自然と生物多様性

2024パリ五輪、史上初の「使い捨てプラスチックのない大会」目指す

5月26日、フランス・パリのイダルゴ市長が、2024年に開催されるパリ五輪を、史上初の使い捨てプラスチックのない大会にすることを発表した。

Image: Unsplash/Chris Karidis

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5月26日、フランス・パリのイダルゴ市長が、2024年に開催されるパリ五輪を、史上初の使い捨てプラスチックのない大会にすることを発表した。

市内競技会場へはペットボトルの持ち込みは原則禁止となり、マラソン競技の給水所では、再利用可能なカップを使用する計画だ。

オリンピック公式スポンサーのコカ・コーラ社は、再利用可能なガラス瓶や、200を超えるソーダファウンテンを設置して飲料の提供をする。

パリ五輪をよりサステナブルにする工夫

イダルゴ市長は、オリンピックの誘致の時から「環境に優しい大会にするか、そもそもパリでは開催しないか」の2択を宣言し、史上最もサステナブルな大会の開催を目指してきた。

市長の意を受け継いだパリオリンピック組織委員会は、気候および環境戦略を策定し、専門家で構成された「エコロジカルトランスフォーメーション委員会」を結成。全プロジェクト実施の助言および監視を行うこの委員会の議長は、生物多様性の専門家であるソルボンヌ大学のジル・ブフ教授が務めている。

パリオリンピックのサステナブルな取り組みとして、競技施設の95%を既存または仮設の建物でまかない、100%再生可能エネルギー使用、廃棄物ゼロ、ゼロエミッション車の走行などが計画されている。

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また、パリ協定に沿うため「CO2排出量を2012年開催のロンドンオリンピックと比較して半分にする」という目標を掲げている。

目標実現のため、すべての関係者が炭素排出量を削減できるよう、カーボンフットプリントを削減するのを助けるアプリ「Climate Coach」を開発し、オリンピック施設内の持続可能な食料使用率100%、スポーツイベント用にカスタマイズした「カーボンフットプリント計算機」を作成し提供するなどの取り組みを実施している。

交通政策による炭素削減も進められ、観客の100%が公共交通機関、自転車、徒歩で会場に移動を目指す。

オリンピック会場周辺に大量に専用駐輪場を設置し、55キロメートルの競技場間を結ぶ新たなサイクリングロードを敷設、大会チケット保有者にはパリの交通機関を無料で利用可能にし、地方競技場へのアクセスのため鉄道網の増強などが進められている。

それでも回避できない炭素排出量は、森林や海洋を保護・回復するプロジェクトですべてオフセットする予定だ。

さらに、気候変動への対応だけでなく、生物多様性や市民の生活の質の向上など、その他の利益をももたらす地域プロジェクトの開発に貢献することで、排出される炭素量以上のオフセットを行うとしている。

特に、イダルゴ市長は市内の緑化に力を入れており、再選を果たした2020年からこれまでの間に63,707本の植樹が実施され、任期終了年の2026年末までに17万本を目指している。

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使い捨てプラスチックへの対策が進むフランス

フランスは、世界でもいち早く廃棄物対策法を制定し、その一環として、2020年1月からプラスチック製使い捨て容器・カトラリーを禁止する法律を施行している。2023年1月からは、飲食店での使い捨て容器による食事や飲料の提供も禁止となった。

パリで生活する筆者も、日々フランスの脱プラスチックの先駆的な施策の効果を感じている。プラスチック製の使い捨て容器やカトラリーは、ほぼどの飲食店でも見ることはなく、お店でも売られていない。

ペットボトル飲料は売られているものの、メーカーは「再生プラスチック利用」の表示を商品名よりも大きく記載したり、小売店ではペットボトル回収機を設置したりと、提供側の努力も浸透してきている。

(左)「Je suis 100% recyclee( 私は100%リサイクルです)」と表示されたボトル (右)販売されている簡易カトラリーは、木製または洗って再度使えるプラスチックのみ
(左)「Je suis 100% recyclee( 私は100%リサイクルです)」と表示されたボトル (右)販売されている簡易カトラリーは、木製または洗って再度使えるプラスチックのみ

法的拘束力のあるプラスチック規制。世界のお手本を目指して

そんなパリでは、5月29日から6月2日までの間「プラスチック汚染に関する法的拘束力のある国際文書(プラスチック条約)の策定に向けた第2回政府間交渉委員会(INC)」が開催された。

この会合には、約170カ国の国連加盟国、関係国際機関、NGO等約1700名が参加し、日本からは、外務省、経済産業省及び環境省から構成される政府代表団が出席した。INCは、2024年末までにプラスチック条約の締結を目指し、計5回の会合を行う。

冒頭のイダルゴ市長の発表は、INCに先立って開催された関連会合の「プラスチック汚染に対する国際市長フォーラム」で語られたものだ。「プラスチック汚染の被害には国境がありません。気候変動や環境破壊、食糧危機にも同時に取り組まなければ、プラスチック汚染に打ち勝つことはできないのです。」

イダルゴ市長は、スピーチでプラスチック問題に世界一丸で取り組む必要性を強調している。

国連環境計画(UNEP)の分析では、各国が既存の技術を使用し、主要な政策変更を行うことで、2040年までにプラスチック汚染を80%削減できるとし報告している。国家間のプラスチック条約が早期に締結され、世界で足並みをそろえてこの問題に取り組むことが望まれる。

パリが、使い捨てプラスチックのない史上初の五輪を成功させることができれば、世界のあらゆるイベントの手本となることだろう。

チケットがとれたラッキーな方は、競技場へのペットボトルの持ち込みは禁止ということをお忘れなく。

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