高齢労働者を定着させ、グローバル経済を活性化する4つの方法

より多くの高齢労働者が長く働き、健康を維持することができれば、高齢化による経済の足かせを相殺し、グローバルGDPを著しく押し上げることができるでしょう。 Image: Getty Images/Unsplash
- 2050年までに、世界の65歳以上の人口は15億人に達し、2020年の水準のほぼ2倍になります。
- 高齢労働者の雇用を増やすことは、高齢化や出生率の低下による経済への悪影響を和らげる上で、有意義な効果をもたらす可能性があります。
- 新しい報告書によると、ベビーブーム世代の27%を含むすべての年齢層が、AIに関する研修をさらに受けたいと考えています。
私の80歳の父は、今も働いています。父は健康で、会社を率いるという挑戦を楽しんでいますが、昼休みの散歩や時折の昼寝を取り入れるようスケジュールを調整しています。
多くの高齢者と同様、父の知識には計り知れない価値があります。ただし、高齢でありながら労働力として貴重な資産と見なされているという点で、父は稀有な存在です。
医療、テクノロジー、教育など主要な分野で労働力不足が深刻化し、その幅も広がり続けているにも関わらず、多くの企業は、父のような人材を活用することさえ考えていません。多くの国で人口の高齢化と出生率の低下が進むにつれ、この状況は今後数十年でさらに悪化する見込みです。
国連によると、2050年までに、世界の65歳以上の人口は15億人に達し、2020年の水準のほぼ2倍になります。
また、経済協力開発機構(OECD)によると、より多くの高齢者が長く働き、健康を維持することができれば、高齢化による経済の足かせを相殺し、グローバルGDPを著しく押し上げることができると考えられます。
同様に、50歳から65歳までの雇用減少幅を半減することができれば、英国のGDPは年間4%押し上げられる可能性があると、英国オックスフォードのエリソン工科大学の経済学シニアディレクター、アンドリュー・J・スコット氏は述べています。同氏は、2024年刊行の『The Longevity Imperative』の著者でもあります。
私がグローバル大企業に対して行っているコンサルティング業務では、Z世代の従業員に重点が置かれているのを目にしますが、それは妥当でしょう。一方、高齢の人材は見過ごされがちです。特に女性の場合、性差別を訴える傾向が強いという多くの報告があります。
もちろん、多くの高齢従業員は、健康状態の悪化、人員削減、介護の責任、あるいは年齢による差別を理由に、早期に労働市場から離脱しています。ただし、企業や政府のリーダーたちが 4つの重点分野に注力すれば、こうした課題の多くは解決可能です。その4つとは、柔軟な勤務形態の提供、生涯学習(特にAI研修)へのアクセス確保、公平性の確保、疾病予防と健康増進です。
1. 柔軟な勤務形態
フレックスタイム制、段階的退職制度、パートタイム職を提供する企業は、経験豊富な従業員により生産性が維持されると同時に、自社のコスト削減にもつながります。業界に応じて影響度は異なりますが、複数の研究によると、通常、従業員の離職率を25%から35%削減できるとされています。
総合人材サービス会社、ランスタッドの2025年年次調査では、50歳から64歳の人々が新しい仕事を選ぶ際、柔軟性は最も重要な要素となっています。
これは、主役であろうと馬の後ろで演奏していようと、孫たちの発表会はすべて参観している私の父にとっても優先事項です。
2. 生涯学習
継続的な学習は、脳を柔軟に保ち、雇用適性を高め、自尊心を向上させます。また、AIが職場や求められるスキルを変革する中で、これは必要不可欠なものとなっています。世界経済フォーラムの『仕事の未来レポート2025』によると、技術の変化に対応するために、2030年までに世界の労働力の約59%がリスキリングやアップスキリング(技能向上)を必要とする見込みです。
シニア層は取り残されるリスクがあります。オリバー・ワイマン・フォーラムの新たなグローバル調査データによると、職場で週に少なくとも3~4回AIを利用しているZ世代の従業員の割合は、2023年8月以来34ポイント上昇して58%に達する一方で、この技術を利用していないベビーブーマー世代の割合は10ポイント上昇して45%となりました。ただし、学習意欲は高まっています。同調査では、トレーニングを希望するベビーブーマーは現在27%で、2021年の8%から増加。同様に、1965年から1980年生まれのX世代の30%がトレーニングを希望しており、2025年の15%から増加しています。
大きな課題の一つは、学習機会へのアクセスです。学習機会を利用できると回答した割合は、全従業員のわずか4分の1、またベビーブーマーの17%でした。企業や事業者は、アップスキリングの機会をより多く提供し、他の同僚を指導できるZ世代の「スーパーユーザー」を見出すことで、この傾向を逆転させることができます。
3. 反差別法の施行
年齢による差別を禁止する法律は数多く存在しますが、エイジズム(年齢差別)は広く蔓延しており、デジタル格差と強い相関関係にあります。各国政府や企業は、強力な反差別方針を策定し、同一労働同一賃金や賃金透明化の措置を導入、徹底させ、シニア層が求める研修やメンターシッププログラムを提供することにより、職場における平等を促進しなければなりません。
こうしたプログラムの恩恵を受けている企業は増えています。例えば、ある大手銀行は、「ライフステージ」に応じた福利厚生を提供し、家庭の事情や健康上の問題による早期退職を回避できるよう支援し、高齢労働者の定着に成功しています。これには、生まれたばかりの孫の世話をするための有給休暇や、長期勤続者を表彰し、燃え尽き症候群を防ぐためのサバティカル休暇などが含まれます。別の銀行では、上級管理職とミレニアル世代やZ世代の同僚をペアにするリバース・メンタリング・プログラムを導入。高齢者がテクノロジーやAIのスキルを向上させるのに役立つだけでなく、彼らに異なる視点をもたらし、若い従業員の定着にも寄与しています。
4. 予防とウェルビーイング
社会が高齢者の就業継続を望むのであれば、各国政府や企業のリーダーは、彼らが健康を維持できるよう支援する必要があります。現在の医療システムは、過度に病気を重視しており、予防への配慮が不十分です。人々の寿命が延びている今、予防は特に重要です。
日本やシンガポールなどの国々は、医療、住宅、都市設計、社会参加を組み合わせ、連携させた政策により、高齢者の健康維持を支援。一方、英国には改善に向けた大きな強みがあります。その一つである「Our Future Health(私たちの未来の健康)」は、官民連携によるプロジェクトで、500万人を対象に、病気の予防、発見、治療に関する新たな方法の開発を目指します。得られたデータは、科学者による病気の初期兆候の発見に役立ち、より良いスクリーニングやケアにつながることが期待されます。
「老いる」意味の再定義
企業と社会は、固定観念を捨て、高齢者の能力を過小評価することをやめる必要があります。子供時代にも複数の段階があるように、加齢にも多くの段階があります。クルーズ旅行を望む高齢者もいれば、山登りに熱心な高齢者もいます。すべての高齢者が働かなければならないわけでも、働きたいわけでもありません。目標は、働き続けることができる、あるいは働き続けなければならない人々が、生産的かつ安心して働けるよう、障壁を取り除くことです。
そのメリットは明らかです。高齢労働者の雇用が増えれば、生産高が上がり、税収が広がり、年金への負担が軽減されるでしょう。社会的リターンも大きなものとなります。社会に参加する期間が長くなることで、私の父のような人々に生きがいが生まれるからです。
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