駅で旧友に会ったとしよう。彼女はあなたの1メートルほど前に立っていて、右手の線路には、ちょうど列車が駅に入ってきたところだ。友人の後ろにはパン屋が見える。私たちは、こうした場面を鮮明な細部まで思い出すことがよくある。しかし、心の中にイメージを形づくることで、具体的にどのように思い出しているのかは、長い間謎のままだった。
多くの研究者は、人生のある出来事を思い出すこと(エピソード記憶)を、元の出来事を再び体験することになぞらえている。この過程が脳内で、脳細胞(ニューロン)一つひとつのレベルでどのように実現されるのかは、まだ明らかでない。今回、私たちの新たな研究がeLifeに掲載され、その仕組みについて一つの仮説を提示した。
脳細胞一つひとつの活動を測定することは可能だ。げっ歯類を使った実験では、動物が環境内の特定の場所にいるときに、常に活動する細胞があることが示されている。この「場所細胞」は、したがって、動物が環境内のどこにいるかを表す。
同様に、部屋の壁などの環境の境界が動物から一定の距離と方向にあるときに活動する脳細胞もある。こうした発見は、脳内で空間的な関係がどのように表現されるかを探る手がかりとなってきた。駅で友人に会うとき、駅に対する自分の位置を表す脳細胞が活動するはずだ。同じように、別の細胞は、友人やパン屋、列車といった「物体」が自分からどの距離、どの方向にあるかを示す。さらに別の細胞は、これらの対象が何であるかを示す。しかし、知覚し、記憶し、さらには人生の出来事を想像するといった心の働きを実現するために、これらの細胞がどのように連携するのかは分かっていない。
より抽象的なレベルでは、友人やパン屋、列車といった要素と、それらの空間的な配置が合わさり、心理学者が「場面」と呼ぶものを形づくる。「場面構成」という言葉は、場面を知覚し、記憶し、さらには想像する際に関わるすべての心的過程を指す。したがって、さまざまな細胞がどのように連携するかを知れば、こうした抽象的な概念を細胞一つひとつのレベルで理解できるようになる。
脳の領域である海馬が記憶にとって重要であることは、以前から知られている。しかし、海馬に損傷のある患者は、まとまりのある空間的な場面を想像することにも困難を抱えると報告されており、空間的な経験の想像と記憶のつながりが示唆されている。その後、脳スキャンによって、新しい経験の想像と記憶の想起では、重なり合う脳領域が活動することが示された。
しかし、脳画像技術で特定できるのは通常、何百万もの細胞を含み、異なる情報を表している可能性のある多数の個別ネットワークから成る脳領域だ。そのため、脳スキャンから細胞ネットワーク一つひとつの振る舞いを知るのは難しい。
記憶のモデル化
私たちの目標は、ニューロン一つひとつのレベルで得られたすべての証拠をまとめ、意味のある要素(例えば駅で会った友人)を含む場面の記銘と想起をモデル化することだった。そのため、多数の空間選択性細胞(場所細胞など)に特定の役割を割り当て、モデル内でシナプス結合を通じて相互につないだ。
空間選択性を持つ脳細胞が記憶に関与するという考えは、以前から提唱されていた。しかし、それらを私たちの経験に結びつけると、興味深い食い違いが見えてきた。空間選択性細胞は、場面の要素をその場面自体に対する位置関係として表す。つまり、空間選択性を持つ脳細胞は、私たち自身の位置と場面内の要素の位置を「世界中心」の座標で符号化する。簡単に言えば、この座標系は方位にたとえられる。列車がパン屋の南東にあるという関係は、私たち自身の位置や向きにかかわらず変わらない。
しかし、場面を知覚するときの直接的な空間経験は「自己中心的」だ。つまり、列車は自分の右側に、友人は自分の前方にいると知覚する。では、場面を記憶するとき、海馬内およびその周辺のニューロンは、どのように環境の境界や物体を世界中心の形式で表現するようになるのだろうか。
場面の配置を世界中心の座標で記憶すれば、関連する情報を一組だけ覚えればよいという利点がある。例えば、列車がパン屋の南東にあるという関係は、自分の向きに左右されない(向いている方向によって、列車は右側にも左側にもなる)。
神経表現の変換
私たちのモデルは、この変換(自己中心から世界中心への変換)が、別の空間選択性ニューロンのネットワークによって行われる可能性を示している。自己中心の基準枠における物体の位置(前方、左、右)を表すニューロンが変換ネットワーク内の細胞を駆動し、それを受けて、世界中心の表現を構成する細胞が活性化する。次に、これらの細胞間の結合が強まることで、記憶が長期貯蔵に書き込まれる。
重要なのは、この変換回路が逆方向にも働くことだ。長期記憶を符号化するニューロンが、自己中心の座標で物体の位置を表していた細胞を再活性化できる。言い換えれば、元の出来事を後になって再び体験できるということだ。したがって、この記憶モデルはイメージの一形態を実現する。元の出来事が起きたときに知覚によって活動していた細胞が、後に記憶から再活性化されるのだ。重要なのは、再構成される内容が、想像上の向きによって正確に決まることだ。変換回路が、列車が右側ではなく左側にあることを表す細胞を活性化すれば、私たちは北ではなく南を向いていると想像することになる。
このモデルを使うことで、人間とげっ歯類の両方における脳損傷をシミュレーションし、健忘症のさまざまな側面を調べることができた。例えば、変換回路に損傷があると、記憶を思い出せなくなる可能性がある。興味深いことに、私たちのモデルによれば、記憶自体は実際には海馬内およびその周辺に残っているが、本人はその心的イメージを再構成できない。
アルツハイマー病など特定の疾患をシミュレーションするにはまだ早いものの、このモデルは、異なる機能を持つ複数の脳領域にまたがり、さまざまな空間選択性細胞を含むびまん性の脳損傷が、認知にどう影響するかを推測するための有力な出発点となる可能性がある。



