公正、多様性、包摂性

プラスチック汚染の撲滅が、ジェンダー平等の実現につながる理由

What it will take to eradicate plastic pollution?

プラスチック汚染を根絶するためには何が必要か? Image: UNDP Ghana Waste Recovery Platform

Kristin Hughes
Director, Resource Circularity
  • プラスチック汚染の最前線で闘う女性たちがいます。
  • プラスチックのサーキュラー・エコノミーへの移行、そしてグリーンで持続可能な世界への移行は、包摂的かつジェンダー平等に配慮されたプラスチックのバリューチェーンを構築することと密接に関わっています。
  • ジェンダーパリティ(ジェンダー公正)に配慮したプラスチック廃棄物管理セクターを実現するには、廃棄物部門への女性の参加を政策レベルまで引き上げる必要があります。

数十年に渡る、世界的な使い捨てプラスチックへの依存と、プラスチック廃棄物を環境から排除できない状況は、女性や、社会から疎外されたコミュニティに最も大きな打撃を与えてきました

その一方で、女性たちはプラスチック汚染に対しても最前線で闘ってきました。女性たちは、家族やコミュニティのために、持続可能な消費と廃棄に関する決定をしています。プラスチック廃棄物を回収し、リサイクル業者に販売することで、清潔な都市や街づくりに貢献しています。また、組織的な障害が立ちはだかっているにもかかわらず、環境を保護し、社会的に脆弱な立場にある人々を守るために、重要な政策やビジネス上の決定を行っています。

プラスチックのサーキュラー・エコノミーへの移行、そしてグリーンで持続可能な世界への移行は、包摂的かつジェンダー平等に配慮されたプラスチックのバリューチェーンの構築と密接に関わっているという点については、幅広くコンセンサスが得られています。つまり、女性の洞察力と直面している課題を活かして、意思決定の場に女性が確実に参加できるようにするということです。しかし、それは実際にはどのような形になるのでしょうか?

ここでは、グローバル・プラスチック・アクション・パートナーシップに参加する3人の女性リーダー(米国、ガーナ、ベトナム)が、プラスチック汚染を根絶するためには何が必要なのか、そして、なぜ女性のリーダーシップとジェンダー平等がこの取り組みに不可欠なのか、さまざまな視点から意見を述べています。

プラスチック汚染を根絶するためには何が必要か? Image: Our World in Data

1. デューン・アイブス氏

ロンリー・ホウェイル、エクゼクティブ・ディレクター
(米国、市民社会)

貴組織は、消費者や企業の使い捨てプラスチックの利用を減らすため、創造的なキャンペーンに取り組んでいます。このようなキャンペーンを展開する際に、ジェンダーは考慮されていますか?

私たちは常にリサーチから始めます。キャンペーン「水分補給の方法に疑問を」では、世界で年間5,000億本も使用されている使い捨てのペットボトルの削減に重点を置いて取り組みました。市場調査の結果、このキャンペーンのメッセージに最も共感するのは、米国のミレニアル世代の白人とヒスパニック系の母親であることが分かりました。

ロンリー・ホウェイルの立ち上げ以来、意識の向上と行動の変化を目の当たりにし、力強い女性たちの声を反映したクリエイティブなパートナーシップを模索しています。最近の活動で最も注目を集めたのは、アマンダ・ゴーマン氏が作詞・朗読した詩「海に捧げる歌」で、2020年の世界海洋デーを記念して、ロンリー・ホウェイル、アトモス、フューチャーアースが共同で届けました。

私たちのキャンペーンには常に女性が参加していますが、これまでの経験から、男性や男性であると自己認識している人々も、同様に環境への深い配慮を示していることがわかります。例えば、ジェイソン・モモア氏、ラッセル・ウィルソン氏、ヴァン・ジョーンズ氏、ディプロ氏は、父親や夫という立場から環境問題に取り組んでいます。また、ウィン・ワイリー/パティ・ゴニア氏、ダニエル・フランゼーゼ氏、ケンドリック・サンプソン氏、シューテスカット・マルティネス氏など、社会から疎外されたコミュニティと世界に蔓延する不正の相関関係を深く理解している人もいます。

2. リー・ティ・トゥ・トゥイ氏

ビンファスト社会長、ビングループ副会長
(ベトナム、民間企業セクター)

プラスチック廃棄物の管理やサーキュラー・エコノミーの推進において、ベトナムの女性たち、そして貴社はどのような役割を果たしていますか?

固形廃棄物の処理では、発生源での分別が重要です。ベトナムでは、家事の大部分を担っている女性の方が、廃棄物にさらされる機会が多くなります。天然資源・環境省によると、ベトナムの家庭では、ゴミの分別の90%が女性によって行われています。つまり、女性はプラスチック廃棄物の管理において重要な役割を果たし、サーキュラー・エコノミーを促進する力を持っていると言えるでしょう。ビングループでは、女性リーダーによる廃棄物削減キャンペーンを数多く成功させ、健全な環境を構築・保全するためにお客様や地域社会の意識を積極的に高めています。

ベトナム・プラスチック・アクション・パートナーシップの創設メンバーである当社は、持続可能なビジネスを中核に据えています。先頃、環境問題の解決や未来の世代のための公平で持続可能な世界の実現に向けて、人類のための科学研究と技術革新の促進を目指す、ビンフューチャー・プライズを設立しました。

子会社であるビンスマート社は、キャンペーン「プラスチックにNOを」を実施し、再生紙、段ボール、ESDプラスチックトレイ、パレットなど、リサイクル可能な、あるいは環境にやさしいパッケージを使用することで、ビジネスの現場におけるプラスチックの使用を最小限に抑えています。また、ベトナムのホスピタリティ業界をリードするビンパール社は、「ゴーグリーン」プロジェクトを実施。1か月の間に、ネットワーク全体で約1.4トンのプラスチック廃棄物削減に成功しました。

3. アドゥワ・コールマン

ダウ社、アフリカ持続可能性およびアドボカシー担当マネージャー
(ガーナ、民間企業セクター)

ガーナ政府と世界経済フォーラムは、ガーナでプラスチック汚染に取り組むための国家プラットホームを立ち上げました。ダウ社は、このプラットホームの積極的なサポーターであり、立役者です。どのようなビジョンを持ち、ガーナにおける女性のリーダーシップや起業をサポートしていますか?

国のプラットホームに関する私のビジョンは、セクターの政策レベルまで女性の参加を実現し、ガーナのプラスチック廃棄物管理セクターのすべての段階で、ジェンダー・パリティ(ジェンダー公正)を反映させることです。

ガーナのプラスチック廃棄物管理における女性の役割は、決して軽視できません。廃棄物の再生、回収、リサイクルといったプラスチック廃棄物のバリューチェーンのすべてのレベルで女性が活躍しています。しかし、バリューチェーンの上層部に行くほど、女性の参加率は著しく低下します。残念ながら、より収入が多い役職と相関関係にあります。

この分野でステークホルダーが女性のリーダーシップをサポートするには、いくつかの方法があります。廃棄物処理の官民連携の基準として、女性の代表者の数を確保すること。また、廃棄物再生分野で女性に依存している民間企業は、男性と女性のサプライヤーに同一賃金を保証し、女性のためのトレーニングやアップスキリング(技能向上)に重点を置くことです。

そして、この分野で女性が果たす役割について市民の認識を深めることが重要です。この分野で働く女性は、生物学的な役割を果たしていると一般的に捉えられがちですが、それは間違いです。廃棄物処理業に従事する女性は、他の雇用形態と同じレベルの敬意と評価を得る権利があるのです。

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