経済成長

世界経済を加速、強化するために

世界経済フォーラムのボルゲ・ブレンデ総裁は、ポスト・パンデミックにおける世界経済は、公平、強靭で、持続可能でなければならないと論じました。

世界経済フォーラムのボルゲ・ブレンデ総裁は、ポスト・パンデミックにおける世界経済は、公平、強靭で、持続可能でなければならないと論じました。 Image: REUTERS

Børge Brende
President and CEO, World Economic Forum
  • インフレと経済の失速は世界経済の脅威となっています。
  • しかし今こそ、レジリエント(強靭)かつ持続可能な世界経済の礎を築くチャンスなのです。
  • 世界経済フォーラムのボルゲ・ブレンデ総裁は、このビジョンの実現には、世界全体の協力が不可欠であると強調しました。

世界経済が強い逆風にさらされている今こそ、リーダーたちはこれを好機だと捉えるべきです。短期的に成長を加速させるだけでなく、数年先に向けて、いっそう強靭かつ持続可能な経済の礎を築くことができるからです。

私たちが厳しい経済情勢にあることは明らかです。国際通貨基金(IMF)は1月、世界経済の見通しを発表し、世界経済成長率は2021年の5.9%から2022年には4.4%まで減速する見込みであることを示しました。これは、2021年10月の見通しから0.5%ポイントの引き下げとなります。

この減速と並行して、多くのエコノミストは金利の上昇により投資が減少し、持続的なインフレにより経済成長は部分的に相殺されると予測。さらに、IMFは、低所得国の60%が債務苦境の状態にあるか、そうなる危険性が高いと指摘しています

これらが大きな課題であることは間違いありませんが、その先には可能性も広がっているのです。

リーダーたちが経済活性化のための政策を打ち出すだけではなく、短・中・長期的な視点で共通の優先課題に取り組むことで、現在と将来の経済の健全性には不可欠とされる、自信とレジリエンス(強靭性)を高める好機となります。

包摂的な成長

目下の急務は、世界の経済成長をこれまで以上に包摂的なものにすること。先進国の多くは経済成長を見通しています。例えば、中国の昨年の輸出額は前年に比べ6,750億ドル増(26%増)と急伸しました。しかし大半の新興国や開発途上国では、回復するのに今後数年を要するというリスクを未だに負っています。このような不均衡をこのまま放置すれば、世界経済だけではなく、人道的にも深刻な結果を招くことになりかねません。

持続可能な方法で、財源不足の国々へ投資する取り組みも、さらなる公平な回復を進める方策の一つです。

現在は幸いにも、海外直接投資(Foreign Direct Investment, FDI)がようやく健全化の兆しを見せており、世界の海外直接投資額は、新型コロナウイルス感染拡大前の水準を上回り、2021年は前年比77%となりました。実際、中国の対内直接投資額は前年比20%増の1,790億ドルという記録的な数字に。それでも、新型コロナウイルスの新変異株や燃料価格高騰などの要因が直接投資を阻害するため、世界の海外直接投資は依然として不安定です。

デジタルトランスフォーメーション

中期的には、世界経済フォーラムが「第四次産業革命」と呼ぶ技術の急速な進歩と拡大が進む中、デジタルトランスフォーメーションに力を入れることが必要です。今後の5年~10年は、それぞれの企業がテクノロジーとイノベーションを自らのDNAの一部として根付かせていかなければなりません。実際に今後10年で創出される新しい価値のおよそ70%は、デジタル技術を活用するビジネスモデルに基づくものになると予想されます。昨今の半導体不足と、それに伴う米国、欧州、中国でのチップ製造への注力は、急速にデジタルトランスフォーメーションが進行していることの現れと言えます。

この世界経済のデジタル化を背景に、中国の第14次5カ年計画では、その「デジタル経済中核産業」の付加価値額が国内総生産(GDP)に占める割合を、2020年の7.8%から2025年までには10%へ拡大させることを定めています

デジタル技術の重要性が高まったとは言え、全世界人口の3分の1超に相当する、29億人が一度もインターネットを使用したことがないと推定されています。この格差解消のため、昨年、世界経済フォーラムは大手テクノロジー企業、金融機関、政府機関と協力して、「エジソン・アライアンス(EDISON Alliance)」を立ち上げました。同アライアンスは、2025年までに、すべての人が安価にデジタル機器へアクセスできるようにすることを目指しています。

グリーントランジション

長期的には、気候変動が私たちの生涯でもっとも重要な課題であるため、グリーン化に取り組まなければなりません。

いくつかの試算によると、もし脱炭素化に取り組まない場合、世界経済は今後30年で最大18%縮小するという未曾有の事態に直面するおそれがあります。ただしこれには、生物多様性の消失や人命の損失など、地球が直面しかねない惨状は含まれていないのです。

2050年までに温室効果ガス排出量の実質ゼロを達成するには、企業や国がエネルギーミックスを転換し、効率を高め、新しいゼロカーボン対策に投資するなど、私たちの経済を根本的に変革しなければなりません。一方でグリーントランジションは、数百万人の雇用と何兆ドルもの資金を世界経済にもたらします。COP26において、世界経済フォーラムと米国のジョン・ケリー気候問題担当大統領特使が共同で立ち上げた、30社の大手企業グループで構成される「ファースト・ムーバーズ・コアリション(First Movers Coalition)」は、低炭素の新技術に対する需要を喚起することで、グリーン経済の実現に貢献しています。

より公平で、よりデジタルで、よりグリーンな世界経済という私たちの優先課題はすべて、あまりにも大規模かつ複雑で、各国が相互に依存しているため、一企業や一国だけで対処できるものではありません。世界全体の協力が必要です。だからこそ、世界中が陥っている「繁栄は他者の犠牲があって初めて成り立つ」というゼロサム思考から、脱却しなければならないのです。これは2022年1月に開催された世界経済フォーラムのダボス・アジェンダで、「人類が進むべき正しい道とは、平和的発展と、協力によって誰もが損をしないことである」と述べた中国の習近平国家主席の発言と呼応する考えです。

この記事は、中国環球電視網(China Global Television Network, CGTN)に掲載された記事からの転載です

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