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世界で認知症のある5,700万人のうち、60~70%がアルツハイマー病だと考えられています。
AIによる診断から新薬まで、この病気との闘いにおける近年の画期的な進展をいくつか紹介します。
フォーラムのダボス・アルツハイマー共同イニシアチブは、世界経済に年間1.3兆ドルの損失をもたらすこの病気に対し、有望な解決策の開発と規模拡大を続けています。
世界で認知症のある5,700万人のうち、60~70%がアルツハイマー病だと考えられています。
認知症の最も一般的な形態であるアルツハイマー病は、記憶力や思考力が徐々に損なわれていく脳の疾患です。
米国では、死因の第6位です。生活習慣の改善や薬で症状を和らげることはできますが、現在のところ治療法はありません。
認知症のある人の数は2050年までに1億5,000万人に増えると予想されており、この深刻で生活に大きな影響を及ぼす病気への解決策を見つける必要性が高まっています。
しかし近年、特にアルツハイマー病をめぐる画期的な発見が相次ぎ、希望が生まれています。そのうち9つを紹介します。
ADHDとの関連
2025年の研究では、ADHDのある人の脳の特徴と「アルツハイマー病などの加齢に関連する認知症」との関連の可能性が見つかりました。ジュネーブ大学の研究者らは、MRIによる脳画像検査と血液検査を組み合わせ、ADHDのある成人32人と、ADHDのない成人29人(いずれも25~45歳)を比較しました。
その結果、ADHDのある成人では脳の特定領域の鉄分が多く、血液中のニューロフィラメント濃度も高いことが分かりました。どちらも認知症やアルツハイマー病の指標です。小規模な症例研究ではありますが、ADHDのある人の脳内の鉄分を減らすことで、将来的にアルツハイマー病などの認知症を発症する可能性を下げられるかどうか、今後の研究につながる知見です。
更年期との関連
男性より女性のほうが認知症を発症しやすいことは以前から知られており、アルツハイマー病の場合、患者の3分の2は女性です。その理由については、今も議論が続いています。
近年の研究では、更年期が一因となる可能性が示されています。閉経移行期および閉経後の女性の約3分の2が記憶の問題を経験すると、Nature Medicineは報じています。この時期のエストロゲン濃度の低下は脳の代謝に影響する可能性があり、科学者のロベルタ・ブリントン氏によると、女性の脳が「自らの組織を消費し始める」と表現する研究者もいます。こうした知見は、英国で約12万5,000人の女性を対象に行われた研究でも裏付けられました。同研究は、更年期によって記憶や感情に関わる灰白質が減少するだけでなく、ホルモン補充療法(HRT)もこの減少を防ぐようには見えなかったと結論づけています。
しかし、米国の研究を含む別の研究では異なる結果が示されました。HRTを受けていない更年期の女性では、「シナプス機能障害」と「タウの増加」(脳内の有害なタンパク質)がより多く見られたのです。研究者らは、「ホルモン要因とシナプスの健康の両方に対処する」介入が、女性のアルツハイマー病の発症を食い止める助けになる可能性を指摘しています。
一方、世界経済フォーラムの報告書女性の健康への投資見通しによると、更年期のように女性に多い健康課題への近年の研究資金は、全体の1%未満でした。この格差の解消は公衆衛生上の急務になっていると、報告書は述べています。
画期的な新薬
昨年、アルツハイマー病を対象とする初の薬が市場に登場しました。ドナネマブとレカネマブは、どちらも脳内の有害なタンパク質を阻害し、病状の進行を約30%遅らせることができますと、ガーディアンは報じています。アルツハイマー病協会によると、早期に投与すれば、これらの薬は病気の進行を60%遅らせる可能性があります。しかし、別の研究ではより慎重な結果が示されました。英国で行われたレカネマブの治験では、18点満点の尺度で患者の改善はわずか0.45点でした。さらに最近、コクラン共同計画は、薬によって進行は遅くなるものの、意味のある差は生じないと結論づけました。
また、現時点では薬価も高く、18か月分の治療費は約121,000ドルに上ります。英国の国民保健サービス(NHS)は患者にこれらの薬を提供していません。こうした課題はあるものの、アルツハイマー病研究UKは、これらの薬は「確かな進歩を示している」と述べています。下表にあるものを含め、現在、アルツハイマー病の薬は約140種類が試験中であり、治療法が見つかる可能性は十分にあります。
アルツハイマー病の新たな検査
米国では、血液検査が米国食品医薬品局(FDA)に承認され、アルツハイマー病を最も早い段階で見つけるために使われています。最近まで、診断には高額なPET脳スキャンか、侵襲的な腰椎穿刺検査しかありませんでした。現在は、55歳を超え、アルツハイマー病の症状がある人なら誰でも血液検査を受け、病気の重要な指標であるアミロイド斑があるかどうかを調べられます。
臨床研究では、血液検査は症例の91%超でアミロイド斑の存在を正しく特定しました。アルツハイマー病が原因かどうかの最終判断は臨床医が行います。
「アルツハイマー病の影響を受ける人はあまりに多く、乳がんと前立腺がんを合わせた数を上回ります」と、FDA長官のマーティン・A・マカリー氏はプレスリリースで述べました。「65歳以上の人の10%がアルツハイマー病であり、2050年までにその数は倍増すると予想されることを踏まえると、今回のような新しい医療製品が患者の助けになることを期待しています。」
アルツハイマー病のリスク検査では、最近、英国でも画期的な進展がありました。バース大学の研究者らは、自宅で3分間でできる記憶力検査「Fastball」を開発しました。脳波検査(EEG)の一種を使い、画像が次々と表示されるのを見ている間の脳活動を記録します。一部の画像は繰り返し表示されます。
この検査は、健忘型軽度認知障害(MCI)の検出を目的としています。これは、病気を発症するリスクが高いことを示す場合がある、特定の種類の記憶障害です。この検査単独ではアルツハイマー病を予測できませんが、より大規模な試験で有効性が確認されれば、新しい治療から恩恵を受ける可能性が最も高い患者を見つける助けになるでしょう。
ヘルペスとアルツハイマー病
意外に思えるかもしれませんが、科学者らは、口唇ヘルペスの原因となる単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)とアルツハイマー病の発症との関連を発見しました。HSV-1は体の神経系に潜伏して気づかれないまま存在することが多く、アルツハイマー病の特徴である、前述のアミロイド斑を引き起こす可能性があります。
アルツハイマー病の高齢者と、同病ではない対照群を含む34万4,000人超の症例を調べた研究者らは、アルツハイマー病の成人の0.44%が、過去にHSV-1にも感染していたことを発見しました。対照群では0.24%でした。割合自体は小さいものの、その差は大きく、HSV-1への感染歴がある場合、アルツハイマー病を発症するリスクは80%高くなっていました。注目すべきことに、HSV-1に対する抗ウイルス治療を受けていた成人では、アルツハイマー病のリスクが17%低下しました。
研究の著者らは、この結果について、「ヘルペスウイルスの予防を公衆衛生上の優先課題と捉える重要性がさらに高まる」と述べています。
AIでアルツハイマー病を予測
米国と英国で行われた2つの研究により、人工知能(AI)がアルツハイマー病の発症を予測できることが示されました。カリフォルニア大学の研究者らは、症状が現れる最大7年前に病気を予測できる機械学習モデルを開発しました。このモデルの予測精度は最大72%だったとアルツハイマー病研究協会は報告しています。また、男女で異なるリスク要因も特定しました。高血圧、高コレステロール、ビタミンD不足は、男女ともにアルツハイマー病の予測因子となりました。骨粗しょう症は女性に特有の予測因子であり、男性では勃起障害と前立腺肥大が発症しやすさの指標でした。
一方、ケンブリッジ大学では、別の機械学習モデルにより、軽度認知障害のある人がどのくらいの速さでアルツハイマー病を発症するかを予測できるほか、状態が安定して推移しそうな人も特定できます。研究者らによると、予測精度は81%で、現在の臨床診断より正確です。
「この技術は、患者のウェルビーイングを大きく向上させる可能性があります。手厚いケアが必要な人を見極めると同時に、状態が安定すると予測される患者の不安を取り除けます」と、研究の上席著者の一人であるゾーイ・クルツィ教授は述べました。「医療資源が非常に逼迫している今、不要で侵襲的かつ高額な診断検査を減らすことにもつながるでしょう。」
この動画が示すように、AIは現在、認知症やアルツハイマー病とともに暮らす人々の支援にも役立っています。
免疫系が原因なのか?
科学者らは、アルツハイマー病の少なくとも一部は、免疫系が脳の損傷を修復しようとして失敗することで引き起こされる可能性を調べています。米国のバージニア大学医学部の研究者らは、STINGと呼ばれる免疫分子がアルツハイマー病の一因となる斑やもつれの形成に関与しており、この分子を阻害すれば、少なくとも実験用マウスでは認知機能の低下を防げることを発見しました。
さらに研究者らによると、この発見は、運動ニューロン疾患やパーキンソン病など、ほかの神経変性疾患における認知機能の低下を食い止める鍵にもなり得ます。
この介入の研究はまだ初期段階ですが、今回特定された分子を標的とする将来の治療法につながる可能性が出てきました。
インプラントが役立つ可能性
将来の解決策には、異常な信号を正す脳インプラントが含まれるかもしれません。InBrainは、世界経済フォーラムの2025年テクノロジー・パイオニアの一社で、超薄型のグラフェン・インプラントを開発しました。神経信号を検知するとともに、電気パルスを送り、狙った反応を引き起こします。まずはパーキンソン病のある人の支援に使われていますが、この分野で実績を重ねた後、認知症やアルツハイマー病などの疾患にも対応できるよう、さらに開発を進める計画です。
フォーラムのダボス・アルツハイマー共同イニシアチブは、現在、世界経済に年間1.3兆ドルの損失をもたらすこの病気との闘いで、画期的な進展を主導し続けています。取り組みの一つは臨床試験ネットワークの構築です。世界各地の研究者をつなぎ、イノベーションを加速させ、進歩の妨げとなり得るコストを削減することを目指しています。
治療法の発見は目前か?
アルツハイマー病に対処する方法を探る研究が続くなか、希望につながる発見が相次いでいます。思いがけないところから見つかることもあります。最近の研究の一つでは、アロエベラがこの病気との闘いに役立つ可能性が示され、別の研究では、キンサイが効果をもたらす可能性を調べています。
一方、米国の研究チームは、近い将来にアルツハイマー病の治療法が見つかる可能性を示しました。
この研究では、脳のエネルギーバランスを回復させることで、進行したアルツハイマー病のマウスに病状の逆転が見られました。人を対象とする臨床試験を実施するには、さらなる研究が必要です。しかし、研究の上席著者であるアンドリュー・A・パイパー氏は、「最も重要なメッセージは、希望があるということです。アルツハイマー病の影響は、必ずしも永久に続くとは限りません」と述べました。

