公正、多様性、包摂性

流行語大賞から振り返る2022年の日本

流行語大賞に選ばれた言葉から、今年、日本が直面した課題を見ることができます。

流行語大賞に選ばれた言葉から、今年、日本が直面した課題を見ることができます。 Image: Unsplash/Takashi Miyazaki

Naoko Kutty
Writer, Forum Agenda
Naoko Tochibayashi
Communications Lead, Japan, World Economic Forum
  • 今年の「新語・流行語大賞」トップ10が発表されました。
  • ランクインした3つの言葉「てまえどり」、「悪い円安」、「国葬儀」の背景にある、日本社会の動きを振り返ります。
  • 2023年は、日本が世界の国々との協力体制を強化し、課題解決に向けた駒を進め、経済と社会に明るい兆しを与える言葉が広く浸透する一年になることが期待されます。

年の瀬も迫り、今年を振り返る話題で溢れる時期を迎える中、2022年の「新語・流行語大賞」のトップ10が発表されました。一年の間に日本で話題になった出来事や発言、流行などの中から、その年の世相を表す言葉を選び、その言葉の発生に深く関わった人物や団体を顕彰するこの賞。今年のトップ10に選ばれた言葉のいくつかに注目してみましょう。

食品ロス対策「てまえどり」

食品を買ってすぐに食べる場合は、販売期限の迫った商品を積極的に選ぶ行動を指す「てまえどり」。2021年6月から、農林水産省が地方自治体や事業者団体と連携して行っているフードロスを削減する取り組みにより、この言葉が認知されるようになりました。

スーパーやコンビニでは、一般的に賞味期限が近いものから順に手前から奥へ陳列されている食料品の商品棚。「より新しい商品の方がよい」という価値判断と、賞味期限が先のものほど奥に並んでいるという経験則から、つい棚の奥の商品に手を伸ばして購入することは少なくないでしょう。「てまえどり」キャンペーンは、日頃の食料品の買い物で、消費者に手前にある商品、賞味期限の迫った商品を積極的に選び、賞味期限が過ぎて廃棄されるフードロスを削減する購買行動を促しています。

農林水産省の発表によると、日本における2020年度のフードロス量は522万トン。前年度より48万トン減少し、フードロス量の年間推計が開始された2012年度移行最小となりました。日本政府は、2000年度の時点で年間980万トンであったフードロスを、2030年度までに半減させることを目標に掲げ、取り組みを進めています。

これから会食をする機会が増える年末年始に向けて、「てまえどり」に加えて「食べきり」の言葉も広く浸透させていきたいと、野村哲郎農林水産大臣はキャンペーンへの協力を呼びかけています。

「悪い円安」

米ドル高・円安が記録的なペースで展開した2022年。急激な円安を背景に、長引く新型コロナウイルスの感染拡大による供給制約や、ウクライナ情勢の緊迫化などの影響が重なり、食料品、日用品、電気、ガスなどあらゆる分野で価格が高騰。その傾向は続いています。

過去最大の貿易赤字と、物価が上がらない国と言われている日本における値上げラッシュ。これらが日本経済の転換点となった2022年を言い表す言葉として「悪い円安」が世間の注目を浴びることになりました。

帝国データバンクの調査によると、2022年の値上げ品目累計は2万822品目、平均値上げ率は14%に達しました。みずほリサーチ&テクノロジーズのレポートは、2人以上の世帯における2022年度の1年分の家計の支出は、前年度に比べ9万6,000円増加したこと明らかにしました。食料品やエネルギーを中心とした生活必需品の値上げ幅が大きいために、これらへの支出割合が高い低所得世帯(年収300万円未満)が、とりわけ深刻な打撃を受けています。同レポートは、2023年度も家計負担が約4万円増加すると見込んでいます。

「国葬儀」

参院選の応援演説中に凶弾に倒れた安倍晋三元首相の「国葬儀」が、9月27日に行われました。

国葬を定めた法律である「国葬令」は、1947年に失効しており、現在の日本には国葬の根拠法が存在しません。そのような中、政府は、戦前の国葬ではなく、内閣府が執り行う国の儀式「国葬儀」として、国家元首ではない安倍元首相の葬儀を執り行うことを閣議決定しました。

明確な規定や基準がない中で、国会の審議を経ずに実施が決定されたこと、実施の理由や意義、予算の妥当性などに対する政府の説明不足などから、世論調査では回答者の5割以上が否定的な意見を持っていることが明らかになるなど、国葬儀への賛否が議論となり、各地で反対する人たちのデモが数百人規模で行われました。

2023年の見通し

エネルギー配給、食料安全保障、気候変動、インフレなど、複雑に相互作用する課題を引き続き抱えたまま、2023年も、不確実性に満ちた一年となることが予想されるでしょう。そうした中、日本が議長国を務めるG7広島サミットをはじめ、2023年もさまざまなイベントが予定されています。日本が、世界の国々との協力体制を強化し、課題解決に向けた駒を進め、経済と社会に明るい兆しを与える言葉が広く浸透する一年になることが期待されます。

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