米国の保護主義はうまくいかない。その理由

A worker walks in a shipping container area at the Port of Shanghai April 10, 2012. China returned to an export-led trade surplus of $5.35 billion in March, heralding the prospect that a rebound in the global economy is lifting overseas orders just in time to compensate for a slowdown in domestic demand. REUTERS/Aly Song (CHINA - Tags: BUSINESS TRANSPORT) - RTR30JOK
Trump's protectionist policies are an impediment to trade and growth.Image: REUTERS/Aly Song
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ドナルド・トランプ大統領が発した、難民やイスラム教徒が多数を占める7カ国の出身者の米国への入国を禁じる不名誉な大統領令が、ここ数週間、見出しを独占してきた。だが、米国のイメージと世界経済に与えた打撃は、トランプ大統領が貿易に関して早々に下した決定によって、さらに深刻化するだろう。

演説やツイートで、トランプ大統領はグローバリゼーションを激しく非難してきた。筋金入りの保護主義者として知られる通商訴訟弁護士ロバート・ライトハイザーを、米国通商代表に任命した。そして、トランプ政権の通商を担う残る2人、商務長官指名者のウィルバー・ロスとホワイトハウスの通商顧問ピーター・ナバロも、ライトハイザーに劣らず保護主義的だ。

多くの米国の労働者階級・中間層の人々は、過去20年間に所得が停滞したのは自由貿易協定のせいだと考えている。そこでトランプ大統領は、保護主義者を要職に据えることで、彼らに「保護」を与えようとしている。

しかし、トランプ大統領と通商を担う3人は問題を見誤っている。グローバリゼーションが中間層の空洞化を招く重要な要因である一方、自動化も同様に影響している。ライトハイザーとロスの事業経験の大半は、鉄鋼生産など20世紀型産業で積まれた。その経験が、米国の21世紀の産業問題に20世紀型の解決策を追求する姿勢につながっている。

残念ながら、昔ながらの保護主義では、衰退産業で数千人の雇用を守れたとしても、米国の産業競争力を高めることはできない。さらに、貿易協定を破棄して関税を引き上げても、新たな高賃金の工場雇用は生まれない。むしろ関税は、労働者にさらなる打撃を与えるだけだ。

Image: スタティスタ

トランプ大統領と側近たちは、単純な要点を見落としている。21世紀のグローバリゼーションを主導するのは貿易ではなく、知識だ。通信コストが劇的に低下したことで、米国企業は生産拠点を賃金の低い国々へ移せるようになった。同時に、生産工程の連携を保つため、企業は技術、マーケティング、経営に関するノウハウの多くも国外へ移転してきた。この「知識のオフショア化」こそが、米国の労働者を取り巻く状況を大きく変えた。

2017年の米国の労働者は、1970年代のように、賃金の低い外国の労働力や資本、技術と競争しているのではない。そうではなく、賃金の低い外国の労働力と米国のノウハウが組み合わさった、ほぼ無敵の競争相手と対峙している。これを考える一つの方法は、米国製品が米国内ではなく「北米工場」で作られていると捉えることだ。北米工場で作られた製品は、アジア工場や欧州工場などで作られた製品と競争しなければならない。

つまり、トランプ政権が関税を課せば、米国は産業用投入財のコストが高い孤島になる。米国の消費者向けに限った生産であれば、企業は生産の一部を米国に戻すかもしれない。しかし、輸出市場向けの生産は、米国外で日本、ドイツ、中国の生産者と競争できるよう、同じように国外へ移す誘因が強まる。

アイデアや知的財産の流出を止めずに輸入品へ関税を課すのは、拳を握って指の間から水が流れるのを防ごうとするようなものだ。もっと理にかなった方法は、21世紀の現実を受け入れることだ。情報革命は、関税では元に戻せない形で世界を変えた。米国の労働者はすでに国内でロボットと、国外で低賃金の労働者と競争している。輸入を妨げれば、ロボットの雇用を増やすだけだ。

トランプ大統領は個々の雇用ではなく、個々の労働者を守るべきだ。21世紀のグローバリゼーションの進展はあまりに急で、予測も制御も難しいため、関税のような固定的な措置には頼れない。米国は社会契約を立て直し、労働者が世界の開放性と自動化による恩恵を公平に分かち合える機会を確保する必要がある。グローバリゼーションや技術革新は痛みを伴わない過程ではない。だからこそ、再訓練、生涯教育、移動支援と所得補助、地域間移転の施策が常に必要となる。

こうした政策を進めれば、トランプ政権が労働者階級と中間層にとって米国を「再び偉大」にする可能性は大きく高まる。グローバリゼーションは常に、競争力の高い労働者にはより多くの機会をもたらす一方、ほかの人々には不安を強めてきた。だからこそ、西側諸国では戦後の自由化の時期に、強固な社会契約が築かれた。1960年代から1970年代にかけて、労働組合などの制度が拡大し、政府は手頃な教育、社会保障、累進課税への新たな取り組みを約束した。これらはいずれも、中間層の人々が新たな機会を捉える助けとなった。

過去20年間で状況は大きく変わった。グローバリゼーションは続いているが、社会契約は破棄された。トランプ大統領が最優先すべきは、それを再び結び直すことだ。しかし、通商顧問たちはこの点を理解していない。残念ながら、彼らは関税の賦課に固執しているようだ。それは国際的なサプライチェーンを混乱させ、貿易戦争を招く恐れがあり、米国産業の海外移転を早めるだけだ。

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