻発する中でも、住民の健康維持を支援し、気候変動に対する健康面のレジリエンスを強化することができることを示しています。
洪水へのレジリエンスが健康を改善し、資産価値を高めたフィラデルフィア
米国の都市フィラデルフィアは、洪水に対するレジリエンスを備えることにより、気候変動がもたらす脆弱性を資産の成長へと転換することが可能であることを示しています。
2036年まで続く25年間の「グリーン・シティ、クリーン・ウォーター」プログラムを通じて、同市はすでにレインガーデン(雨庭)や、側溝に砂利を敷き詰めたバイオスウェル、雨水を地中に浸透させる透水性舗装を設置。これらは年間30億ガロンの雨水をただ川に流すのではなく地下へと誘導し、暑い夜には近隣の道路を最大5度冷却します。また、高い湿度と気温で呼吸器疾患の原因となる、汚染物質をろ過します。
さらに、このプログラムは、フィラデルフィアの主要な飲料水源であるデラウェア川とスクールキル川に流入する汚染物質を、年間20億ガロン以上削減すると見込まれます。これにより、同市の150万人の住民に対する水媒介性の健康リスクが、直接的に低減されます。
気候や健康への恩恵に加え、この取り組みは資産価値の向上も促進。数千件の不動産取引を分析した結果によると、これらの施設に隣接する物件の売却価格は、10%上昇しているのです。
投資家や政策立案者にとって、同市のモデルは、気候・健康危機を抑制しつつ地域経済を活性化させることにより、健康レジリエンスが二重の利益をもたらし得ることを示しています。
費用対効果の高い暑さ対策の効果を実証するアーメダバード
インドのアーメダバードは、費用対効果の高い暑さ対策が可能であることを示しています。
2013年、同市は、住民や労働者を猛暑から守るため、「ヒートアクションプラン(暑さ対策行動計画)」を導入。屋根からの熱を抑えるクールルーフ、水分補給ステーション、日陰の休憩所、SMSアラートなど、拡張性があり低コストな手段を通じて、3年以内に熱波関連の死亡率を約25%削減するという成果を上げました。
猛暑によりすでに年間10%の生産性損失が生じている中、アーメダバードのアプローチは、費用対効果の高い熱波レジリエンスモデルを求める企業にとって有望なものです。
クールルーフや、最も暑い時間を避ける勤務スケジュールの調整は、費用に対して3倍の効果をもたらす可能性があります。また、全市規模で50倍という最も高い費用対効果が実証されている早期警報システムは、熱ストレスが深刻化する前にSMSアラートで労働者の休憩を促すもので、企業レベルでも応用可能です。
自然に基づく解決策を健康インフラに変えたメデジン
コロンビアの都市メデジンは、ラテンアメリカで最も悪名高いヒートアイランドの一つを、自然に基づく気候健康ソリューションの実証場へと変えました。
2016年以降、「グリーン・コリドー」プログラムにより、18の道路と12の水路が、全長20kmに及ぶ一連の緑地へと変貌。また同市は、恵まれない立場にある住民75名を都市園芸家として育成し、30の回廊にわたり250万本の草花と88万本の樹木の植樹に動員しました。
総投資額1,630万ドル(住民1人あたり6.50ドルに相当)を投じたこの取り組みは、大きな成果を上げています。3年間で、市内の平均気温は2℃低下し、大気汚染物質であるPM2.5は8%減少、急性呼吸器感染症は40%以上減少しました。
費用対効果の高い、自然に基づく解決策を活用したこのモデルは、熱ストレスを軽減し、大気質を改善し、住民と労働者の健康を守り、同時に公的医療への負担を軽減するための青写真を提供しています。
これら4つの都市の事例を総合すると、気候変動に対する健康面のレジリエンスに関する解決策は、複数のリスクを一度に、かつ費用対効果の高い方法で対処するために役立つことが分かります。洪水と大気汚染の両方に対処する緑の街路から、よりきれいな空気が病院への受診回数の減少につながる交通ルールに至るまで、その範囲は多岐にわたります。
限られた資本を投じる先に関する意思決定を行う政策立案者や投資家にとって、重要な教訓は、気候リスクを低減し、健康を守り、都市経済を強化するという複数の利益を一度に積み重ねられる取り組みこそが、最も賢明な投資であるということです。
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