ヘルスとヘルスケア

4人に1人が依然として安全な飲料水にアクセスできず、その他健康関連の最新動向

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北マケドニア、ロジャネ村の住民ファトミル・セルマニ氏は、自宅前の井戸水を浄化するため、卓上浄水器を使用。後発開発途上国の人々は、他の国々の人々に比べ、健康の基本となる飲料水と衛生サービスを利用できない可能性が2倍以上高くなっています。

後発開発途上国の人々は、他の国々の人々に比べ、健康の基本となる飲料水と衛生サービスを利用できない可能性が2倍以上高くなっています。 Image: REUTERS/Ognen Teofilovski

Shyam Bishen
Head, Centre for Health and Healthcare; Member of the Executive Committee, World Economic Forum
  • このグローバル・ラウンドアップでは、ヘルスケアに関する最新動向をお届けします。
  • トップストーリー:4人に1人が安全な飲料水を利用不可、デング熱発生のパターンを特定、公的機関「糖尿病治療には減量薬を」

1. 世界の4分の1が安全に管理された飲料水を利用不可

世界保健機関(WHO)とユニセフのレポートによると、2015年以降の進展はあるものの、依然として世界人口の4分の1にあたる21億人が安全に管理された飲料水を利用できない状況にあります。

WHOは「安全に管理された」飲料水を「改良された水源から供給され、必要に応じて敷地内で利用可能で、糞便や有害な化学物質による汚染がない水」と定義しています。

2015年以降、9億6,100万人が安全に管理された飲料水を利用できるようになりましたが、アクセス面では依然として大きな格差が存在しています。

レポートは、低所得国、脆弱な状況下にある人々、農村地域に住む人々、子どもや少数民族、先住民族グループが、安全な飲料水へのアクセスにおいて最も大きな格差に直面していると指摘。

後発開発途上国の人々は、他の国々の人々に比べ、基本的な飲料水と衛生サービスを利用できない可能性が2倍以上高くなっています。

「水・衛生・衛生習慣は特権ではなく、基本的人権です」と、WHO環境・気候変動・移住部門ディレクターのルーディガー・クレヒ博士は述べています。「持続可能な開発目標(SDGs)を達成するという約束を果たすためには、特に最も疎外されたコミュニティに対して、行動を加速させる必要があります」。

2. デング熱の流行は気温と降雨パターンに連動

『サイエンス・トランスレーショナル・メディシン』誌に掲載された研究によると、アメリカ大陸におけるデング熱の流行は、エルニーニョ現象の発生から約5か月後に発生していることが判明しました。地域レベルでは、夏の気温がピークに達してから約3か月後、降雨量がピークに達してから約1か月後に発生しやすい傾向があります。

この研究では、14か国にわたる30年間の監視データを分析。1万キロメートルも離れた地域間でさえ、平均して6か月間隔で症例数が同期して増減する傾向が見られました。

共著者のタリア・クアンデラシー氏は、この知見が「地域が流行をいつ予想すべきかを予測するのに有用であり、計画立案や準備態勢の構築に役立つ可能性がある」と述べています。

3. 短報:世界の健康に関するその他の話題

英国国立医療技術評価機構(NICE)は、2型糖尿病患者の治療をより個別化すべきであり、減量薬などの新薬へのアクセスを拡大すべきだと提言しました。同機構は、血糖値を下げるだけでなく心臓や腎臓を保護する作用を持つSGLT-2阻害薬と呼ばれる新型糖尿病治療薬を、すべての糖尿病患者に対する第一選択治療薬とするよう求めています。これにより約230万人がこの薬剤の適応対象となる見込みです。

米国で、肉食性寄生虫によるヒト感染例が初めて確認されました。保健社会福祉省の関係者によると、患者はエルサルバドルから米国へ帰国。BBCの報道によると、現在では米国とメキシコに加え、中米諸国すべてで症例が確認されています。

WHOと世界気象機関(WMO)は、極端な高温が労働者にもたらす世界的な健康課題と、組織が従業員を保護するために取るべき対策についてまとめた報告書を発表しました。

報告書では、気温が24℃を超えて1℃上がるごとに労働者の生産性が平均2.6%低下するといった大きな課題や、熱中症、脱水症状、腎機能障害、神経障害などの健康リスクを概説。主な適応策は下図のとおりです。

職場における熱ストレスのリスク低減に向けた重要な適応策
職場における熱ストレスのリスク低減に向けた重要な適応策 Image: WHO, WMO

ボツワナのドゥマ・ボコ大統領は、病院や診療所でがん、喘息から精神疾患に至るまでの治療に必要な医薬品が不足または在庫切れとなっていることを受け、公衆衛生上の国家緊急事態を宣言しました。同大統領はテレビ演説で「中央医療倉庫が運営する医薬品供給網は機能不全に陥っている」と述べ、「この機能不全により、全国的に医療物資の供給が深刻な混乱を来している」と指摘しました。

中国では、過去5年間にわたり税関が国際港湾で6億人以上の入国者に対し、感染症のスクリーニング検査を行ったと報じられています。中国税関総署の趙増連(Zhao Zenglian)副署長は記者会見で「6億人以上の入国者と3億台の車両・船舶を検査し、525万匹の病媒生物を摘発し、30種類以上の媒介性疾患の国内流入を効果的に防止した」と説明しました。

英国とEUでは、食品包装への表示が義務付けられているアレルギー物質リストに、新たに4種類のアレルゲンを追加することが推奨されました。研究者たちは、新たなアレルゲンとしてヤギまたはヒツジの乳、松の実、エンドウ豆とレンズ豆、そば粉をリストに加えるべきだと指摘しています。

4. 世界経済フォーラムからの情報

WHOの「ワンヘルス」フレームワークは、人間、動物、環境の健康が相互に依存しているという認識の上に立ったものです。残念ながら、同フレームワークに基づく政策の実施は依然として遅れており、断片的な状態が続いています。これは、主要な政策担当者が依然として一貫性のない分断された組織で活動しているためです。社会が必要としているのは、意欲を結集し、複数の政策分野を統合するための制度的メカニズムです。グローバル・シェイパーズのメンバー、ジェームズ・バルザー氏の記事で、このテーマについてさらに詳しく知ることができます。統合型人獣共通感染症早期警戒システムや再生型農業への移行など、協調的なミッションやプロジェクトを実現する方法について説明しています。

現在、45億人が基本的な医療サービスを利用できず、2030年までに1,100万人の医療従事者不足が予測される中、AIはこの格差を埋める可能性を秘め、世界の医療に革命をもたらすでしょう。以下のグラフが示すように、医療分野におけるAIへの民間投資の水準は様々です。

本記事では、骨折の検出から救急車の必要性評価まで、医療分野でAI技術が変化をもたらしている7つの事例を重点的に取り上げています。

健康に年を重ねることにおいて見過ごされがちな重要な要素の一つが、経済的安定と健康状態の関連性です。レジリエンスの高い長寿経済を構築するには、健康と経済的保護を統合し、不安定さが健康状態の悪化につながらないようにすることが不可欠です。ただし、医療における持続可能性は単に財政面だけでなく文化的側面も重要です。地域の価値観や規範を反映したシステムほど信頼され、持続されやすい傾向にあります。この記事では、グローバル・シェイパーズのメンバー、デイビッド・エブベ・ヌワチュクウ氏とアダム・スカリ氏が、健康的な長寿戦略が支援対象地域の文化的現実に根ざしたものでなければならない理由を考察しています。

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1. 世界の4分の1が安全に管理された飲料水を利用不可2. デング熱の流行は気温と降雨パターンに連動3. 短報:世界の健康に関するその他の話題4. 世界経済フォーラムからの情報

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