価値観に基づく貿易政策が広がっている。企業が知っておくべきこと

Trade policy is increasingly being used to achieve non-trade objectives.Image: REUTERS/China Daily
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  • 貿易政策はもはや、単に物品やサービスの流れを促進するためのものではない。

  • 各国政府は、人権や環境保護といった価値観を世界規模で推進するなど、非貿易政策目的を達成するために貿易協定をますます活用している。

  • 白書は、世界経済フォーラムの貿易に関するグローバル・フューチャー・カウンシルが発表したもので、企業が非貿易目的の複雑さにどう対処できるか、また各国政府が開かれた協調的な貿易をどう維持できるかを解説している。

貿易政策はもはや、物品やサービスの流れにおける効率性や生産性の向上だけを目的とするものではない。各国政府は、非貿易目的(NTO)の達成に貿易をますます活用している。

今日、市場アクセスが認められるかどうかは、何をどのように取引するかだけでなく、取引相手国が人権や環境保護にどのように取り組んでいるかといった、価値観に基づく課題にも左右される可能性がある。

「貿易に価値観を持ち込むと、より大きな繁栄と平和のための経済統合という考えに歴史的に基づいて築かれてきた世界の貿易システムが、さらに分断される恐れがある」と、世界経済フォーラムの貿易に関するグローバル・フューチャー・カウンシルによる新たな白書は指摘する。

白書『貿易と価値観:政策と原則の交差点を読み解く』は、貿易関係が共通の価値観に依存する「フレンドショアリング」などの動向が、世界貿易の統合ではなく分断の要因となる可能性を指摘している。新たな貿易ルールへの対応が難しい発展途上国や中小企業が、特に影響を受けるおそれがある。

「いま貿易議題の中心に移りつつある、価値観に基づく社会問題について、その是非はいったん脇に置きましょう」と、東南アジア研究所の客員研究員で、貿易に関するグローバル・フューチャー・カウンシルのメンバーでもあるスティーブン・オルソン氏は述べた。「貿易の観点だけから見ても、貿易と価値観を結び付ける傾向の高まりが貿易関係を複雑にすることは間違いありません。正当な懸念にどう応えつつ、貿易の混乱を抑えるか、特に貿易を最も必要とする地域社会への影響をどう軽減するかを、先回りして考える必要があります。」

この白書は、包摂性を確保し、協力を促進しながら、共通の価値観と開かれた貿易のバランスを取る複雑さに企業が対処するうえで、何を理解する必要があるかを検討している。

貿易政策や協定において、非貿易目的が増加している。Image: CEPR/VOX EU、Hofmannほか

非貿易目的の重要性が高まっているのはなぜか?

貿易について考えると、一般に思い浮かぶのは、経済効率の向上、売上高や収益性の拡大、価格の引き下げ、消費者の選択肢の拡大といった要素だ。

しかし、貿易協定は、人権、気候変動対策、労働者の権利、信教の自由、多様性と包摂性など、より幅広い価値観を推進するためにも活用されている。

白書によると、地政学的緊張が高まるなか、各国政府にとって非貿易目的(NTO)は、社会運動に積極的な有権者の支持を得るとともに、権威主義に対する民主主義の価値を強調するうえで重要だという。

白書は、NTOの難しさとして、価値観が普遍的に受け入れられるとは限らない点を挙げる。例えば、奴隷制、強制労働、労働者の権利といった用語は、1930年の国際労働機関(ILO)強制労働条約を批准した181カ国によって定義され、合意されているかもしれない。

しかし、こうした基準をどう達成するか、何が違反にあたるかは解釈の問題であり、米中間の紛争が示すように、各国の見解はしばしば食い違う。

高所得国が導入する炭素価格制度は、発展途上国に不均衡な影響を及ぼす可能性がある。Image: CGD

NTOは機能しているのか?

さらに、発展途上国はNTOの影響を受ける可能性がある。高所得の貿易相手国が求める高い基準を満たせないことが多いためだ。欧州連合(EU)の企業持続可能性デューデリジェンス指令(CSDDD)と炭素国境調整メカニズム(CBAM)は、最近の代表的な例である。

CSDDDは、企業に国際サプライチェーンが同指令の労働・環境規則を順守するよう求めることで、持続可能で社会的責任を果たす事業慣行を促そうとしている。しかし、発展途上地域に多い中小企業(SME)は、CSDDDの厳格な要件を順守する能力や資源を欠いていることが多い。

同様に、EUの新たな炭素国境税は、欧州のCO2排出量の多い事業者がCO2の罰則を回避するために、域外で鉄鋼、セメント、肥料を生産して再輸入することを防ぐ狙いがある。CBAMとして知られるこの制度により、外国製品のコストは実質的にEU製品と同じ水準まで引き上げられる。

発展途上国は、この制度の標的として不公平に扱われていると、改めて訴えている。例えば、アフリカは不均衡な影響を受ける可能性があると、グローバル開発センター(CGD)は述べている。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスとアフリカ気候基金の研究を引用し、CBAMによって欧州向け輸出と大陸のGDPが大幅に落ち込むと指摘する。最も大きな影響を受ける国々が、そうした損失を相殺するために、自国の制度をEUの制度に間に合うよう導入できる可能性は低いと、同センターは見ている。

白書が指摘するように、貿易は各国の経済成長と生活水準の向上に役立つため、制限するのではなく促進すべきだ。

中国はどのような役割を果たすのか?

白書『貿易と価値観』によると、米国やEUのように歴史的に優位に立ってきた市場でNTOが拡大する一方、貿易大国としての中国の台頭により、力の均衡が変わりつつある可能性がある。

白書によると、中国は国際的に自国の価値観を推進するために貿易を利用することを避け、貿易相手国の国内政策に干渉しない姿勢を選んできた。他のアジアの輸出国であるインドネシア、ベトナム、マレーシアも同様のアプローチを採っているという。

CGDによると、これはCBAMのような西側諸国の法規制の影響を受ける可能性が高いアフリカやその他の発展途上国にとって、好機となる可能性もある。工業製品の輸出の一部が欧州から中国やインドへ振り向けられる可能性があるためだ。

価値観を重視する貿易政策と価値中立的な貿易政策の均衡がどうなるかによっては、企業が板挟みになる可能性があると白書は述べている。企業は自国の法律やNTOの影響に従うだけでなく、顧客や投資家の高まる期待にも応えながら、事業の収益性を維持しなければならない。

そこでフォーラムは、貿易を通じて価値観を推進することと、包摂や開発を促す力としての貿易にそのアプローチが及ぼし得る悪影響とのトレードオフを見極め、慎重に進めるよう呼びかけている。

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