プラスチックごみ削減の取り組み
この60年間、プラスチックは多くの命を救う素材でしたが、今や世界の大問題と見なされています Image: REUTERS/Carlos Jasso
プラスチックと我々の関係は、新たな時代を迎えています。
かつては奇跡の素材だったプラスチックも、今や社会の最大の敵です。
プラスチックは安価で軽量なことから幅広く利用されるようになり、食品の安全な保存に変革をもたらしたほか、医療分野では多くの命を救い、さらには風力タービンやソーラーパネルの製造にも利用されています。
その結果、以下グラフが示すように、過去60年間で大量のプラスチックごみが発生することになりました。
一方現在では、この傾向を克服するための連携した取り組みがなされており、ガラパゴス諸島、インド、ルワンダ、中国など、50以上の国と地域が、プラスチック汚染を低減するための取り組みを行っています。
国連が新たに発表した報告書『Single-use Plastics: A Roadmap for Sustainability(使い捨てプラスチック製品:持続可能性ロードマップ)』には、各国の取り組みの状況とその成果がまとめられています。
この報告書は、各国政府に効果的な政策策定の基準を提供することを目的としています。
闇取引
実行されている取り組みの大半が、使い捨てプラスチック製品の利用に集中していることが報告書から明らかになっています。
2014年以降、こうした活動が活発になっている事は下図からも明確です。
今月だけでも、インドの首相が2022年までに国内の使い捨てプラスチック製品の使用を廃止することを約束し、デリー都市部では直ちにその使用が禁止されています。
莫大な人口を抱え、世界で最も著しい経済成長を遂げるインドの現状を考慮すると、ナレンドラ・モディ首相によって発表されたこの計画は、これまでに他のどの国が発表した計画よりも野心的だと言えるでしょう。
多くの欧州諸国ではプラスチック製のレジ袋に税金が課されています。一方中国、ケニア、モロッコでは、薄手のレジ袋の使用が禁止されています。
政府による課税や使用の禁止は、適切に計画されて実施された場合、使い捨てプラスチック製品の使い過ぎを抑制するための最も効果的な戦略だと報告書は述べています。
一方、バングラディシュやカメルーンなど一部の国々では、プラスチック製レジ袋の使用禁止は導入されたものの、適切に実施されていません。
そのため、レジ袋の闇取引が行われるようになったり、禁止対象外の厚手のレジ袋が使用されたりしており、環境にさらに悪影響が及ぶ結果になっています。
報告書では、禁止に代わる手段として、官民が連携して自主協定を結び、消費者に自身の行動を適応させるとともに、価格が手頃で環境に配慮した代替製品が発売されるようになるまで時間を与えることが望ましいと述べています。
膨大な仕事
進展が見られる一方で、プラスチック製品の河川や海への大規模な流出を減らすために、さらなる取り組みが必要であると報告書は警告しています。
以下グラフが示すように、2015年に発生した1億4100万トンのプラスチックごみのうち、リサイクルされた割合はわずか14%に過ぎません。
プラスチックごみの問題を解決するために、このリサイクル率を大幅に引き上げる必要があることは明らかです。この取り組みをさらに発展させていくには、企業の革新的技術によって植物由来プラスチックなどの再生可能な素材を容器包装に使用したり、新たな方策を通じてリサイクルを奨励したりすることなどが必要です。
「プラスチックそのものが問題なのではありません。私たちがそれを利用・処理する方法が問題なのです。つまり、この奇跡の素材をもっと賢く利用する責任は私たちにあるのです」と、国連環境計画事務局長のエリック・ソルヘイム氏は述べています。
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