森林再生事業は「金のなる木」、アマゾン火災でも注目
火災で燃えたボカ・ド・アクレのジャングル(8月24日、アマゾナス州で撮影)。資源管理の改善と排出ガスの抑制につながる森林再生は、事業としての投資リターンも良好で、アマゾンの森林火災が広がる中、注目を集めている。 Image: ロイター/Bruno Kelly
森林再生は、水や土壌、作物といった資源管理の改善につながる。二酸化炭素が吸収され、そこに蓄えられるようになる。
さらに投資リターンも、エクソンモービル(XOM.N)など温暖化ガス排出量上位100社の大半より優れている。アマゾンで森林火災が広がっているだけに、こうした点は特に注目に値する。
世界資源研究所(WRI)と米国の非営利団体グローバル・インパクト・インベスティング・ネットワーク(GIIN)がそれぞれ行った調査によると、持続可能な森林資本に対するリターンは通常8─18%で、28%に達することもある。持続可能な森林はナッツや果実の収穫、医学研究、ツーリズムなどを通じて利益をもたらす。
リフィニティブの推計では、エクソンモービルの今年の資本利益率(ROC)はそのレンジの下限にとどまる見込み。他の温暖化ガス排出量上位100社のうち、フランスのEDF(EDF.PA)、ドイツのティッセンクルップ(TKAG.DE)、日産自動車(7201.T)など45社のROCは8%以下。過半数は10%を超えず、15%以下が84社だった。
WRIの推計によると、荒廃した森林などの再生に必要な資金の不足額は年間約3000億ドル。Breakingviewsの試算だと、これは排出量上位100社の年間税引き前利益の合計額の40%程度に相当する。化石燃料などの産業が投資の観点のみでビジネスチャンスをものにしようとし、大気中の二酸化炭素の吸収や洪水・土砂崩れの減少といった森林の効用を顧みないケースがある。
森林に目を向ける企業の1つがロイヤル・ダッチ・シェル(RDSa.L)だ。同社は今年初めに森林再生などの取り組みに約3億ドルを支出する計画を公表した。これは魔法のような問題解決を狙ったものではない。ベン・ファン・ブールデン最高経営責任者(CEO)が掲げる、温暖化ガス排出量の少ない電力会社への事業転換に向けた計画の一環だ。
森林への投資が温暖化ガス排出量の多い企業に限定される理由はない。ハイネケン(HEIN.AS)で企業の社会的責任(CSR)を担当する幹部は27日、ストックホルムで開催された「世界水週間」で、森林再生は同社が進める水資源管理計画の一部だと述べた。電力や繊維、食品など他の業界が直接恩恵を受けたり、利益を得るかもしれない。
持続可能な森造りは比較的新しいビジネスのため、土壌の水分吸収量が多すぎる樹種を植えるといった失敗が起きるかもしれない。しかし投資と環境の両面でリターンが得られる見通しがあるのだから、環境汚染を引き起こしている企業もまさに「木には金がなるのだ」と理解するようになるに違いない。
●背景となるニュース
*ブラジルの国立宇宙研究所(INPE)によると、国内の森林火災件数は2010年以降で最多となり、年初から8月29日までの件数が前年同期比76%増となった。アマゾン熱帯雨林の約60%がブラジルにある。
*ストックホルム国際水研究所が主催する「世界水週間」が8月25日から30日までスウェーデンの首都ストックホルムで開催された。今年のテーマは「社会のための水:誰も取り残されない包摂的な社会へ」。
*この記事は、Reutersのコラムを転載したものです。
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