第四次産業革命

第四次産業革命のテクノロジーで、パンデミックの危機を乗り越えた企業とは

Companies that had adopted fourth industrial revolution technologies were able to successfully navigate the COVID-19 pandemic

第四次産業革命のテクノロジーを取り入れた企業は、パンデミックの危機を無事に乗り切ることができた Image: Raphael Koh on Unsplash

Amogh Umbarkar
Vice-President, SAP Product Engineering, SAP
Nicola Serafin
Chief Operating & Technology Officer, De’ Longhi Group
Francisco Betti
Head, Global Industries Team; Member of the Executive Committee, World Economic Forum
  • 第四次産業革命のテクノロジーは、企業がパンデミックを乗り切るための、レジリエントなサプライチェーンの重要な推進力となったことが明らかになりました。
  • 経済、社会、環境の変化に伴い、危機の規模と頻度が増大する可能性があります。
  • 第四次産業革命のテクノロジーに投資する企業は、経費を削減でき、将来の課題に対処するためのアジリティを高めることができます。

新型コロナウイルスの感染拡大は、製造業とサプライチェーンにかつてないほどの混乱をもたらしました。しかし、パンデミック(世界的大流行)以前からその兆しは見られており、主に、第四次産業革命、気候変動、グローバリゼーションの再構築という幅広い3つのトレンドがそれを後押ししていました。これらの課題が重なり、企業は製造とサプライチェーンのグローバル戦略の見直しを迫られていましたが、新型コロナウイルス感染拡大はその動きをさらに加速させる役割を果たしたのです。

製造業は、短・中期的な対策に取り組むことで、この3つのトレンドに対応してきました。短期的には、事業継続性の確保、従業員の保護、そして事業全体の停滞を最小限に抑えることに集中し、中期的には、多くの企業が地域のサプライチェーンエコシステムの新しいネットワークの構築や、サプライヤーベースの多様化に取り組みました。

第四次産業革命のテクノロジーが、レジリエントなサプライチェーンの重要な推進力となったのは明らかです。第四次産業革命のテクノロジーをすでに採用し始めていた企業は、パンデミックの危機を無事に乗り切ることができた上、レジリエンスの向上を目標とする短・中期対策を講じるための、強固な基盤も備えていました。

2017年、デロンギ社は、よりアジャイルに生産性をアップし、そして高い品質基準を達成するために、デジタル・ソリューションやアナリティクス・ソリューションの採用による第四次産業革命テクノロジーへの投資を決定。SAP社との提携により、同社はイタリアの主要製造施設をデジタルファクトリー化し、品質と応答性を向上させることで、確実に投資収益を得ることができました。

この取り組みにより、サービスレベルの向上、最小発注量の200個から16個への92%低減、リードタイムの28日から5日への82%短縮、労働生産性と資産活用率の31%向上、端材や廃棄物の60%削減、保証サービス問い合わせコール率の33%削減、といった成果が得られました。

デロンギ社は、この新しいテクノロジーが従業員にとって信頼性が高く、迅速な対応ができる資産であることを発見し、遠隔で製造活動をサポートできるようになりました。従業員は、変化の激しい環境に迅速に適応し、短い学習サイクルで新しい知識を習得。技能を向上させることができました。これらはすべてデジタル化のおかげです。

しかしながら、メリットがはっきりしていても、このようなテクノロジーの大規模な導入や展開は、ほとんどの企業にとっては課題となっています。そこで、製造業はフロントランナーから学ぶことができます。

2018年、世界経済フォーラムは、世界で最も先進的な企業、すなわち第4次産業革命のテクノロジーを導入して生産やバリューチェーン全体の変革に成功した企業を集めた「グローバル・ライトハウス・ネットワーク(Global Lighthouse Network)」を立ち上げました。これらのライトハウスは、世界の製造業コミュニティに道を示し、新たなベンチマークを設定しています。生産性、成長、コスト低減、持続可能性のいずれにおいても、多くの場合2桁のインパクト目標を達成し、成功裏にパンデミックを乗り越えることができました。デロンギ社も近頃、グローバル・ライトハウス・ネットワークに加わりました

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サステナビリティについては、多くの企業が消費者と規制機関の双方からの圧力を受け、環境に関する新たな懸念に直面しており、製造業では、二酸化炭素排出量を実質ゼロ(ネットゼロ)にすることが求められています。幸いなことに、温暖化ガス排出量低減、水・資源消費量低減、廃棄物処理の最適化については、第四次産業革命のテクノロジーが重要な役割を果たしています。サステナビリティは、もはや効率を犠牲にする必要がないのです。

デロンギ社の持続可能性への取り組みは、約10年前、化石資源由来エネルギーへの依存度を下げることから始まりました。二酸化炭素排出量を低減し(2020年には2019年に比べ、生産台数当たり7%減)、最高品質・環境基準を導入しただけではなく、食品業界基準(ISO22000)を適用し、完全なデジタルトレーサビリティを実現しています。例えば、組み立て段階でのコーヒーマシンのテストにおいて、コーヒー豆の使用をやめました。その代わりに、現在はAI(人工知能)とレーザー技術を活用して、グラインダーとコーヒーメーカーをセットすることで、年間のコーヒー豆使用量を100トン以上削減しています。

以上のような、幅広く変化していくトレンドを見据えると、危機の規模と頻度は増大する一方であると考えてよいでしょう。これは、新型コロナウイルス感染拡大の対応のために企業が取り入れた変革が、おそらく永続的なものになるであろうことを意味しています。例えば、需要や好みの変化に適応するための応答性の向上、コスト競争力からレジリエンス(強靭性)への移行、自動化と労働力増強の新たなバランス、ネットゼロエミッションへ向けた決定的な動きなどが挙げられます。

企業には、その戦略を見直す以外に選択肢はありません。競争力を維持、または獲得するためには、第四次産業革命のテクノロジーが不可欠です。ここで、パンデミックから得られる教訓の中から、企業が将来への備えを成功させるための3つのポイントをご紹介します。

  • 製造業の未来はテクノロジーと人材にかかっており、第四次産業革命は企業の人材開発を後押しします。
  • 第四次産業革命により、製造と事業運営は、企業を成功と成長に導く基盤となります。
  • 製造システム全体を、継続して適応させていくためには、企業間での共有と協力が必要です。

第四次産業革命のテクノロジーは、デジタルサプライチェーンを実現するための重要な要素です。企業は、より多くの情報を取得し、ホリゾンタルな(水平方向の)ビジネス・プロセスにより深く統合することを可能にする、インテリジェントな製品や資産の開発を進めています。第四次産業革命は、工場を中心としたイニシアチブ(構想戦略)から、全社的な事業戦略へと発展する可能性を秘めています。

世界経済フォーラムは、SAP社をはじめとする企業と緊密に協力して、グローバルなアジェンダを設定し、生産の未来のために新しいパートナーシップを構築しています。

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