貧困、経済的リスク、不確実性は、紛争、移住、テロ、人身・物資の密輸など、世界的な問題と結びついている。
開発金融は脆弱な国々の成長を促すうえで中心的な役割を担うが、インセンティブの不足が、平和構築の可能性を持つ投資を妨げている。
脆弱な国家における投資成果を改善するには、開発金融機関(DFI)、その株主、民間セクターの事業体、そして脆弱な国々の政府や市民社会団体が、システム全体を変革する必要がある。
脆弱で紛争の影響を受ける国々で貧困状態にある人々の数は、2030年までに3億6,000万人に達すると推定されている。政府の能力不足、インフラの不備、政治・経済上の高いリスクと不確実性にさらされた地域で人々を貧困から救い出すことは、重大な課題であり、紛争、移住、テロ、人身・物資の密輸などの世界的な問題に取り組むうえで鍵となる。気候危機の悪化により食料不安が迫り、ウクライナでの戦争によって食料と燃料の価格が急騰するなか、この課題への取り組みは一層急務となっている。
私は、国家脆弱性評議会の招集役を務めている。同評議会は、国家の脆弱性がもたらす課題への対応に熱心な、世界の著名なリーダーたちを結集している。評議会は、民間セクターの成長と、それが生み出す雇用、所得、財・サービスが、各国が脆弱な状態から脱するために不可欠であると認識している。脆弱な国々でこの成長を促すうえで、開発金融は特に中心的な役割を担う。この考えのもと、評議会は開発金融の担い手に対し、投資を拡大して脆弱な国々の力強い成長を促すよう呼びかけている。
成長を促す重要な触媒
脆弱な国々では、紛争、汚職、制度の脆弱さが企業の生産性を制約している。さらに、プロジェクトの規模が小さく間接費が高いため、企業への投資の採算性が損なわれている。また、脆弱な状況下で投資する現実を考慮しない環境・社会・ガバナンス基準が、状況をさらに複雑にしている。
とりわけ、開発金融は投資への資金提供とリスク軽減を可能にする。特に開発金融機関(DFI)は、市場全体に恩恵をもたらし得る投資を実現するために必要とされている。例えば、強靱なインフラの整備やエネルギーへのアクセス、農家や中小企業を市場や金融につなぐデジタル経済の発展を促す投資である。
脆弱な環境はリスクが高いと見なされるため、DFIが譲許的資金を提供しなければ、民間投資家がそうした地域への投資に踏み切る可能性は低い。ドナー、民間投資家や事業者、そして脆弱な国々の政府や市民社会団体も、開発金融が開発目標を達成できるよう支援するうえで重要な役割を担っている。
しかし、DFIやその他の開発金融関係者は、内部的な制約にしばしば妨げられている。例えば、DFI内部の枠組みにより、高リスクの融資を実行し、資本拠出や現地スタッフなどの重要な資源を動員する能力や意欲が制限されている。投資チームは、投資が持つ開発や平和構築の可能性よりも、締結した案件数を重視し続けており、規模が大きく投資しやすい市場に強く偏る結果を招いている。
さらに、DFIの株主は、DFIがより効果的に活動するために必要な手段を提供できていないことが多い。必要な資源、高い業務上・財務上のリスクを取ることへの明確な支援、そして制約の少ない譲許的資金の活用と、より現実的なリスク・リターン基準が求められる。

全方位的な変革
脆弱な状況下で投資を真に拡大するには、DFI、その株主、民間セクターの事業体、そして脆弱な国々の政府や市民社会団体による変革が必要だ。システム全体の変革なしに、成果の改善は望めない。具体的に、国家脆弱性評議会は次の行動を呼びかけている。
DFIは、脆弱な国々で資源と現地スタッフを拡充し、より高いリスクを取り、投資の回収期間を長く設定してリターンを低く受け入れ、平和と紛争の観点からの分析を強化し、開発や平和構築につながる可能性のあるプロジェクトを組成した職員を評価し、他のDFIとの連携を深め、脆弱な国々の政府や他の開発パートナーとともに、より広範な投資環境の改善に取り組む必要がある。
DFIの株主は、脆弱な状況への支援を拡大するというメッセージを、DFIに設定する目標にも反映させ、脆弱な状況に合うよう業務・投資方針を調整できるようにし、課題が生じた際にはDFIを支える必要がある。
脆弱な国々の政府は、DFIや民間投資家からの投資を促進するため、事業や投資により適した環境を整える効果的な政策・規制改革を実施しなければならない。他地域で成功した規制モデル、契約設計、リスク分担の仕組みを再現し、状況に合わせて調整すれば、この重要な課題を進めやすくできる。
民間セクターの投資家や事業者は、脆弱な状況下での投資拡大を支援すべきである。DFIなどが制約に対処し、不確実性の高い環境で事業を成功させるには、民間資本、専門知識、ビジネスモデルが必要となる。
市民社会団体やその他の非政府組織は、説明責任、協議のプロセス、紛争リスクの分析と緩和策を強化する必要がある。積極的な参加により、平和と紛争に関する分析の正確性、実行可能で効果的なリスク緩和計画、利益の不平等な配分によって緊張や紛争を悪化させないプロジェクトの実施、そしてプロジェクトにおける権利と基準の遵守が確保される。
DFIが主導する開発金融の取り組みは、脆弱な状況下で民間セクターの成長を促し、人々を恒久的に貧困から救い出すために必要な雇用を生み出すうえで欠かせない。安定した収入を得て働く人々には、紛争に加わる理由が少なくなる。
経済に関わるすべての人々が繁栄すれば、平和と安定への幅広いコミットメントが可能になる。