グローバルな目標の達成に、地域のリーダーたちの力が必要な理由

地域のリーダーたちは、共有するグローバルな目標に関して大きな成果を上げることができます。 Image: Getty Images
Jeff Merritt
Head of Centre for Urban Transformation; Member of the Executive Committee, World Economic Forum- 2050年までに、世界人口の約70%が都市に居住することになります。これは単なる人口動態の傾向ではなく、現代における最大の機会の一つです。
- 都市は、包摂的な成長、イノベーション、レジリエンスの原動力として、グローバルな目標を具体的な地域解決策に転換しています。
- 地域のリーダーたちを育成し、その能力を高めることにより、国際的な取り組みが、人を中心としたより効果的かつ公平なものとなるでしょう。
世界の都市は世界全体の国内総生産(GDP)の80%以上を生み出し、イノベーションの原動力となっていますが、都市のリーダーたちは依然としてグローバルな意思決定の場から排除されたままです。長年にわたり国際協力を主導してきたのは国家としての政府ですが、気候変動から住宅まで、現代が直面する最も差し迫った課題は、日々都市で取り組まれています。
地政学的緊張が高まり、従来の機関が機能不全に陥る中、市長や地域リーダーたちがこうした議論に参加できないことは、大きな機会損失です。グローバルな進歩が停滞しているのは、ビジョンが不足しているためではなく、地域の力を十分に活用できていないためなのです。
地域リーダーたちが鍵を握る理由
都市はグローバルな課題と地域の現実が交差する場であり、グローバル目標を実践的な解決策へと転換することができる場所です。
地域のリーダーたちは、以下の点において他に類を見ない立場にあります。
- 最も重要な場所である家庭、街路、地域社会において気候変動への適応策を実施する。
- 企業や市民と連携し、イノベーションを活用する。
- 近接性とアカウンタビリティを通じて、ガバナンスに対する信頼を再構築する。
権限を与えられた市長は、抽象的な約束を、より清浄な空気、改善された交通、よりレジリエンスの高いインフラ、より包摂的なコミュニティといった、具体的成果へと変えることができます。
都市は、他者が対処しにくい領域ですでに主導権を握っており、近接性に基づく協力、市民への理解、境界を越えた連携が真の成果をもたらすことを証明しています。
”未来を見据えた都市を作る3つの転換
都市がグローバルな進歩の原動力としての可能性を十分に発揮するためには、協働の方法、成功の測定、信頼構築の3つの重要な転換が必要です。
1. 官民連携の促進
世界経済フォーラムが地方自治体と国際機関をつなぐハブ組織、グローバル・シティーズ・ハブの協力を得て開催した「アーバン・フューチャーズ・ダイアローグ」において、リーダーたちは、都市単独ではなく協力が必要であるという点で合意しました。 気候危機、住宅需要、デジタル移行への対応には、各国政府、企業、市民社会の総合的な力が必要です。
第一の変革は、都市の優先課題と民間のイノベーションや投資を結びつける、セクター横断的パートナーシップを制度化することです。
これにより、官民の隔たりを埋める都市は、持続可能性の推進、グリーンインフラへの資金調達、クリーン産業を通じた雇用創出をより迅速に進めることが可能となります。
2. 都市開発における「質」の再定義
都市変革は短期的な技術的・財務的指標に偏りがちです。第二の転換として、社会的、文化的、環境的な価値を開発判断の中核に据える必要があります。
グローバルなインフラ投資は長期的な居住性と公平性を決定付ける重要な要素ですが、こうした側面を重視するものは5%未満に留まるのが現状です。
したがって、計画に社会的成果を組み込む必要があります。これを実現する都市は、繁栄する包摂的な地域社会を創出し、構造的な不平等を軽減することができるでしょう。
3. スマートシティに向けたデジタル信頼の構築
ガブテックとデジタル・インフラの拡大に伴い、サイバーレジリエンスは信頼とイノベーションの基盤になっています。
同会合の「デジタル境界:スマートシティのセキュリティ確保(Digital Boundaries: Securing Smart Cities)」セッションでは、データとデジタルシステムの保護が公共イノベーションへの信頼維持に不可欠であることが強調されました。
その理由は、サイバー信頼を強化する都市はデジタルサービスを安全に拡大でき、モビリティから公共の安全に至るまであらゆる分野を改善することができるからです。
始まった変化
これらの変化は理論上の話ではなく、すでに形になりつつあります。
ジュネーブで開催された同会合では、市長たちや産業界、金融界、アカデミアのパートナーが、地域イノベーションの事例を共有しました。
- 工業都市では、共有インフラと協調的なエネルギー戦略を通じて二酸化炭素排出量を削減しています。
- 自治体は、交通や住宅プロジェクトにコミュニティの成果を組み込んでいます。
- スマートシティは、AIとサイバーセキュリティの枠組みを活用し、住民を保護すると同時にデジタルインクルージョンを強化しています。
例えば、デンマークの「サーキュラー・コペンハーゲン」プロジェクトは、廃棄物管理と資源効率の向上に注力。リサイクル率の向上により、同市は年間59,000トン相当のr二酸化炭素排出量削減を見込んでいます。
また、コロンビアのボゴタは公共交通において電動車両を拡充し、年間26,000トンの二酸化炭素排出量を削減する見込み。この取り組みは、大気浄化にも貢献しています。
同フォーラムとグローバル・シティーズ・ハブは、こうした取り組みを拡大し、地域の経験がグローバルな政策決定に結び付くように協力。市長をはじめ、地域リーダーたちが国際機関や多国間プラットフォームに直接アクセスできる環境を整えることにより、ガバナンス、包摂性、気候変動、イノベーションに関する国際戦略に都市の声が確実に反映されるようにします。
次のアクション
都市の潜在能力を最大限に引き出すためには、国際システムを進化させる必要があります。
- 国際機関は、意思決定への都市の参加を正式に認めるべきです。
- 金融メカニズムは、より多くの投資を地域レベルでの実施に向けなければなりません。
- 企業のリーダーは、都市を単なる市場ではなく、共有する未来を形作るパートナーと見なす必要があります。
例えば、「国連フォーラム・オブ・メイヤーズ」は、より包摂的な新たな多国間主義を推進。市長たちが国家と並んでグローバルな議論に参加し、人々の懸念に対処する共同解決策を構築することを可能にしています。
都市は、他者が対処しにくい領域ですでに主導権を握っており、近接性に基づく協力、市民への理解、境界を越えた連携が真の成果をもたらすことを証明しています。
多国間主義の未来は、会議室の中でのみ交渉が行われるものではありません。リーダーシップが地域に根ざし、協力が地球規模で進む中、進歩が共有されるコミュニティにおいて、一つ一つ積み上げていくものです。
市長の権限強化は、公平性の課題であるだけでなく、グローバルな成功のための戦略でもあります。
国際機関、投資家、革新者たちは、都市を対等なパートナーとして認識する必要があります。真の進歩が生まれる場を反映した、グローバルガバナンスを設計すべき時は、今なのです。
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