イタリアの都市でデータセンターを暖房に利用、その他アーバントランスフォーメーションの最新動向

イタリアのブレシア市に、アパートを暖房する新しいデータセンターが開設されました。 Image: REUTERS/Sergio Perez
Jeff Merritt
Head of Centre for Urban Transformation; Member of the Executive Committee, World Economic Forum- このマンスリー・ラウンドアップでは、都市と都市化に関する最新動向をお届けします。
- トップストーリー:イタリアのブレシアでデータセンターを暖房に利用、ドイツの都市が新規住民を誘致、「ヒートドーム」現象に見舞われる米国の都市。
- 世界経済フォーラムの都市に焦点を当てた活動については、「アーバントランスフォーメーション部門」をご覧ください。
1. イタリアの都市が「デジタル熱」で住宅を暖房
イタリアの公益企業A2Aは、ブレシア市に画期的なデータセンターを開設しました。このデータセンターは、コンピュータサーバーから発生する廃熱を回収し、市の地域暖房ネットワークに直接供給します。
フランス企業カルノとの提携で開発されたこの革新的なプロジェクトは、液体冷却技術を用いたデータセンターからの熱を回収する、イタリア初の実用例の一つです。
ラマルモラ熱発電所に設置された施設は、サーバーから最大65°Cの廃熱を回収する高度な液体冷却システムを採用しています。
完全稼働時、このプロジェクトは1,350戸を超える住宅に暖房を供給し、年間約3,500トンの二酸化炭素排出量を削減する見込みだと、ロイター通信が報じています。
「データセンターの急速な拡大と消費の電気化が進む中、電力網への大規模な投資が不可欠です。一方で、データセンターは地域暖房ネットワークを有する都市にとって、驚くべき機会を提供しています」と、A2AのCEO、レナート・マッツォンチーニ氏は開所式で述べました。
このイニシアチブは、エネルギー集約型のデジタルインフラがもたらす深刻な環境課題に対応しつつ、アーバントランスフォーメーションの可能性を示しています。

2. ドイツの都市が住民誘致のため無料滞在を提供
欧州で一部の都市がオーバーツーリズムの影響に苦悩する中、ドイツ東部の一部の町や都市は人口減少に対抗するため、積極的に取り組みを進めています。
ポーランド国境に近いドイツのグーベン市は「トライアル・リビング」制度を導入。最大4週間、無料で住居を提供し、永住を促しています。
ベルリンから移住して同市のプログラムを管理するアニカ・フランツェ氏は、独国際放送ドイチェ・ベレに対し、首都の過密な住宅市場で一部屋分の家賃よりも安い、100平方メートルの手頃なアパートが利用できる点を強調しました。
政治的緊張にもかかわらず、このプログラムは有望です。2年目に入ったこのプログラムには、ドイツ国内およびベルギー、アルジェリア、エジプト、ブラジルなどから40人の応募者が集まりました。採用されると、月額約116ドルでリノベーションされたアパートを借りることができます。
3. 短報:進化する都市に関するその他の話題
6月の最終週、米国東部の都市は「ヒートドーム」に覆われ、米国のボストン、ニューヨーク、フィラデルフィアなどが影響を受けました。同国内のほぼ10%が、38°Cに迫る歴史的な高温を記録しています。
スイスは、ジュネーブを国際外交の拠点として強化するため、3億2,937万ドルを投資。この資金は、予算削減と寄付の減少により財政難に直面している、同市に本部を置く国際機関を支援することを目的としています。同市には、国連や世界保健機関を含む、40を超える国際機関が拠点を置いています。
スペイン政府と送電網運営会社レデイアは、4月28日にイベリア半島で発生した大規模停電の原因に関する調査結果をそれぞれ発表。スペイン当局が、エネルギーミックスの誤算と電圧制御の不足を原因として挙げた一方、同社は発電所の故障と需要の急増を指摘しました。
モロッコは、農業と都市部における慢性的な干ばつと水需要の増加に対応するため、海水淡水化プラント、水転送事業、新たなダム建設への投資を拡大しています。
ベトナムのグエン・ヴァン・タン財政部長は議会で、グローバル金融市場での存在感を強化し、国際投資を誘致するための国際金融センター設立計画を進めていると述べました。ロイターが入手した草案には、為替自由化、銀行改革、税制優遇措置、労働政策などの措置が盛り込まれています。
英国は、長年投資不足に悩まされてきたロンドン郊外の交通プロジェクトに、211億ドルを拠出することを約束しました。
4. 世界経済フォーラムからの情報
世界中の都市は、住民の空気の質を改善するため、革新的なモビリティ戦略を採用しています。低排出ゾーン、電気自動車、配送用マイクロハブ、自転車インフラが、都市の空気の質向上を推進しており、現在、必要なことは規模の拡大です。官民連携の強化により、こうした実証済みモビリティをさらに導入し、清潔な空気と持続可能な成長を促進することができるでしょう。
アマゾンは、5,000万人を超える住民のニーズを満たしつつ、森林伐採と生物多様性の喪失から保護する必要があります。一般的な認識とは異なり、この地域は手付かずの原始林に覆われた土地ではありません。ここは常に人類が居住してきた地域であり、熱帯雨林は長い歴史と人間の影響によって形づくられてきたものです。アマゾンの都市と住民を支援しつつ、多様な生態系の保全を促進する新たな戦略が検討され始めています。
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