過去の嫌な経験の記憶とストレスが重なると、危険のない状況でも危険を感じやすくなることが研究で示された。
この研究結果は、不安障害やストレス関連障害の中核的な要素である恐怖の般化に光を当てている。
「人間の心は、自己防衛のため、時間をかけて学んだ危険の手がかりを利用します。しかし、特定の状況では、その手がかりを誤って認識することがあります」と、研究の筆頭著者で、テキサス大学オースティン校デル医科大学の精神医学助教であるジョセフ・ダンズムーアは述べる。「私たちの研究は、ストレスの程度と有害な出来事から経過した時間が、この種の過度な般化を促すことを明らかにしました。」
毎年約800万人の成人が影響を受ける心的外傷後ストレス障害(PTSD)は、脅威と安全を区別できなくなることを特徴とする疾患の一つだ。車のバックファイアのような無害な刺激が、トラウマを思い出させるため恐怖を引き起こす。心がこうした引き金をどのように認識し、反応するかを理解すれば、科学者は精神疾患や障害に対するより良い治療法を開発できる。
「この研究結果は、ストレスの多い時期にPTSDの症状が悪化しやすい理由や、戦場でストレスやトラウマを繰り返し経験することがPTSDのリスク上昇につながる可能性を説明するうえで、重要な実験室データを提供しています」と、研究には参加していないものの、トラウマからの回復に取り組む退役軍人を長年支援してきた、デル医科大学の精神医学准教授スザンナ・クリーチは述べる。
「この研究は、そもそもPTSDを予防する方法を理解する一助となり、退役軍人のPTSD治療の成果向上につながる可能性があります。」
研究者らは、ストレスと時間が、否定的な結果に結び付いた手がかりを正しく識別する能力に及ぼす影響を調べた。参加者は2種類の音を聞き、その一方の後に電気ショックを受けた。ショックの強さは参加者が設定し、「非常に不快だが痛くはない」程度とした。
次に研究者らは、2種類の周波数の範囲内で音を鳴らし、参加者の自己申告と、感情的な覚醒を示す皮膚反応のデータから、ショックを予期する程度を測定した。音の範囲を調べる際、参加者の半数には腕を氷水に浸してコルチゾール値を高める処置を行い、残り半数には対照条件として室温の水に腕を浸してもらった。
研究者らは2つのグループで検査を実施した。一方のグループは最初のショックの直後にショック予期検査を受け、もう一方は最初のショックから24時間後に検査を受けた。両グループとも、ショック予期検査の直前にストレスまたは対照条件の導入処置を受けた。
最初のショック直後に検査した場合、ストレスの程度は、参加者のショックへの恐怖や、関連する音を識別する正確さに有意な影響を及ぼさなかった。しかし24時間後に検査した場合、ストレスの程度は参加者の恐怖反応を強め、ショックに関連する音を識別する能力を低下させた。コルチゾール値を上げずに24時間後に検査を受けたグループでは、恐怖反応はわずかに強まっただけで、関連する音を識別する能力も保たれていた。
「ストレスと記憶が、人間の恐怖の般化にどう影響するかは、ほとんど調べられていません」とダンズムーアは述べる。「この研究は、恐怖や心配のパターンに問題を抱える人々を支援するうえで役立つ新たなデータを提供します。」
研究結果は、米国科学アカデミー紀要に掲載された。
ダンズムーアはニューヨーク大学の博士研究員としてこの研究を行った。マギル大学の心理学助教ロス・オットーも、ニューヨーク大学の博士研究員として研究に携わった。


