真にクリーンな再生可能エネルギーの未来~ウクライナのエネルギー転換に学ぶ~
再生可能エネルギーはクリーンかつグリーンでなければなりません。 Image: Karsten Würth on Unsplash
- 再生可能エネルギーの急速な成長とネットゼロ達成に向けた取り組みは、汚職リスクを高めます。
- 汚職リスクを軽減するには、透明性、テクノロジー、そして協調行動が必要です。
- ウクライナは欧州連合(EU)のグリーン大国となる潜在能力を秘めています。
戦争と不安定な情勢を背景に、ウクライナの再生可能エネルギー分野における進歩は際立っています。これは単にグローバルなトレンドに従っているというだけでなく、同国の未来に向けた生命線なのです。エネルギー安全保障の再構築と確保に向けて取り組む中で、再生可能エネルギーは、よりクリーンな空気と排出量の削減、そして攻撃に対してより脆弱性の低い、より強固かつレジリエンスの高いエネルギーシステムへの道筋を提供します。
同国最大の民間電力会社であるDTEKでは、戦争がグリーンエネルギーへの移行を加速させました。私たちは、分散型再生可能エネルギーが軍事攻撃に対してどれほど強靭であるかを、身をもって経験しています。2014年のロシアによる侵攻によって500 MW規模の風力発電所を奪取された後、ウクライナは再生可能エネルギーへの投資を14億ユーロへと倍増。特に注目すべきは、全面戦争中、黒海沿岸にティリグルスカ風力発電所を建設し、その規模を4倍の500 MWに拡大しようとしていることです。
小さな国で再生可能エネルギープロジェクトを進展させるための資金を確保するだけでも困難ですが、戦争中の国としてそれを実現することは、さらに困難です。そのため、同国における汚職対策への取り組みは急務であり、優先順位が高まっています。
その結果として、ガバナンスと業務を強化する大きな一歩を踏み出し、この重要な開発に必要な資金調達を確保しようとしています。これには透明性の確保、あらゆる形態の汚職に対するゼロトレランス、エネルギー部門への外国からの支援を追跡する汚職防止策などが含まれます。例えば、需要評価から配送、展開までの援助のライフサイクルを通じて、ドルとユーロの支出を追跡する専用CRMシステムが導入されました。現在、このシステムには4,800万ドル以上の設備を登録。これに加えて、欧州委員会と米国政府から1億700万ユーロのエネルギーに関する援助が提供されています。
再生可能エネルギーの巨大な供給源としての同国のポテンシャルが、この戦いをさらに重要なものにします。国際投資家やパートナーからの信頼を背景に、ゼレンスキー大統領が提案したとおり、同国はヨーロッパのグリーンエネルギーのハブとなることができるでしょう。昨年、再生可能エネルギーの容量が世界全体で50%増加した中で、ウクライナには、年間19,000TWhの太陽光および風力発電を生産可能なスペース、スキル、許認可制度、気象条件が揃っています。これは、ヨーロッパの現在の需要の7倍に相当します。
再生可能エネルギーにおける汚職リスク
再生可能エネルギーが地域社会全体を動かす未来を想像してみてください。私たちの暮らしやビジネスのやり方を変える未来です。それは心躍るビジョンですが、課題がないわけではありません。
化石燃料やその他の採掘産業と同様に、再生可能エネルギーも汚職リスクに直面しています。実際のところ、そのリスクはさらに大きいかもしれません。現在および将来にわたって、この業界に官民両方の資金が大量に流入しているため、不適切な資金管理が行われる可能性が高まっているからです。資金流用や契約の不正な優遇などがあれば、プロジェクトの停滞や、クリーンエネルギーに対する信頼の低下につながる恐れがあります。
汚職は、その分野に悪影響を及ぼすだけでなく、公的資金の浪費や不平等を拡大させ、地域社会の生活をより困難なものにしてしまうのです。
解決のカギは透明性、テクノロジー、連携
私たちの視点では、企業は、ほぼすべての契約書に記載される一般的な汚職防止条項のような正しい文言だけに頼るべきではありません。再生可能エネルギーの成長を守り、持続的な利益をもたらすためには、より強力で実用的な解決策が必要です。特に重要な要件は、次の3つです。
1. 透明性
透明性には、調達プログラムの公開、第三者機関による監視、そして汚職を一切許容しないというトップの姿勢が必要です。これらは、汚職対策としてどの組織でも最も容易に、かつ効果的に実行できる対策でしょう。強固なコンプライアンス体制と明確な政策枠組みとともに、ウクライナやその他の地域における再生可能エネルギーのより迅速な普及には、透明性のもたらす明るい光が不可欠です。同様に重要なことは、企業がパートナーのデューデリジェンスを強化し、クリーンな業界を実現することです。
2. テクノロジーとAI
新しいテクノロジーは、汚職との戦いに新たな武器の数々をもたらします。自動化は、利益相反の発見に役立ち、AIは、大量のデータセットを分析し、疑わしい取引などについて警告を発することができます。さらに、安全なシステムが内部告発の窓口を強化し、報復を恐れることなく腐敗行為を通報するよう個人を促すことができます。
3. 連携
この戦いに単独で勝利できる組織はありません。だからこそ、私たちは他の企業、ウクライナ政府、ウクライナ内外の他の組織と協力し、透明性の高い枠組みの構築に取り組んでいます。世界経済フォーラムの「腐敗防止イニシアチブ(PACI)」の一員として、私たちは経済協力開発機構(OECD)、トランスペアレンシー・インターナショナル、採取産業透明性イニシアティブ(EITI)などの組織とベストプラクティスや経験を共有しています。
PACIのような組織の課題や活動は、今やこの業界にとっての最優先事項でなければなりません。クリーンな再生可能エネルギー部門だけが、気候変動とエネルギー安全保障という2つの課題に対応できるだけの十分なクリーンエネルギーの急増を実現できるのです。