公正、多様性、包摂性

女性が活躍できる職場環境に、エクイティベースのソリューションが重要な理由

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エクイティに重点を置いたソリューションは、女性が活躍できる職場づくりに効果が期待できます。

エクイティに重点を置いたソリューションは、女性が活躍できる職場づくりに効果が期待できます。 Image: Unsplash/ThisisEngineering RAEng

Miao Sun
Lead, Community Engagement, YGL Foundation, World Economic Forum
  • 職場における女性のウェルビーイング向上には、エクイティに重点を置いたマインドセットを育み、それぞれの従業員の異なる状況やニーズに応えることが必要です。
  • エクイティベースのソリューションが社会的・経済的な価値を創出するには、システムの変革も欠かせません。
  • 競争力のある女性が離職してしまうのを防ぐには、エクイティベースのソリューションの導入がポイントになります。

世界経済フォーラムの「グローバル・ジェンダー・ギャップ・レポート2022(Global Gender Gap Report 2022)」では、リーダー職への女性登用の実態について、ジェンダー・パリティ(ジェンダー公正)に近い水準にあるのは、非政府組織・会員組織(47%)や教育(46%)、パーソナルサービス・福祉(45%)など、一部の業種に限られていることが明らかになりました。また、リーダー職への女性登用率が既に高かった業種では、概してその割合がさらに高まったという結果も出ています。

リーダー職への女性登用の実態を示すこのデータは、女性が正当に評価される職場づくりが急務であることを示す指標の一つにすぎません。職場のイクオリティ(平等性)を高めればある程度は改善されるかもしれませんが、それだけでは到底十分とはいえません。そこで必要となるのが、エクイティ(公平性)です。職場のエクイティとは、アウトプットではなくインプットに焦点を当てるもので、イクオリティとは異なります。どの従業員も平等に扱おうとするのがイクオリティ。これに対し、エクイティとは従業員一人ひとりの固有のニーズに寄り添おうとするものです。

現代の女性は「行動で示す」考え方で企業を選ぶ傾向が強いことを雇用主は認識するようになりました。従業員のウェルビーイング(幸福)の向上にあまり積極的ではない企業は、女性従業員から見切りをつけられてしまいます。その一方で、テレワークやハイブリッドワークといったフレキシブルな働き方を提供する企業は、女性から好まれます。

これらの条件を踏まえて女性にアピールできる職場環境を整えていけば、将来的な雇用の柔軟性の確保につながるでしょう。雇用主側はもはや重大な決断を下す立場にはありません。これから求められるのは、エクイティに重点を置いたソリューションを日々の経営の中に取り入れること、つまりデータ収集とリサーチを通じて従業員一人ひとりのニーズを把握することなのです。

それに加えて、システムの変革も欠かせません。最近は女性従業員に対して個々のスキルセットを磨く機会を提供する取り組みを進める企業が増えています。女性の登用が特に進んでいない分野として、STEM(科学、技術、工学、数学)が挙げられますが、その理由はひとえに旧態依然としたスキル習得の慣習が残されていることにあります。エクイティという視点を通してその課題に対処することで、男女を問わずすべての従業員の可能性を引き出し、経済的にも社会的にも価値を創出することが可能になります。

働く女性の多くが、ジェンダーだけでなく人種、性的指向、障がいなどの個人のアイデンティティの側面を理由に、職場でバイアスを経験しています。それは多層的なマイクロアグレッション(無意識の差別的な言動)として女性を苦しめ、キャリアアップを実現しにくい状態に追い込んでいます。エクイティベースのソリューションを職場に取り入れれば、女性はもちろん、マイノリティの職業上の不平等をも是正していくことができます。


世界経済フォーラムでは、国際女性デー2023に際し、どのようにしてエクイティに重点を置いたソリューションを職場に導入して女性のキャリア開発を支援していくべきかについて、4名のヤング・グローバル・リーダーに話を聞きました。

「女性従業員を評価する際は、仕事の能力を正しく見極めています」

伊藤忠商事株式会社常勤監査役、茅野みつる氏

茅野みつる氏(伊藤忠商事株式会社常勤監査役)

伊藤忠商事株式会社では、全従業員のワークスタイルとマインドセットを大幅に変革する取り組みを進めています。その一つが「夜は早く帰り、朝早く出社する」という意識改革です。早朝勤務に対しては、深夜勤務と同様に150%の割増賃金を支給しているほか、朝食を無料で提供しています。もちろん、退社は早ければ15時でも構いません。このように、昔ながらの日本のサラリーマンのワークスタイルから脱却することで、すべての従業員(特に子どもを持つ女性)が、個々の都合に合わせて日々のスケジュールを決めることができ、ワークライフバランスや効率的な働き方が実現できるようになりました。女性従業員を評価する際は、仕事の能力を正しく見極めています。勤務した時間(または勤務しなかった時間)で判断することはありません。

「男女格差の壁を打ち破るために、働く女性をエンパワーする」

カリバー 創業者兼最高経営責任者、ポール・リベラ氏

ポール・リベラ氏(カリバー 創業者兼最高経営責任者)

エクイティベースのソリューションとして私が推奨するのは、フィリピンだけでなく世界中で活動を展開しているFTWです。FTWは、女性を対象にデータ科学と技術に関するトレーニングを無償で提供する非営利団体です。世界レベルのトレーニングを開発・提供することで、女性にテクノロジー業界でキャリア開発できる機会を与え、データ科学者やアナリスト、データエンジニアへの道が拓けるように支援しています。男女格差の壁を打ち破るために働く女性をエンパワーするその取り組みは、とても素晴らしいと思います。これらの職業は、世界中で引く手あまたです。世界有数の革新企業で職を得るのに不可欠なスキルを習得したいと考えている女性に対してトレーニングを提供することで、重要なニーズを満たそうとしている。それがFTWなのです。

「エクイティというレンズを通せば、社会的な差異という取り組むべき課題に光を当てることができます」

アクアレス 創業者兼最高経営責任者、ミア・ペルドモ

ミア・ペルドモ氏(アクアレス 創業者兼最高経営責任者)

エクイティというレンズを通せば、社会的な差異という取り組むべき課題に光を当てることができ、個々の従業員が公正に扱われる職場づくりにつながると私たちは考えています。そのためのベストの方法とは、企業側が想定するニーズが全ての従業員のニーズであると思い込むのではなく、企業内に存在するさまざまな社会的グループやアイデンティティに関するデータと、それらのグループやアイデンティティ固有のニーズに関する情報を集めることです。その取り組みに非常に効果的なのが、アクアレスが考案したPARランキングです。PARランキングは、ラテンアメリカにある企業のジェンダーとダイバーシティ(多様性)に関する方針と慣行を評価する技術ツールです。このツールを活用すれば、企業は目に見えない課題について対策を講じると同時に、古い慣習の打破を試みているという評価を高めることができます。

「必要なのは自己アイデンティティを高めること」

中国科学技術部・中国科学技術交流センター 調査調整課長兼教授、ジュー・シャオスアン氏

ジュー・シャオスアン氏(中国科学技術部・中国科学技術交流センター 調査調整課長兼教授)

専門化された社会の複雑な一構成員として、女性は内なるモチベーションと外的要因とのバランスをうまくとりながら、家族の一員としての目標と社会の一員としての目標を最大限両立させることが求められます。さもないと、高評価を獲得して家族とキャリアの両方で目標を達成することは叶わないのです。困難に立ち向かうキャリア志向の女性に必要なのは自己アイデンティティを高めることでしょう。それによってのみ、内面のバランスを保ち、心身ともに安らぐことができるのではないかと思います。

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