日本がジェンダーギャップからより包括的な社会を育むには?
日本がジェンダー平等を達成するまでにはまだ長い道のりがあります。 Image: Freepik.com
- 最新のジェンダー・ギャップ指数では、日本は再びG7諸国の中で最下位となりました。
- 政策分野では一部進展が見られ、また社会は男女の役割に関わる考え方を見直し始めています。
- 官民連携の取り組みが、男女共同参画を加速させていますが、さらなる取り組みが必要です。
多様性はイノベーションの源泉
ダイバーシティは、もちろん男女平等のみを意味とするものだけではありません。一方で、女性は少数派の中で最大のグループであり、女性が活躍できないということは、その企業や組織に少数派を登用し多様性を深める能力が乏しいことを意味します。
世界経済フォーラムによる最新のジェンダー・ギャップ指数では、日本は再びG7諸国の中で最下位となりました。これは、女性だけでなく、他のマイノリティグループも取り残されていることを明確に示すものです。
多様性はイノベーションの源泉であり、特に経済成長率の低い日本にとっては、国の成長に欠かすことのできない要素です。日本でも、男女共同参画の意識が高まり、ようやくオープンな議論になりつつあるように感じます。世論も男女平等を後押ししているようで、性別にとらわれない考え方が浸透し、ほんの数年前なら笑って見過ごされたような行動や言動を見直す動きが出てきているようです。
東京オリンピックを前に、開閉会式の演出の統括だったクリエイティブ・ディレクターが、ある女性タレントの容姿を侮辱するような案を伝えていたとして退任を余儀なくされました。さらに、政治や経済の分野でも、徐々に女性がリーダーシップを発揮するようになってきています。昨春、経団連は、75年の歴史上初めて女性の副会長にディー・エヌ・エーの創業者であり会長の南場智子氏を任命しました。
政府の政策面でも、男性の育児休暇取得を促進するなど、進展が見られます。2022年6月、岸田内閣のもとまとめられた、「経済財政運営と改革の基本方針2022」(骨太の方針)、「新しい資本主義のグランドデザインおよび実行計画」では、人への投資が大きな焦点になることが示唆されています。賃上げや能力開発の推進と並んで、「多様性の尊重と選択の柔軟性」が掲げられ、性別に関係なく働ける環境づくりや柔軟性の確保が求められています。最も注目されるのは、男女間の賃金差の開示を企業に義務付けること。また、より多くの女性の雇用の制約となっている社会保障制度や税制を、実態に即して見直すべきと言及しているのです。
このように 政策・制度面、特に女性の雇用促進の観点からみると、今後の男女共同参画の環境は一定の改善が期待されます。
そして少し前と比較すると、日本における男女共同参画に関する問題意識の浸透、課題の明確化、基本方針における手当や対策が、ある程度進んできたと言えるでしょう。
女性の社会進出を阻むもの
一方で、日本では制度面での改善はあるものの、社内の雰囲気から男性が育児休暇を取ることをためらう傾向があり、家庭での家事分担も女性に偏っているため、結果的に女性の社会進出を阻んでいることも事実です。
男女共同参画の動きが加速するか、それとも「男女共同参画」があまり改善されないまま一過性の流行語になってしまうかは、政府が政策的に主導するだけでなく、民間企業がどう対応するか、個人の意識や行動がどう変わるか、変わることができるかどうかにかかっているのではないでしょうか。
「新しい資本主義のグランドデザイン」の発表と同時期に、「女性版骨太の方針2022」も発表され、女性の活躍と男女平等の観点から重点課題が絞られています。ここでは、昭和の時代に形成された諸制度、男女間の賃金格差などの労働慣行、固定的な性別役割分担意識などの構造的問題が指摘され、女性の経済的自立や、男性が家庭や地域社会で積極的な役割を果たすことについても触れています。この中でも指摘されているように、男女共同参画は、ある特別な救済策で解決できるものではなく、個人の意識を含め、構造的な問題を一つずつ解明し、解決していかなければ達成できないことがわかります。
ダイバーシティーを取り込む力は、性別に限らず、国籍、年齢、人種といった多様性の要素をさらに確実なものとし、社会全体の機運の醸成、オープンな議論、一人ひとりの意識と行動の変化をさらに生み出すことでしょう。
そうした中、男女共同参画の実現には、政府、民間企業、市民社会が一体となって取り組む必要がありますが、特に若い世代が社会問題に関心を持ち、社会起業家として活躍する事例が見られるのは心強いことです。
世界経済フォーラムでは、日本政府(内閣府男女共同参画局)および企業と協力し、特に経済分野における男女共同参画を加速させる「ジェンダー・ギャップ解消・アクセラレーター」イニシアティブを立ち上げています。資本主義のあり方が見直されている今、官民一体となって社会的課題に取り組む事例として、ポジティブな変化の一翼を担えればと願っています。
政策や制度の枠組みは整いつつあります。官民協力は、これらの枠組みを活用して、ジェンダーギャップを埋めるだけでなく、より包括的な社会の構築に向けた変化を起こすために不可欠なのです。
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