地政経済と政治

2024年のグローバル・デモクラシーをグラフで読み解く

2024年には、世界の人口の半分が選挙で投票します。

2024年には、世界の人口の半分が選挙で投票します。 Image: Unsplash/Phil Hearing

Emma Charlton
Senior Writer, Forum Stories
  • 2024年は世界の人口の半分が投票する重要な選挙の年です。半ばを過ぎた今、状況はどのようになっているのでしょうか。
  • 誤報が増大し、二極化が進む時代において、世界中の民主主義プロセスを守るには包括的アプローチが必要です。
  • 1月に発表された世界経済フォーラムの「2024年版グローバルリスク報告書」では、信頼の低下、政治的二極化、不安定な地政学的な情勢が組み合わさることで、グローバルリスクに対処するための協力が制限される可能性があると警告しています。

世界各地で選挙が実施される2024年は、グローバル民主主義にとって重要な年になりそうです。実際、人口の多い国トップ10のうち8カ国で今年、投票が行われます。

インド、欧州連合(EU)、英国、フランスで投票が終わったばかりですが、11月には米国の有権者が大統領選挙に参加します。その他にもメキシコ、インドネシア、南アフリカなどで、重要な投票が予定されています

グローバルリスク報告書

選挙の結果は、今後数年にわたって地政学的なダイナミクスや国際関係を形成し、気候変動や経済政策、国際協力といったグローバルかつ重要な課題に影響を与える可能性があります。また、世界経済フォーラムの「2024年版グローバルリスク報告書」では「世界が気候変動と紛争という二重の深刻な危機に悩まされ」ていることが示されており、新たに選出されたリーダーたちにとって、そのリスクは極めて高いものになります。

同報告書では、信頼の低下、政治的二極化、不安定な地政学情勢が、グローバルリスクに対処するための協力を制限する可能性についても強調されています。

このような背景から、今年の選挙は民主主義の健全性を測るバロメーターとなり、誤報、投票率、選挙の公正性をめぐる新たな課題に光を当てるものとなるでしょう。

Current risk landscape.
選挙には、誤報や二極化といった重大なリスクが伴います。 Image: 世界経済フォーラム

誤報や偽情報は大きな脅威であり、選挙と密接に関係していると報告書で指摘されています。

この報告書では、誤報の拡散は、選挙結果や政府の正当性に重大な影響を及ぼす可能性を指摘。誤解を招くようなコンテンツの広範な流布は、様々なツールやプラットフォームによって助長され、社会的・政治的分裂を深刻化させる可能性があります。

また、新しい手法として、データと生成AIアプリケーションによる世論や投票パターンの発見・分析も行われています。

Global risks by severity over the short and long term.
誤情報は即時的な脅威をもたらします。 Image: 世界経済フォーラム

選挙の公正性に対する脅威

選挙の公正性は、ますます大きな課題に直面しています。

V-Dem研究所のレポートによると、2000 年以降、45 カ国で選挙の公正性と自由性が著しく低下。誤情報の拡散、外国勢力の干渉、そして社会的信頼の低下がその一因です。

Indicators of clean elections, 2000-2023.
公正性が脅かされています。 Image: V-Dem Institute

投票率と若者の投票率

多くの国々で、若年層と高齢層の投票率に格差が見られます。2022年のフランス大統領選挙では、18~24歳の投票率が76%だったのに対し、50~59歳では92%と、16ポイントの差がありました。英国オックスフォード大などが運営する統計サイト「Our World in Data(データで見る私たちの世界)」によると、この傾向はイギリスとアメリカではさらに顕著です。

この傾向は、若い世代の政治離れを浮き彫りにしており、民主主義のプロセスにおいて彼らの利益が十分に反映されないリスクにつながります。

Share of people in each age group who voted.
若者の投票率向上が課題です。 Image: Our World in Data

統計データ会社であるスタティスタのデータによると、2024年の英国総選挙では全体的に投票率が低下して有権者の60%にとどまり、2001年以来最低の投票率となりました。これは、1950年の総選挙で記録された83.9%という投票率と比べて極めて低い数字です。

Voter turnout in general elections and in the Brexit referendum in the United Kingdom from 1918 to 2024.
英国の投票率は全体的に低下しています。

人々の投票意欲に影響を与えるその他の要因には、識字率、富裕度、開発などがあります。

これらのグラフは、現代の選挙が直面している独特の課題を浮き彫りにしています。以前は投票の仕組みに懸念が集中しがちでしたが、それがより構造的な課題に変わりつつあります。

そのため、民主制度を守るためのホリスティック(全体論的)な戦略と、より広範な環境に着目した包括的アプローチが求められています。政策立案者と市民は、世界各国の民主制度を強化し、保護するための戦略を策定するために、基盤となる強みと対処すべき弱点を認識する必要があるのです。

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