長寿経済における、注目のスタートアップ10社
長寿経済に向けた製品やサービスを開発する新興企業が増えています。 Image: Getty Images/iStockphoto
- 2030年までに、世界では6人に1人が60歳以上の高齢者になると言われています。
- この人口動態の激変はあらゆる場所で起こっており、歴史的なグローバルシフトです。
- 受賞した10社のスタートアップ(新興企業)にとっては、急成長する長寿経済に前向きな変化をもたらすチャンスです。
世界は人口革命の真っただ中にあります。2030年までに、世界人口の6人に1人が60歳以上の高齢者になると言われているからです。最も急速に高齢化が進む国のひとつである韓国では、2025年までに人口の20%が65歳以上となり、「超高齢社会」へと変貌を遂げます。2030年には、アメリカ人の5人に1人が65歳以上となり、人口動態に激震が走ることになるでしょう。現在、若者が大多数であるサハラ以南のアフリカでも、60歳以上の人口は、2020年の5,000万人から2100年には6億人へと急増すると予測。劇的な変化が起ころうとしています。
こうした人口動態のトレンドは課題と見なされることが多いものですが、革新的なマインドセットさえあれば、貴重なチャンスを生み出すことができます。こうした変化に前向きに取り組むことにより、経済成長、イノベーション、社会変革が促進されるでしょう。韓国の「グッドジョブ5060」プログラムに見られるように、社会で効果的に対応すれば、大きな利益を得ることができます。この取り組みで中高年者1,000人が再就職を果たし、推定400万ドルの経済的・社会的価値、さらに4.7の社会的投資利益率が生み出されました。成功率は65%。これまでのベンチマークを大きく上回る値でした。このプログラムは、イノベーションがいかにして高齢化という課題を前向きな社会発展のための強力な力に変えることができるかを示しています。
長寿経済でイノベーションを生み出す企業
より健康的で経済的に回復力のある長寿命化に向けてイノベーションを推進するにあたり、スタートアップ企業が果たす役割もまた、ますます重要になっています。この傾向を踏まえて、世界経済フォーラムのイノベーション初期のエコシステムであるアップリンク(UpLink)と「金融と通貨システム」部門は、マニュライフの協力を得て、イノベーションを活用した長寿経済の加速に取り組んでいます。この3年間にわたるパートナーシップは、長寿に焦点を当てたソリューションの成長を可能にし、長寿に対するより正確な理解を促進する、豊かなエコシステムを構築することを目的としています。長寿を「健康かつ収入を伴う年数の増大」と捉え、増大した年数を支える資金を再定義することにより、このイニシアチブは、寿命を延ばすことに焦点を絞るのではなく、人生の質を高めるための総合的なアプローチを支援します。
UpLinkは「長寿社会における繁栄に向けて(Prospering in Longevity Challenge)」と題したイノベーション・コンテストを実施。長寿に伴う経済的レジリエンスを強化し、ヘルスケアに予防的なアプローチを取り入れる、将来性の高いソリューションを持つアーリーステージの新興企業10社を発掘しました。
130を超える応募の中から選ばれた10社には、マニュライフ生命からそれぞれ5万カナダドルの賞金が贈呈されます。このコンテストは、APGアセットマネジメント、IDBラボ、マーサー、プライムタイム・パートナーズ、スタンフォード大学長寿研究センター、スイス・リー、イノベーション・ファウンデーションの支援を受けました。
受賞したトップ・イノベーター10社
- アディション・ウェルスは、あらゆるライフステージで十分な情報に基づいた意思決定ができるようにするプラットフォームであり、経済的ウェルネスを再構築しています。個々に合わせた財務アドバイス、教育セッション、認定専門家へのアクセスを提供することにより、個人が自信を持って複雑な財務状況をナビゲートできるよう支援します。同社のイノベーションは、人口動態が変化する中での繁栄に不可欠な、より大きな経済的安定を促進するものです。
- ボールドイン(旧ニューリタイアメント)は、高度なテクノロジーと個別アドバイスを統合することによって、退職後の計画を再定義します。同社は、定年退職者や退職予備軍の世代に、経済的に安心な未来を作るためのオーダーメイドのツールを提供し、退職後の人生における経済力確保へのアプローチに革命をもたらします。
- コンクエストは、すべての人に堅実でパーソナライズされたアドバイスを提供することにより、ファイナンシャル・プランニングを民主化します。ステップバイステップのガイダンスから、ベテランアドバイザー向けの高度な戦略まで、個人、特に高齢者が各ライフステージでオーダーメイドのファイナンシャルソリューションを得られるようにします。
- ゲットセットアップは、双方向型のライブ学習を通じて高齢者の能力を強化。同社のプラットフォームは、テクノロジー、ウェルネス、金融スキルのコースを提供し、定年退職後の生活における個人の成長と社会とのつながりを育み、高齢者が活動的で継続的に学習できるよう支援します。
- ギバーズは、家族介護者に経済的支援、トレーニング、リソースを提供することにより、介護を変革します。同社のプラットフォームは、介護者が米国の各州のプログラムを通じて毎月最大2,000ドルを非課税で利用できるよう支援し、経済的なストレスを軽減します。ヘルスケアシステム全体で介護支援を標準化し、長寿経済におけるレジリエンスを強化することを目指しています。
- ジュライは、患者一人ひとりのニーズに合わせてパーソナライズしたAI活用型ヘルスケア・ソリューションであり、慢性疾患管理に革命を起こします。同社の革新的なアプローチは、個人の長期的な健康増進を支援し、健康に年を重ねることを支援するスケーラブルなソリューションへのニーズの高まりに対応します。
- シンプリケアは、AI主導のコーチング・プラットフォームを通じて健康に年を重ねることを促進。予測分析と臨床的アルゴリズムを使用して、ユーザーの「エイジウェル指標」(AgeWell Index)に基づいてケアをパーソナライズし、おすすめのマルチメディアコンテンツを表示します。また、転倒などの健康リスクを85%の精度で予測し、ユーザーがより長く健康的な生活を送れるよう支援します。
- テルはAIを活用した音声デジタルバイオマーカーで神経変性検査を強化。このパイオニア的スタートアップは、神経学的状態を検出するための即時音声テストを提供することにより、診断精度を向上させ、臨床判断を迅速化します。また、医療システムへの統合によって早期介入と個別ケアをサポートし、高齢化する人々の生活の質を向上させます。
- ウォーターリリーは、革新的なAIプラットフォームで介護計画を簡単化し、家族が介護保険を比較・選択できるようにします。長期介護の需要が高まる中、同社はこの重要なプロセスをより利用しやすくして、すべての人がより良く備えられるようにしています。
- ゼンシーは、AIと遠隔医療を通じて、手頃な価格でパーソナライズされたヘルスケアを提供。月額4ドルからの利用プランにより、世界でヘルスケアを身近なものにしています。また、セネガルやコンゴ民主共和国などの地域でサービスを拡大し、医療アクセスをグローバルに変革することを目指しています。